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2017年11月16日(木)

トップブランドが注目! 日本の“エコファー”

高瀬
「けさは気温が下がっているので、マフラーやコートが欠かせないようですね。」

和久田
「その冬物ファッションに、今、大きな変化が起きているんです。」

赤木
「東京都内の百貨店です。
今年(2017年)品数が増えているのが、こうしたファーのついた商品です。
触ってみますと、ふかふかで温かそうなんですけど、実は本物じゃないんです。」

実はこれらの商品、化学繊維で作られた“エコファー”。
今、人気が急上昇しています。

買い物客
「見た目もそんなに安っぽくない。
高級感がある。」




高島屋日本橋店バイヤー 石塚万澄さん
「本物だと思って触っていた方は非常にびっくりしますね。」

グッチも アルマーニも

実はここ数年、世界のトップブランドが相次いで「本物の毛皮を使わない」と表明。

グッチ CEO
「2018年春夏の商品から、毛皮の製造と販売をやめる。」

これまでにグッチやアルマーニなど、世界の800以上のブランドがエコファーの導入を進めています。

ファッションジャーナリスト 生駒芳子さん
「“エコファーかっこいいじゃない”みたいな。
すごく広く深い形でインパクトを与えている。」




赤木
「ということで、このエコファー、私も着てみたんですけど、触ってみます?
やわらかいんですよ。
艶もあるし。」

和久田
「サラサラで、やわらかいですね。」

赤木
「全然本物と変わらないですよね。」

高瀬
「VTRにありましたけれど、世界のトップブランドが今注目ということですけど、これはどうしてなんですか?」

以前は“フェーク”と呼ばれてましたが…

赤木
「理由が2つありまして、まず1つ目が、動物愛護意識の高まりなんですね。

こちらをご覧ください。
これは、1着のコートを作るのに必要な動物の数なんですが、キツネだと、およそ15頭。
そしてミンクでしたら、およそ50頭。
さらにチンチラだと、およそ100頭が必要だということで、多いです。」

和久田
「数を聞くと、ちょっと驚きますよね。」

赤木
「そして、もう1つの理由というのは、技術が高まったことで、こうしたものが本物の毛皮そっくりになったんですね。
これまでは、この化学繊維のファーのことを『フェークファー(偽物の毛皮)』と言っていたんですけど、昨年(2016年)ごろから『エコファー』というふうに変わりました。
この技術力で、世界が特に注目しているのが日本なんです。」

和歌山の山あいの工場で

和歌山県の山あいに広がる、橋本市・高野口町です。
明治時代から、着物や洋服の生地の産地として栄えてきましたが、近年は、中国製の安い製品に押されて、売り上げはピーク時の10分の1にまで落ち込みました。
しかし今、その高野口で生み出されるエコファーの生地に、世界中から注文が相次いでいます。

織物会社 社長 岡田次広さん
「この辺がプラダさん。
これがルイ・ヴィトンさん。」

80年以上続く織物会社の3代目・岡田次広(おかだ・つぐひろ)さんです。
岡田さんは、経営難に陥った会社を平成3年に受け継ぎました。
立て直し策を探して、欧米の見本市を訪ねた時に出会ったのが「エコファー」。
可能性を感じ、生産を始めましたが、当初、海外ブランドからは全く相手にされませんでした。
それでもエコファーにこだわり、改良を続けました。

織物会社 社長 岡田次広さん
「衣料品なので、はやるときも、ダメなときもあるが、その波でも耐えうるように、その事業(エコファー)だけをやろうと。」

大きな転機になったのは、5年前。
品質が認められ、世界のトップブランドとの契約が実現したのです。

織物会社 社長 岡田次広さん
「初めは本当に信じられないというか、『使ってもらえるのか』というのがあった。
一度使ってもらうと自信になった。」

評価されたポイントは、本物の毛皮にそっくりな手触りです。

毛皮の感触 これで再現

このように動物の毛は、根元が太く、先端が細いため、コシと柔らかさを兼ね備えています。
その感触を再現するために、岡田さんは化学メーカーと共同で開発に取り組んできました。
メーカーが改良したのは、アクリル繊維を作る機械。

「これがノズルになります。」

特に繊維を押し出すノズルの部分なんです。

一般的なノズルは丸い穴で、均一の太さの繊維しか作ることができません。




そこで、ノズルの穴をY字型に変えることを思いつきました。
すると、出てくる繊維は、Y字状の不思議な形になります。




その先端を3つに割ると、先端は柔らかくしなりますが、根元のコシは強い、これまでにない繊維が実現したのです。

高瀬
「高級な枝毛みたいなものですか。」

三菱ケミカル繊維素材事業部 小野原透雄さん
「本当に何十年も前からファー用のアクリル繊維の開発をしてきて、その積み重ねによって、リアルに近づいていると感じる。」

職人 伝統の分業制で

この特殊な繊維をどうやって加工するのか。
岡田さんが頼りにしたのは、地元の熟練の職人たちでした。
さまざまな技術を持つ職人が分業して、どんな注文にも応える伝統を生かそうとしたのです。

こちらの工房で行っているのは、アクリル繊維の糸を機械で巻き取って1枚の生地に縫い合わせる作業。

出来上がった生地は、仕上げ一筋45年のスペシャリスト、大前隆一(おおまえ・りゅういち)さんのもとへ。




大前さんが使うのは、このブラシです。
ブラシの間に生地を通す際、圧力や早さを微妙に調整して自然な毛並みを実現しました。



織物会社 社長 岡田次広さん
「ふわふわになってきましたよ。」

仕上げ加工職人 大前隆一さん
「一連の加工でここが一番難しい。
岡田さんがやっているのは高級品なので、そこに合わせるのにちょっと苦労した。」

そして、最後の工程の裁断は、必ず岡田さんが手がけます。

こちらは、エコファー用に特別に開発した機械です。
職人たちの手を経て生まれた毛を傷つけないよう、裏側からミリ単位の正確さで裁断していきます。

キャスターも試着 その肌触りは?

織物会社 社長 岡田次広さん
「この生地を見てもらったらわかるように、きれいに毛が残っている。
私たちは、この生地を愛してやってるので、ここは手抜きができない。」

一人ひとりの職人が、自分の得意分野を丁寧に作り込むことで実現した、本物に限りなく近いエコファーの生地。
それが今、世界に高く評価されているのです。

織物会社 社長 岡田次広さん
「仕事に対するプロ意識がすごく強いので任せて安心できる。
相手の欲しいものに対して、細かく合わせていける、対応していけるのが、日本の強さじゃないかなと思う。」


和久田
「私たちも、岡田さんのエコファーを着てみました。
毛の1本1本が何だか細いような感じがして、気持ちがいいんですよね。」

赤木
「高瀬さん、とってもゴージャスですね。」

高瀬
「ちょっと暑い。
暖かいし、軽いし、これ手入れも簡単そうですね。」

赤木
「手入れも楽ということなんです。」

和久田
「こういう職人さんたちの緻密な技が積み重ねが世界に評価されているというのが、うれしいですよね。」

赤木
「実際、百貨店でお話を聞いていると、『今までは本物の毛皮をつけているのがかっこよかったけれども、今はエコファーをつけていることの方がかっこいい』という方もいて、価値観も変わってきているなというふうに感じました。」

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