2019年12月25日(水)

外国人材受け入れ拡大 対策を打ったのに…

桑子
「きょう取り上げるのは『外国人技能実習制度』。
ことし、日本は外国人材の受け入れ拡大に踏み込み、技能実習生たちを支える仕組みも整えました。
ところが、ことし『技能実習』という言葉と一緒につぶやかれた言葉がこちら。
『外国』や『ベトナム』といった言葉のほかに、『奴隷』『失踪』『死亡』『搾取』など就労現場の過酷さをうかがわせる言葉が並んでいます。

有馬
「現場を取材しますと、国が打ち出した対策がまだ機能していない実態が見えてきました。」

外国人材受け入れ拡大 相次ぐ失踪 今もなお

外国人技能実習生の実態を調査している斉藤善久准教授。
実習生を取り巻く環境は改善していないと感じています。

この日訪ねたのは、ベトナムから来た元技能実習生。
実習先の都内の建設会社から逃げ出しました。

神戸大学 大学院 斉藤善久准教授
「逃げだした理由は?」

ベトナムから来た 元技能実習生
「一番の理由は、怖かった。
社長は膝で従業員を蹴る。
身体を抱えて壁に投げ飛ばされた人もいる。」

男性は直接被害を受けていませんが、怖くなって失踪したといいます。

神戸大学 大学院 斉藤善久准教授
「日本の印象は変わった?」

ベトナムから来た 元技能実習生
「来日の前、日本は文明的な国だと思っていた。
会社に入ってみると、思っていたような国ではなかった。」

斉藤准教授が気にかけているのは、失踪者がSNSで仲間を募り、さらに新たな失踪者を生んでいることです。

神戸大学 大学院 斉藤善久准教授
「失踪者を採用しますと書いてある。
プラスチックの成形加工、朝8時から夕方5時、時給1000円、家がありますと。」

失踪者と見られるベトナム人が求人情報を流しているSNSのグループ。
不法就労の温床とも言えるこうした場が、劣悪な環境で働く外国人技能実習生をひきつけてしまっていると指摘します。

神戸大学 大学院 斉藤善久准教授
「運悪くブラックな職場にあたった人が、ほかの職場に簡単に移れるサポートをするのが行政の役割。
その役割を十分に役割を果たしていないために、セーフティーネットを違法なブローカーや採用する会社が果たしてしまっている。」

外国人が働きやすい環境をどう整えるのか。
ことし国は20億円を投じ、全国に相談窓口を整備してきました。

そのひとつ、川崎市では今年7月に2千万円の支給が決定。
相談体制を強化しました。

しかし、寄せられる相談は以前とほぼ変わらず、1日数件程度にとどまっています。

多文化共生総合相談 ワンストップセンター 渡部修治課長
「技能実習生については、あまり相談が来ていない状況。」

今後、技能実習生を受け入れている企業などにチラシを配り、アピールする予定です。

一方、全国の失踪者の数は、ことしの上半期で4499人。
過去最多並みのペースが続いています。

外国人材受け入れ拡大 「特定技能」広がらない実態

ことし4月には抜本的な対策も動き出しました。
法改正が行われ、「特定技能」という新たな在留資格が導入されたのです。

「特定技能」は、実態としてほぼ最低賃金だった「技能実習」と違い、正社員として働くことができ、賃金は日本人と同等以上。
これまでは許されていなかった転職も可能となります。

しかし、現場を取材すると、特定技能が広がっていない実態が見えてきました。
この居酒屋チェーンではベトナム人など、およそ1000人の外国人が働いていますが、特定技能の試験を受けた人はわずか9人。
店で働く外国人に特定技能について聞いてみると…。

外国人アルバイト
「わからない。」

「知らないです。」

取材班
「特定技能は?」

外国人アルバイト女性
「ちょっとだけ知っている。」

試験を受けない理由として挙げたのは、働ける期間が短いことでした。

外国人アルバイト女性
「5年間だけ。」

「特定技能」で、日本で働けるのは5年だけ。
家族を連れてくることもできず、魅力が乏しいというのです。

人手不足に悩む店側にとっても、今の制度では、外国人材を十分確保するのは難しいと言います。

テンアライド 芳澤聡 人事部長
「実際に受ける側からすると、5年の縛りや家族滞在できないというのがハードル。
長く働きたいのが彼ら彼女らの一番の思いなので、そこにマッチしていない。
労働力不足を補うなら、企業だけでなく日本全体で迎え入れる態勢をとってもらいたい。」

今年度、最大4万7000人あまりの受け入れを見込んでいた「特定技能」。
しかし、現状ではわずか1000人あまりにとどまっています。

長年、外国人技能実習生の問題に取り組んできた弁護士は、今後も継続して制度を見直していくことが必要だと指摘しています。

暁法律事務所 指宿昭一弁護士
「『家族を連れてきてはいけない』。
『5年たったら必ず帰らなければいけない』。
そういうところに、労働者を使い捨て的に捉えている考え方が見え隠れしていて課題。 
仲間として彼らのことも理解し、われわれのことを理解してもらって、彼らがもし人権を侵害されたら、助けなければならない。
そういう観点で受け入れるのが一番大事なことだと思う。」

外国人材受け入れ拡大

桑子
「せっかく制度を整えたのに、『思っていたような国じゃなかった』なんて、まだそんなことを言わせてしまう実態があるのは残念です。
このままで大丈夫かなという思いさえしました。」

有馬
「制度は必要だし、環境整備は進めないといけないが、本質はそこじゃないのかも。
私は、『外国人労働者を使い捨て的に捉えている考えが見え隠れする』という弁護士の話にハッとした。
日本社会が本当に彼らを必要とし、迎えたいのであれば、私たちこそ考え方を変えるべきなのかもしれない。
そう感じました。」

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