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2017年12月26日(火)

あなたも歴史ロマンを“体感”できる

和久田
「青く澄み切った沖縄の海。
色とりどりの魚やサンゴで人気のこの海に、先月(11月)から新たな魅力が加わりました。
それは、『水中遺跡』。


こちらは、沈没した交易船が積んでいたつぼ。
そして500年以上前、盛んに取り引きされていた中国の陶磁器。
古くから貿易船が行き交っていた沖縄の海には、こうした数々の遺産が残されています。」

高瀬
「その魅力を幅広く知ってもらおうと、海で歴史を味わうツアーが始まりました。
名付けて『海をまるごと博物館』です。」

100年以上前の姿を目の当たりに

リポート:小林賢大(沖縄局)

先月中旬。
石垣島に全国から20人のダイバーが集まりました。

参加者
「すごく歴史に興味があって、古いものを見てみたい。」

「海をまるごと博物館」では、水中の遺跡そのものを展示物に見立て、ダイビングでめぐります。
この日、訪れたのは1800年代に沈没した船が残る遺跡です。

海底に見えてきたのは、琉球王国でつくられたつぼ。
食糧や貢ぎ物を入れていたと考えられています。
100年以上たっていますが、割れずに残されていました。
参加者は、船が沈んだ当時のままの姿を目の当たりにするのです。

参加者
「どうしてここにつぼがあるんだろう。
歴史的なものを感じますね。」

「海底で 自分の目で確かめることができる」

今回の博物館のプロジェクトを企画したのは、大学や自治体に所属する考古学の研究者たちです。
中心となった片桐千亜紀(かたぎり・ちあき)さん。
沖縄県の文化財担当の職員です。
地元のダイバーや漁師の情報をもとに各地の海に潜り、15年前から遺跡の調査を続けてきました。

金属探知機などを使って海底を丹念に探索します。
見つかった遺物を分析し、文献と照らし合わせて、歴史をひもときます。

沖縄県埋蔵文化財センター 片桐千亜紀さん
「海底に潜ることで、文献に記載された事件や、文献には全く残されていないことなど、自分の目で確かめることができる。
最終的には人と海がどのように関わっていたのかということまで知ることができると思います。」

戦争の悲劇 手つかずのまま残されている

片桐さんたちがこれまでに調査した水中遺跡です。

遺跡の年代は平安時代から太平洋戦争期まで。
沖縄本島や離島を含め、23か所に上ります。
水中遺跡の魅力は、海の中で、歴史的な現場が手つかずのまま残されていることです。

これは、太平洋戦争で沈んだアメリカの軍艦です。
スクリューのある船尾の部分が大破しています。
米軍の資料には、「日本の特攻機の激しい攻撃を受けた」と記載されています。
それを裏付けるような遺物も見つかっています。

軍艦の近くに沈む金属の塊。
特攻機のエンジンとみられています。
戦争の悲劇を生々しく伝える遺跡です。

「新しい分野 守っていくのも使命」

実は今、こうした遺跡は保護や管理の問題に直面しています。
水中遺跡は陸上のように、立ち入りを規制することができません。
時には、ダイバーが軽い気持ちで遺跡にあるものを持ち去ってしまうこともあるといいます。
片桐さんたちは、水中遺跡の貴重さを伝えようと、今回の博物館のプロジェクトを思いつきました。

協力を求めたのは地元のダイビング業者たち。
遺跡の地図や歴史的な経緯などの情報を伝え、ダイビングツアーで訪れてもらおうと考えたのです。

沖縄県埋蔵文化財センター 片桐千亜紀さん
「海が自然だけではなく、歴史的空間だと肌で感じることができる。
それを一般のお客さんにどんどん広めていってほしい。」

ダイビング業者は、水中遺跡は大きな観光資源になると考えました。

ダイビング業者
「(水中遺跡は)全く新しい分野だと思うので、今後のダイビング自体がもっとおもしろくなる。
(水中遺跡を)守っていくのも使命ですし、今後どんどん新しい発見があると思うので。」

遺跡にまつわるスト-リーを体感

こうして始まった「海をまるごと博物館」。

「中国との貿易が14世紀後半ごろから盛んになりまして…。」

大切にしているのは、遺跡にまつわるスト-リーを体感してもらうことです。
この日のテーマは、海運で栄えた琉球王国の歴史です。

江戸時代の絵には、多くの船でにぎわう港の様子が描かれています。
こうした帆船がどんな航海をしていたのか、その一端を知ることができる場所に向かいました。
到着したのは、今はほとんど船の往来がない静かな海岸でした。
しかし潜ってみると、水深20メートルで見えてきたのは、人の背丈ほどの大きな金属の塊です。

江戸時代の絵を見てみると、薩摩藩の船のいかりと同じ形をしています。
すぐ近くにも、似たようないかりが。
狭い範囲に7つ沈んでいました。
実はここは、港に入る前に船が立ち寄る場所でした。
そこで急な嵐にあい、多くが沈没したと考えられています。
いかりのまわりには、折り重なるようにたくさんのつぼが残されていました。

参加者
「自分の命を助けるために、つぼを投げ捨てたのか、そのまま沈没したのか、謎ですね。
考えるのが楽しいです。」

時を超えるロマンの旅へ

片桐さんたちは、少しでも多くの人に遺跡を知ってもらおうと、ロボットカメラも用意しました。
ダイビングができなくても、ロボットを操縦し水中遺跡を探索することができます。

「岩を乗り越えるとつぼがあるので、探しましょう。」

「つぼがありました!」

沖縄県埋蔵文化財センター 片桐千亜紀さん
「水中遺跡は新しい海底の資源だと思います。
もっと多くの遺跡を公開していって、多くの人たちにいろいろな時代の遺跡が沖縄にあると知ってほしいと思います。」

歴史を肌で感じられる海の博物館。
時を超えるロマンの旅へと私たちをいざないます。

和久田
「この『海をまるごと博物館』としてのダイビングツアーは、希望があれば年末年始も開催するそうです。」

高瀬
「現在は石垣島の一部の遺跡だけで行われていますが、片桐さんたちはほかの遺跡でも準備を進めていて、いずれはすべての遺跡を博物館にしたいと考えています。」

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