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2017年11月12日(日)

祭りどう存続? 地域の葛藤

小郷
「地域の祭りが存続の危機に立たされています。」

先月(10月)和歌山県の漁師町で行われた祭りです。
江戸時代から400年の伝統を持つ、この祭り。
実は、みこしを担ぐ人など、祭りの担い手の3割が地元の人ではありません。

「茨城のつくば市から来た。」

「香川県高松市から。」

高齢化や人口減少が進み、親戚や知人のつてを頼って外から人を集めないと、祭りが成り立たなくなっているのです。
今、多くの地方が、こうした悩みを抱えているといいます。

祭りの運営に悩む地方自治体や町内会などを対象に開かれた相談会です。
19の団体が参加し、祭りの担い手不足を口々に訴えました。




「おみこしも立派なものを作ったもんだから、(高齢者だと)重たくて上がらない。」

「抵抗あるのかな。
特に今の若い人にとっては。」

祭りの研究者
「人知れず消えていく祭りが、加速度的に増えている。」





小郷
「これから秋祭りという地域もあると思いますが、気になる話ですよね。」

二宮
「NPO『日本の祭りネットワーク』によりますと、全国で30万の祭りがあると推計されていますが、消滅してしまったり、存続が危ぶまれている祭りが少なくないということです。」

小郷
「一方で、先ほどのVTRのように、外部の力を借りてまで祭りを存続すべきなのか、葛藤している地域もあります。
ある集落のケースを取材しました。」

地域の祭りが“危機” どこまで外部に頼る?

リポート:野口宏明(映像取材部)

山梨県上野原市にある桜井地区です。
人口はおよそ150人。
そのうち4割が65歳以上の高齢者です。
ここでも、祭りは地元の人だけでは成り立たなくなっています。


100年近く続く夏祭りのハイライトとなるのが、みこしの練り歩き。
その担ぎ手は、多い年で8割をボランティア団体など、地区の外の人に頼っています。

みこしの責任者、原田鎭郎(はらだ・しずお)さんです。
地域の若者が減る中、このままではみこしを続けられなくなると考え、10年前から外部の人に担ぎ手を頼むようになりました。

原田鎭郎さん
「現実問題、担いでいる自分からすると、(地区の外の人)なしでは無理。
続けられなかったと思う。」

しかし、こうした現状に地区の人たちから疑問の声が上がり始めています。

来年(2018年)以降の祭りをどうするかについての話し合い。
外部の人がみこしを担ぐことを「仕方ない」とする意見の一方で、違和感を訴える声も上がりました。

「よそからいっぱい入ってきて、違和感とか、そういう感じ。」

「よそものではなく、華は地域の人が頭(みこしの先頭)を持ちたい。」

「おみこしって(地元の人以外が)簡単に担いじゃいけないんじゃないの。」

祭りの存続を最優先に考えてきた原田さん。
戸惑いを隠せませんでした。
地域にとって、祭りとは何なのか。
原田さんは、祭りが続いてきた理由を知りたいと、地区のお年寄りに話を聞いて回っています。

この日訪ねたのは、20年前まで祭りの運営を取り仕切ってきた、天野千裕(あまの・ちひろ)さんです。

原田鎭郎さん
「その時はどういう祭りの雰囲気だったんですか。」

天野千裕さん
「昔は蚕、炭焼き、それで生活を維持していた。
神頼みしなきゃならなかった。」

主な産業が養蚕などしかなかったこの地区では、厳しい暮らしを住民同士が助け合うことで乗り越えてきました。
子どもからお年寄りまで、住民が協力し合ってみこしを担ぐ祭りは、その結束を確認する大事な場だったといいます。

天野千裕さん
「(祭りは)地区の結束につながると思う。
お互いを助け合う気持ちがなくなってしまったら、この地区そのものが成り立たなくなる。」

原田鎭郎さん
「桜井地区で何とかやりくりしようと思うが、限界も感じている。」

原田さんは、高齢者でもみこしを担げるよう、急な階段を避けるなど、地元の人が参加しやすい方法を考え始めました。
外部の力を借りながら、地元が納得できる祭りにできるのか。
ジレンマの中、模索を続けています。

原田鎭郎さん
「昔みたいな勢いではできないかもしれないけれど、みんなと共にする時間は大事なので、続けていきたい。
柔軟に考えて、この祭り、みこしが続けられたら。」

存続の難しさ

小郷
「スタジオには、地域の祭りに詳しい、東京文化財研究所の久保田裕道さんにお越しいただきました。
今、地域もどうお祭りを存続させていくのか、苦悩していましたけれども、祭りの存続、難しくなってきているんでしょうか?」

東京文化財研究所 久保田裕道さん
「今の例も、確かに大変な例だなというふうに思うんですけれども、まだみこしの祭りだからいいというところもありまして、中には、舞とか踊りとか、そういったものが祭りの中心になっているという例もありますので、そうなりますと、もう練習もたくさんしなければいけませんし、なかなかその祭りの存続が難しくて、中には中止してしまうという例が結構、日本全国で増えています。」

小郷
「みこしより、踊りなどの方が難しいということですね。」

“地域力”に影響も

二宮
「地域の人たちでできないのであれば、無理に存続させなくてもいいのではないかという意見もあると思うんですけれども。」

東京文化財研究所 久保田裕道さん
「最終的には、地域の選択だと思うんですけれども、ただ、祭りというのは単なるイベントではなくて、やはりその地域の子どもからお年寄りまで一緒になって祭りを行っていく。
準備から片付けまで大変面倒くさいものではあるんですけれども、そういうことをやることを通して、コミュニティの健全といいましょうか、地域コミュニティがうまくやっていくということにつながると思うんですね。
それに例えば、東日本大震災の後に、いち早く祭りを復活させたいということで、復活させた地域というのは、地域の復興そのものも進んでいったんですけれども、逆に祭りができないということになりますと、避難している方々がもともとの地域への思いというものが薄れてしまって、復興もなかなか進まないというふうな、いろんな問題が起きてきます。
それで、祭りが復活できない、祭りが存続できないということになりますと、例えばその地域に住むお年寄りの孤立ですとか、そういった問題にもつながってくる。
そういう社会的なところにもつながってくる大きな問題だと思います。」

どこまで外部に頼る?

二宮
「先ほどのVTRでは、外部の力を借りることへの葛藤もありましたけれども、久保田さんは、外部の力を借りることについてはどうお考えですか?」

東京文化財研究所 久保田裕道さん
「それも、やはり地域の選択だとは思うんですけれども、例えば、今出ております、長野県の阿南町というところ、和合というところのお盆にやる行事なんですけれども、これ、私が訪れた時には、外部から移り住んだ方が中心になって、地元の人と一緒に祭りを盛り上げているというふうな例がありましたもので、外部の人が入ることによって、その地域がより活性化していく。
移り住まないまでも、都会の人が祭りに訪れて、祭りだけではなくて、単なる人材確保としてやるのではなくて、一緒になって、そして日常的にも、そういう交流をつなげていく、そういうきっかけになったら、地域が再び活性化するという、そういうことにつながっていくのではないかなというふうに思います。」

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