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2017年11月10日(金)

原発再稼働が進む中で

福島第一原子力発電所の事故のあと、一時全てが停止した日本の原発。
そして、今…。

「3号原子炉、起動操作を開始します。」

川内原発、伊方原発に続き、福井県の高浜原発が再稼働しました。
さらに、安全審査に合格したもの、現在審査中のものを加えると、合わせて26基。
再稼働に向けた動きが各地で進んでいます。

こうした中、地元の住民は万が一の際の避難計画に不安を抱えています。

住民
「原子力災害の避難を考えると、はっきり言ってできない。」

避難計画は国の安全審査対象外

和久田
「福島の事故の教訓から、国は避難計画のあり方を見直しました。
避難させる地域を10キロ圏内から30キロ圏内に広げ、新たな計画を自治体に求めました。
しかし、この計画は国の安全審査の対象とはなっていません。
そのため、必ずしも実効性が確保されているとはいえないのが現状です。」

高瀬
「今回NHKは、安全審査を申請した原発の立地自治体のうち、内閣府が避難計画に関する協議会を設置している16の市町村にアンケートを行いました。
すると、14の市町村が『避難計画に課題がある』と回答しました。
その実態を、再稼働に向けた手続きが進む自治体で取材しました。」

避難計画 不安を抱える住民

関西電力・大飯原子力発電所。
3号機と4号機が、原子力規制委員会の審査に合格し、早ければ来年(2018年)1月にも再稼働する見通しです。
ところが、地元・おおい町で開かれた住民説明会では、避難計画への不安の声が相次ぎました。

住民
「いちばん懸念しているのは、万一の事故に備えた避難道路。」

住民
「要支援者の場合、誘導はどういうふうにするのか。」

おおい町が作った避難計画です。
町民8,300人全てを30キロ圏外に避難させたり、屋内退避させたりする手順が定められています。

「避難道路 過去に土砂崩れ」

しかし、この計画どおりに逃げることができるのか。

不安を抱えている下西孝明さんです。





原発から20キロの地区に住む下西さん。
重大な事故が起きた場合、町が定めた3つのルートのうち、国道162号線を通って安全な地域へ避難することになっています。
しかしその国道は山間部を走り、斜面が急で、崩れやすいといいます。

下西孝明さん
「崩れたのはそこです。
今、補修されているが、あれがドコンと。」

ここでは、過去に大雨で大規模な土砂崩れが発生。
およそ1週間通行できなくなりました。
原発事故の際、肝心の避難ルートが断たれ、被ばくしてしまうおそれがあると心配しています。
地殻の中学校からヘリで避難することも計画されていますが、その場所も土砂災害の危険がある地域になっています。

下西孝明さん
「実際、土砂崩れがあると、だいぶ通行止めになるので、避難道路として指定するなら考えてもらいたい。」

こうした課題は、他の自治体にも共通していました。
今回のアンケートでは、6つの市町村が避難ルートの確保に「課題がある」と回答。
地震などによって原発事故が起きる「複合災害」への対応にも、11の市町村が「課題がある」と答えています。

要支援者 ボランティアに頼れるのか

さらに、お年寄りや障害のある人など、要支援者と呼ばれる人たちが避難できるのか、懸念する人もいます。
おおい町で民生委員を務める四方英一さんです。
20軒近くの家をまわって、お年寄りなどの世話をしています。
こうした人たちが、皆いち早く避難することができるのか、不安だといいます。

おおい町の避難計画には、町内およそ600人いる在宅の要支援者は、「家族や地域の協力で避難する」と書かれています。
町には、大雨など災害時にお年寄りを助けるボランティアの登録制度があります。
しかし、この仕組みがいつも機能するとは限りません。
今年(2017年)8月の台風で、要支援者に避難を呼びかける情報が出された際は、平日で多くのボランティアが仕事などで不在だったため、十分な避難誘導ができませんでした。

民生委員 四方英一さん
「機能しないのは当然だと思う。
“そんなのできませんよ”という状況になる局面もあると思う。」

避難計画を作ったおおい町は、こうした事態をどう捉えているのか。
避難ルートの安全性や、要支援者の誘導など、課題があることは認識しながらも、改善は簡単ではないといいます。
避難計画の担当者はわずか2人。
さらに国道の整備など、町単独ではできないことも多いからです。

おおい町 反田志郎総務課長
「(住民の)不安はあるが、実効性を高めていく努力をして、避難ルートやインフラ整備の要望とともに、訓練を重ねていくとしか今のところ答えられない。」

避難計画 国の対応は

和久田
「取材した伊沢記者です。」

高瀬
「今のままでは住民の方々は不安だと思いますが、こうした課題は市町村単独で解決するというのもまた難しいのではという気もしますね。」

伊沢浩志記者(福井局)
「今回のアンケートでも、『他の自治体から原子力行政に精通した職員の長期派遣』や、『国が前面に立って取り組んでほしい』など、国に支援の強化を求める声もありました。
こうした声について内閣府は、『避難計画には課題が残されている』とした上で、『地域ごとのニーズを踏まえ、必要な支援を行っていきたい』としています。

再稼働に向けた動きが進む今、早急に対策を進めるべきだと改めて思います。」

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