2019年4月18日(木)

無投票を回避せよ ある町の模索

有馬
「統一地方選挙です。
市町村長や議会の議員などを選ぶ後半戦の投票が、今度の日曜日に迫りました。」

桑子
「ただ、見過ごせない現実があります。
無投票が増えているんです。
今回の選挙では、無投票で当選した議員は、道府県議会議員だと全体の27%、町村議会議員は23%に上り、いずれも過去最高となったんです。
これ、どういうことか。
道府県議会でいいますと、NHKの集計で2,161万人、実に有権者の4分の1が一票を投じる機会を失ったということなんです。」

有馬
「重いですね。
そこで、なんとか無投票は回避しようと模索を続けた町を取材しました。」

無投票を回避せよ 議員14人の町の模索

リポート:大場美歩(NHK長野)

長野県小布施町です。
人口1万1,000。
特産の栗や、江戸時代から残る町並みで知られる「観光の町」です。

ただ、町おこしには成功した一方、町議会の選挙では「議員のなり手不足」に直面。
2回連続で無投票となってきました。

20代
「町議会と言われちゃうと、ちょっと遠い感じはします。」

70代
「興味もないですから。」

3回連続の無投票はなんとか避けたい。
そこで町議会が去年(2018年)8月、立ち上げたのが「議員のなり手不足」対策を住民とともに考える検討会です。

委員長を務めた小渕晃議員です。
74歳の今回、引退を決意。
無投票の回避を最後の仕事と考えていました。

小布施町議会 小渕晃議員
「議会の事を知っていただく(取り組みが)弱いのかもしれない。」

町民
「町報の紙面を増やすのがいいんじゃないか。」

小渕さんは無投票当選が続くことで、住民の無関心に拍車がかかるのではないかと危惧していました。

小布施町議会 小渕晃議員
「選挙がないと議論も何もしないうちに議員14名が決まっちゃう。
知らないうちに立候補した人が、ただ議員になっている。
そんなだったら “なり手”なんていったって、私とは関係ないと、悪い流れが生まれてくる。」

議員も有権者の信任を受けなければ責任感が薄れ、議会も停滞してしまうと言います。

小布施町議会 小渕晃議員
「議員は選挙で信託を受けてやるのが基本。
“私には500人(票)の信託があった”、“幾人が私を応援している”となれば、自分でも責任を持てる。
それが地方議会の一番大事なことだと私は思う。」

検討会には、公募の住民10人と議員が参加。
議会側が住民から直接意見を聞くことでなり手不足解消のヒントを探るのは、全国的にも珍しい取り組みです。

議員
「どうして(立候補者が)出てこなかったのかな、というのが私の気持ちとしてある。」

検討会で住民から出されたアイデアの1つが、なり手不足を訴えるチラシの作成。
親しみやすいデザインを考え、町内すべての家庭に配布しました。

さらに小渕さんたち議員は、検討会のメンバーに立候補も呼びかけました。
危機感を共有するメンバーであれば、新たな議員のなり手になってくれるのではと期待したのです。

議員
「皆さんには、ぜひ町議会議員に手をあげてほしい。」

しかし、住民側から上がったのは、議員になるハードルが高いという声でした。

町民
「困っている子育て世帯は自分の困りごとにいっぱいいっぱいで、議員になんかなれない。」

町民
「主婦ですので、子どもの送迎もありますし、夕飯の支度もございます。」

さらに、月17万円余りの議員報酬の低さを指摘する声もありました。

町民
「“志がある人が(議員に)”と言われたが、じゃあ生活どうする、という話があるので難しい。」

8回にわたった検討会からは新たな候補者が出ないまま、告示の1か月前を迎えました。

こうした中、住民のメンバーには、議会に関心を持つ人からなり手を掘り起こそうという動きが出てきました。
この日、メンバーが訪ねたのは、竹内淳子さん、59歳。
竹内さんは背中を押され、立候補を決断しました。

竹内淳子さん
「緊張感が違うよね。
やばいな、やっぱりやめるかな。」

「大丈夫、いつもの淳子さんでいけば。」

竹内淳子さん
「子育ても済んで、まだ母の介護もしなくて済む。
皆さんの“誰か(立候補者を)出したい”という思いが固まっているなら、“じゃあ私がその役割を”って思いました。」

ただ、この時点で立候補を決めていたのは12人。
定員の14には届かず、無投票の可能性が残っていました。
そこで小渕さんが下したのが、苦渋の決断でした。
引退を撤回することにしたのです。

小渕さんの妻 れい子さん
「体のことが心配で、健康のほうも。
だから本当はやめてほしかったんだけど。」

小布施町議会 小渕晃議員
「無投票や欠員になれば、今まで自分がやってきた議会改革が台なしになっちゃうと思って。」

そして迎えた告示日。
小渕さんは選挙戦になることを期待しながら、立候補の手続きを終えました。

小布施町議会 小渕晃議員
「小さな町だからこそ、できることがいっぱいある。」

立候補の締め切りは午後5時。
無投票は避けられるのか、その時を待ちます。

防災無線
“立候補者議員定数のため、選挙は無投票になりました。”

立候補したのは定員と同じ14人。
3回連続の無投票となりました。
8か月にわたり対策に奔走してきた小渕さんは、4年後に向けても重い課題を背負うことになりました。

小布施町議会 小渕晃議員
「3回続いて無投票という結果は重く受けて、4回目があってはならない。
今後4年間、ぜひ議員のなり手、選挙をやって議員が選ばれる努力をする。」

増える「無投票」 背景にあるものは…

桑子
「ここまでしても無投票。
なり手不足が本当に深刻なんだということを感じますよね。」

有馬
「小渕さんのため息、深かったですよね。
では、住民たちはなぜ立候補しないのでしょうか。
NHKは、全国の地方議会の議員を対象に、その本音を探るアンケートを行いました。
その結果、特に町村議会の議員から多く寄せられたのが、“報酬の低さ”。」

桑子
「VTRの中でも指摘する声ありましたけれども、アンケートでも、“報酬が少なくて生活のことを考えると立候補できません”ですとか、“家族がいたら特に大変、バイトで何とかしている”という声もありました。
実際、町村議会議員の報酬は、全国平均でおよそ22万円なんですね。
さらに『報酬が低いほど無投票になりやすい』といった指摘も出ているんです。」

有馬
「そして、なぜ立候補しないのか。
こちらの“報酬の低さ”と並んで多くの議員が上げたのが、これ、深刻です。
“やりがいの無さ”。」

桑子
「アンケートでは、“町長が議会を掌握してやりたい放題だ”、“4年で1度も質問しない議員がかなりいる”、“傍聴が少なく、議員がよく居眠りしている”といった声も寄せられました。」

有馬
「ちょっと危機的ですよね。
ではどうすればいいのか、専門家に聞きましたが、こうでした。
『なり手不足に特効薬はありません。まずは住民自身が議会に関心を持って、あるべき姿を議論することが必要ではないでしょうか』。

河村さんは、無投票は住民の政治離れを進め、さらには地域の衰退につながる、とも指摘されていました。
問われているのは、私たち有権者です。」

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