これまでの放送

2019年3月16日(土)

小澤征爾さんのメッセージ

英語版の動画はこちら
Click to view video in English


指揮者の小澤征爾さん。
ボストン交響楽団の音楽監督などを歴任し、半世紀余りにわたって、世界的な活躍を続けてきました。
その小澤さんが、ライフワークとしてきたのが、若い音楽家の育成です。

新井
「がんや心臓の病気と闘いながら、83歳になった今も精力的に後進の指導を続けている小澤さん。
中でも力を入れてきたのが、毎年開催されている『小澤征爾音楽塾』です。」

小郷
「何を伝え、残そうとしているのか。
昨夜、公演初日を迎えた、今年(2019年)の音楽塾に密着しました。」

指揮者 小澤征爾さん 密着!音楽塾の舞台裏

取材:科学文化部 国枝拓、おはよう日本 吉岡展史、京都局 木内岳志

熱気に満ちた、音楽塾のリハーサル。
参加するのは、国内外から選抜された、プロを目指す10代から20代の演奏家、70人です。
今回取り組むのは、オペラの人気作“カルメン”。
塾生たちは、プロの歌手と3週間練習に励み、本番を迎えます。

小澤さんが音楽塾を立ち上げたのは、19年前。
学ぶ機会が少ないオペラに若いうちから触れてもらいたいと、毎年欠かさず開催してきました。

しかし去年(2018年)、小澤さんは、直前に心臓の病気が見つかり、降板。
長い療養生活を送りました。

小澤征爾さん
「指揮したくてウズウズしてるんだよ。」

迎えた今年の音楽塾。
小澤さんは、このために体調を整えてきました。
それでも今回指揮をするのは、4幕のうち1幕だけ。
リハーサルでも、指揮台に上がって指導するのは、冒頭のおよそ15分のみです。
小澤さんは、演奏を始めてはすぐに止め、強い言葉で指示を飛ばしていきます。

小澤征爾さん
「16分音符が大事なんだ。」

「うるさく弾けばいいというものじゃない。」

「オペラってのは普通のシンフォニーや室内楽とは大違いなんだ、分かるか?
それを今やらなきゃだめなんだ。
Not tomorrow! Today!(あすではなく、きょうだ!)」

「あすではなく、きょうだ」。
限られた時間の中で、すべてを教え込もうとするかのように、緊迫したリハーサルが続きました。
長年、小澤さんを間近で見てきた人も、今年にかける気迫を感じとっています。
今回、残りの3幕を指揮する、アルミンクさん。
30年近く前に小澤さんと知り合い、助手を務めた経験もあります。

指揮者 クリスティアン・アルミンクさん
「小澤先生は、“演奏するのはあすではなく、きょうだ!今だ!”と言います。
これほどの規模のオペラで、リハーサルの時間も限られているので、今、結果を出すことを求めているのです。
音楽の核心をつくメッセージを塾生に伝えることが、いかに先生にとって大切かがわかります。」

ハイペースで進む、小澤さんの指導。
塾生たちは、その意図を理解するのに必死になっていました。
バイオリンパートの蔭井清夏さん。
東京藝術大学で学ぶ、21歳です。
今回、初めてオペラの指導を受ける蔭井さん。
本格的な舞台稽古が始まってからも、とまどっていました。

バイオリン 蔭井清夏さん
「まだ目の前の楽譜に食らいついている感じ。
一音一音の出し方から本当に考えなくてはいけない。
先生のおっしゃるひと言ひと言に、それをちゃんとやらなきゃという必死さばかり。」

リハーサルを重ねる中、蔭井さんの心に、ある言葉が響き始めました。

小澤征爾さん
「You must listen!(よく聴きなさい)」

「You everybody must use a lot…耳、耳ね。(みんなもっとたくさん耳を使いなさい)
Listen listen listen(聴いて 聴いて 聴いて)」

自分の奏でる音、周りの音色、そして舞台上のソリストの歌声。
それらすべてに神経を配るよう、小澤さんは繰り返し促していました。

本番5日前。
蔭井さんに変化が表れました。
しきりに舞台上のソリストに視線を送ります。
タイミングを、懸命に測ろうとしていました。

バイオリン 蔭井清夏さん
「ソリストに自分がなったつもりで、その歌に憑依(ひょうい)する。
この数日間、ちょっとつかんできたのが、どういうふうに聴けばいいのかということ。
“Listen(聴く)”ということに、そうすればちょっと近づけるのかなと、今、思っています。」

公演初日。
小澤さんのパートが終わったあとも、舞台と息の合った演奏が続きます。

バイオリン 蔭井清夏さん
「歌手の皆さんが、歌を体から届けている感じが一番近いところで分かって、共有できた。
高揚感とかそういうものは、一緒に声と楽器で融合できた。」

3週間、限られた時間の中で向き合った、小澤征爾音楽塾。
情熱的な舞台を届けることができました。



新井
「指揮台に立った時の姿がとてもパワフルで、言葉でいろいろ教えてもらうのと同時に、姿そのものが若い人たちにとっては何よりの刺激になりそうですよね。」

小郷
「『あすではなくきょうなんだ』という言葉がすごく印象的で、自分の持っているものを1つでも多く若い世代に伝えたいんだというのが、ひしひしと伝わってきましたね。」

新井
「この音楽塾は、明日(17日)京都で2回目の公演を行い、そのあと神奈川の横須賀、東京へと続きます。」

Page Top