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2019年3月7日(木)

災害公営住宅に相次ぐ“異変”

高瀬
「シリーズでお伝えしている『震災から8年』です。」

和久田
「まずはこちらをご覧ください。


『災害公営住宅』です。
個人で住宅を再建できない被災者のために建設されています。
その完成率は今年度で100パーセントに迫る見通しです。」

高瀬
「仮設住宅などで暮らしていた人にとっては待望の家になるんですが、すでに移り住んだ人の中には、不眠など健康上の問題を訴える人が相次いでいると、最新の調査で分かってきました。」

災害公営住宅に来たら眠れなくなった

リポート:村堀等
     藤井美沙紀
     川田陽介(震災取材班)

岩手県宮古市にある災害公営住宅です。
震災で自宅をなくした40世帯が入居しています。

2年前に入居した、堀子朝子さんです。
津波で夫を亡くし、自宅も全壊しました。
震災の後、2箇所の避難所、仮設住宅を経て、ここにたどりつきました。
引っ越し直後から眠れなくなったといいます。

「きのうは眠れた?」

堀子朝子さん
「眠れないのは毎日、ここにきてから。
仮設のときはそうじゃなかった。

(精神)安定剤。」

夕方になると孤独に耐えられなくなり、薬が欠かせなくなりました。

転居を繰り返してきた“リロケーションダメージ”

こうした睡眠障害は「リロケーションダメージ」が原因とする専門家がいます。

7,000人以上の被災者を追跡調査してきた、東北大学の辻一郎教授です。
「リロケーションダメージ」は、避難所から仮設住宅、そして災害公営住宅へと転居を繰り返すことで起きるといいます。

辻教授が調査した、不眠の疑いがある人の割合いです。
転居の回数が多いほど増え、4回以上転居した人の場合は4割近くに上りました。

東北大学大学院 辻一郎教授
「我々の調査でも、引っ越しの回数が多い人は不眠、抑うつが多くなっている。
“リロケーションダメージ”は、今回の震災で確実に言える。
放っておくと、もっと重度のうつ状態、本当のうつ病になる可能性も非常に高い。」

人間関係が途絶えたことのストレス

転居の回数が多いと、なぜリロケーションダメージが起きるのか。
人間関係が途絶えたことがストレスになっていると考えられています。
堀子さんの場合、5年間暮らした仮設住宅では、古くからの友人がいたこともあり、楽しく過ごしていました。
しかし、災害公営住宅に来る時、友人と離ればなれになってしまいました。
新たな人間関係を築くきっかけも多くありません。

堀子朝子さん
「普通ではいられないぐらい、ひとりぼっちな感じ。
集合住宅だから、もっとコミュニケーションもいっぱいあり、皆さんとしょっちゅう会って楽しい生活ができるかと思っていた。
しかたがない、諦めるかとは思うけども。」

辻教授があげるリロケーションダメージの対策。
それは周囲が人間関係を作り直す手助けをすることだといいます。

東北大学大学院 辻一郎教授
「もともとあった人間関係・役割がなくなってしまう。
その中でさまざまなストレスが出てくる。
そういった人たちを外に出し、地域の中に居場所をつくっていく。」

外部支援で新たな人間関係を作る試み

宮城県塩釜市にある災害公営住宅では、外部の支援で新たな人間関係を作りだそうという試みが始まっています。

「もう来た!
入っていいよ。」

この災害公営住宅では、ボランティアなどの力を積極的に受け入れています。
本来は住民による運営が原則ですが、高齢化が進む中、限界があると考えました。

その結果、カラオケ大会や芋煮会など月に20回以上のイベントが開催されるようになり、新たな人間関係をつくるきっかけを生み出しています。

NPOつながりデザインセンター 新井信幸さん
「集会所が毎日のように使われることで、行けば誰かに会える、気晴らしなると。
ふらっと寄れるみんなの居場所になることで孤立を防ぐことができると思う。」

災害公営住宅の完成率が100パーセントに迫る中、明らかになったリロケーションダメージ。
被災地は今、人と人とのつながりを再建するという難しい課題に直面しています。

“リロケーションダメージ” 早急な対策を

和久田
「リロケーションダメージは、もともと福祉の分野で使われている言葉で、高齢者が介護施設などに移ることで孤立し、認知症など健康状態の悪化につながることもあると指摘されています。
ましてや災害は突然にやってくるため、ダメージはより深刻になるといいます。」

高瀬
「去年(2018年)の西日本豪雨や北海道地震でも、住み慣れた家を失う人が多くいました。
つながりや役割までも失うことがないよう、対策が必要だと感じます。」

和久田
「このリロケーションダメージについては、10日放送のNHKスペシャルでもお伝えします。
そして明日(8日)のおはよう日本では、福島第一原発周辺の介護の問題についてお伝えします。」

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