これまでの放送

2019年3月6日(水)

かじを切った震災教育

高瀬
「東日本大震災8年。
けさは、『震災教育』についてです。」

和久田
「震災の直後、学校現場は津波の映像などを見せることを避けて、震災について教えてきました。
しかし、被災した現場を、あえて“見せる”ことにかじを切った小学校があります。」

被害を“見せて”伝える

リポート:矢島有紗記者(NHK仙台)

小学5年生
「小さいころで(震災のこと)よく覚えていない。」

小学5年生
「あんまり覚えていない。」

小学5年生
「お父さんとお母さんに聞くと、とても大変だったと言ってた。」

被災地・仙台にある将監小学校です。

将監小学校 佐藤慎吾教諭
「14時46分、地震が起きました。
鮮明に覚えています。」

5年生の総合学習の授業です。

将監小学校 佐藤慎吾教諭
「ここに、まさに家が建っていた。」

当時の記憶がない子どもたちに、今年(2019年)初めて、震災直後の写真を使って被害の大きさを教えることにしました。
これまでの副読本を使った授業だけでは、十分に伝わらないもどかしさを感じていたからです。

将監小学校 佐藤慎吾教諭
「震災から8年たっていて、児童たちも(当時)3歳くらいの年齢だと覚えていない。
(震災のことを)まわりでいろいろ伝えてあげるのが大事。」

さらに、被害の大きかった地域も訪ねました。
仙台市の荒浜地区です。
この地区を襲った津波は、およそ190人の命を奪いました。

将監小学校 佐藤慎吾教諭
「亡くなった人の名前と年齢。」

小学5年生
「2歳もいる、3歳もいる。」

当時の自分たちと同い年で亡くなった子どもたちがいるという、悲しい現実に向き合いました。

震災遺構となった、荒浜小学校にも行きました。
壊れた教室や廊下の天井などを見学して、津波の恐ろしさを目の当たりにしました。

小学5年生
「これこそまさに津波がきたことをあらわしている。」

小学5年生
「津波が来てとても恐ろしい思いをしたとか、関わりがある人が亡くなった時の苦しさとかを知った。」

小学5年生
「(震災前は)みんな“津波なんて来ない”と。
そういうのをなくして、みんな避難して、一人も命を落とさないようにしたい。」

仲間と一緒に見て、思いを同じくすることで、津波の怖さを実感しました。

将監小学校 佐藤慎吾教諭
「津波が本当に来て、仙台の中で災害があった地域があると感じられたと思う。
きょう経験したことが、心のどこかに残ってくれるとうれしい。」

震災の教訓を語り継ぐ

同じ仙台市にある、七郷小学校です。
6年生の学年主任の、大内恵美先生です。
かつての子どもたちには配慮をしながら授業を行ってきたと、当時を振り返ります。

七郷小学校 大内恵美教諭
「(これまでの子どもたちには)傷口に触れないようにしたり、危ないとか危険だというのは、じゅうじゅう知っている子どもたちなので、楽しく明るく、気持ちを安らげるような毎日を送るための教育だった。」

そこで新しく打ち出した方針は、震災の教訓を語り継げる子どもを育てることです。
取り組んだのが、模型作り。
人が住めなくなった荒浜地区に、何を作れば忘れずにいられるか考えさせます。
子どもたちは現地に足を運んで、かつての住民から、被災した当時の様子や震災前の地域のよさについて聞きました。
子どもたちは見聞きしたものを調査票にまとめ、何を語り継げばいいのか考えました。
そして、1か月かけて完成させた模型です。
15年後の荒浜地区です。

話を聞かせてくれた、荒浜地区の住民たちに披露しました。

小学6年生
「(模型の)テーマは、“伝えよう 楽しもう 荒浜パーク”です。
目指す公園は、震災を知りながら楽しめる公園です。」

小学6年生
「すべり台は、津波の高さからすべられる。
下から見ると、津波の高さがわかる。」

地区を襲った津波は13.7メートル。
津波の威力を忘れないように、滑り台を同じ高さにしました。
震災遺構となった荒浜小学校は、地域の人たちが多く避難し、300人もの命が救われたことを知りました。
これからも、街のシンボルとして守っていきたいと考えています。

震災前、海水浴客であふれていた深沼海岸。
15年後、再びにぎわいの中心にしたいという思いを込め、地元の魚が食べられるレストランを海の上に作りました。

震災の脅威だけでなく、地域の魅力も語り継いでいきたい。
子どもたちのそうした姿勢に住民たちは頼もしさを感じています。

荒浜地区の元住民
「びっくりしました、発想がいいので。」

荒浜地区の元住民
「期待している。
若い人たちにありがとうと言わないと。」

小学6年生
「何もなくなったけど、もっとよくすれば、もっといい地域になる。」

小学6年生
「みんなに伝えていく必要がある。
自分にとっても大切なことだと思う。」

震災を知り、語り継ぐ。
たとえ当時の記憶が無くても、被災地のありのままの姿を知れば、次の世代へ伝えていけると先生たちは考えています。

七郷小学校 大内恵美教諭
「自分たちが必死に考えたこと、どこかで語ってくれる機会もあるだろうし、つないでいってほしい。」



和久田
「取材した、仙台放送局の矢島記者です。
震災から8年がたち、被災地でも震災の記憶がない子どもが増えているわけですね。」

矢島有紗記者(NHK仙台)
「実際に被害を目の当たりにすると、表情も引き締まり、地域を守らないといけない、そんな責任感すら感じる子どもたちもいました。
現場を知り、自分の言葉で語っていくことがいかに大切かということを感じました。」

高瀬
「そうはいいましても、被災した現場をこれまで“見せない”としてきたのに、それを“見せる”と転換するのは、なかなか簡単なことではなかったと思いますが?」

矢島記者
「今回取材した小学校は、いずれも保護者の了解を得た上でこうした授業に取り組んでいます。
しかし、地域によって子どもの心理的な影響はさまざまで、現場を見せるかどうかの判断は学校に任されています。」

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