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2017年11月21日(火)

いじめ防止へ “道徳”どう変わる?

子どもたちの学校生活で、深刻な問題となっている「いじめ」。
昨年度、全国の学校で確認されたいじめの件数は32万件を超え、過去最多に。
子どもが自ら命を絶つケースも相次いでいます。


教育長
「かけがえのない命を守れなかったこと、ご遺族に心からおわび申し上げた。」




先月(10月)宮崎市は、去年(2016年)起きた中学1年生の自殺について、背景にいじめがあったことを認めました。
どうすれば、いじめを防げるのか。
対策の1つとして国が掲げているのが、道徳教育の充実です。
これまで正式な教科ではなかった道徳の時間を「教科」に格上げ。
いじめ防止につなげるため、指導方法も改善しようというのです。

高瀬
「いじめをどう防ぐか。
道徳が来年(2018年)の4月から正式な教科として、小学校で始まります。」

和久田
「これまでとどう授業内容が変わるのか、道徳教育を充実させることが、いじめの防止につながるのか、取材しました。」

いじめは防げるか “道徳”教科化のねらい

教科化を見据えた道徳の授業を行っている都内の小学校です。





6年生の担任、赤堀美喜夫先生。

赤堀美喜夫先生
「道徳の形にチェンジ!」




道徳の授業は、お互いの顔が見える形で行います。
いじめ防止につなげようと、教科化される道徳。
この日、赤堀先生が選んだテーマは「友情」や「信頼」です。
友だちとの関わり方を考えようというのです。
これまでは、テキストを読ませることが多かったという道徳の授業。
しかし、来年度からは教科になることで、子どもたち一人ひとりが自分のこととして考え、話し合うことが求められます。

今回のテキストには、クラスの女の子に話しかけられた男の子が、女の子を無視してしまうという場面が描かれています。
赤堀先生は、なぜ男の子が無視をしたのか、子どもたちに考えさせます。

赤堀美喜夫先生
「どうして知らん顔して、先に行っちゃったと思う?」

「ふだん話しかけられない女子に話しかけられてしまい、少してれたと思う。」




女の子からは、照れくさかったのではないかという意見が。
一方、こんな意見も…。

「聞いてあげたい思いはあるけど、ほかの男子も一緒だから、“からかわれたら嫌だな”と思っている。」

「男の子に“なんで女の子に声かけられて振り向くんだよ”とか、怒られたり、自分がいじめられる可能性があるから振り向かなかった。」

赤堀美喜夫先生
「なんでお前、女の子としゃべっているんだよって、いじめられそうな気がするから、振り向かない。」

女の子と話すことが恥ずかしいだけではなく、からかわれたり、いじめられる可能性があるかもしれないという意見まで。
友達同士の中にも、いろんな受け止め方があることを学んでいきます。

「友だちの意見を聞いて、自分のことを比べるのがいいと思う。」

「ふだんあまり考えないことを、この時間で考えられるので、自分が変われたなと思う部分はある。」

道徳の教科化がいじめ防止につながるのか。
今月(11月)全国から道徳教育の研究会に集まった小学校の教員にアンケートを行いました。

すると、「非常に効果がある」「どちらかというと効果がある」が合わせて62%。
いじめ防止に役立つという声が多く聞かれました。
一方で、「子どもたちに考え、議論させる授業ができるか」とか、「いじめ問題は複雑で、大きく効果があるとは言えない」などの意見もありました。
中でも、8割を超える教員が不安を抱えているのが「評価」です。
教科になることで、授業によって子どもがどう変わったかを記述し、児童や保護者に伝えることが求められます。

友情・信頼について授業を行った赤堀先生。
子どもたちの心の変化を見逃さないよう、細かく発言のメモをとり、授業の終わりには学んだことを書かせます。
しかし、たくさんの言葉で表現できる子どももいれば、数行しか記述がない子どももいます。
発言や記述の内容だけで、いじめ防止につながる心が育ったのか、子どもの内面を知るのは難しいといいます。
この学校では、子どもの心を育む上で、道徳には効果があるとしていますが、授業だけでは、いじめの防止は難しいと考えています。

台東育英小学校 木村和夫校長
「道徳だけでいじめがなくなる、道徳をやればいじめ問題が解消する、そういったような問題とは違うと思う。
道徳の授業だけでなく、全教育活動で意識して、子どもの良さを見取っていく、いろんな考え方を子どもたちに教えていく、そういったようなことが、とても重要だと思う。」


高瀬
「取材した、社会部の森並記者です。
来年の春から正式な教科になる道徳ですが、確かに過去、昔になりますが、自分が受けていた道徳とは、だいぶ違うなという印象なんですけれども、道徳でいじめを防ぐことができるかというと、これは、なかなか難しそうですよね。」

森並慶三郎記者(社会部)
「課題は、大きく2つあると思います。
1つは、道徳の授業が必ずしもいじめの防止に関わるものだけを学ぶというわけではないんです。


道徳の授業では、紹介した『友情・信頼』という項目の他にも、『勤労・公共の精神』とか『自然愛護』、こうしたさまざまな内容を、年間を通して扱うことが決まっているんです。
実際にこうした内容が、どこまで『いじめ防止』につながるのか、教員へのアンケートでも疑問視する声が聞かれました。」

和久田
「道徳といっても多岐に渡るわけですものね。」

森並記者
「2つ目の課題が、ある1つの価値観を教えることの難しさなんです。」

和久田
「1つの価値観を教える?」

森並記者
「今の学校には、1人親の家庭とか、親が外国籍の子どもなどが数多く、その背景というものも多様です。
こうした中で、例えば『家族愛』とか『国や郷土を愛する態度』といった、特定の価値を授業で扱う際に、その方法をあやまってしまうと、いじめにつながる偏見などを生み出さないかという懸念もあるんです。
これについて、専門家に話を聞きました。」

お茶の水女子大学 米田俊彦教授
「外国につながる子どもたちとか、いろんな背景をもった子どもたちが教室の中にいるようになってきて、いろんな子どもたちの中に、ひとつの尺度、ルールが支配的になったら、そこについていけない子どもたちを、逆に生み出してしまう懸念が大きい。」


和久田
「確かに、さまざまなことに配慮しつつ、道徳の授業を、いかにいじめの防止につなげるか、教員の力が問われますね。」

森並記者
「そうだと思います。
しかし学校現場では、教員の多忙化が非常に大きな問題となっているんです。
授業の準備とか、研修にあてる時間を教員が確保できるように、国や教育委員会はしっかりした支援をしていく必要があると思います。」

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