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2019年3月19日(火)

シリーズ「新時代への突破口」 地域とプロスポーツ

和久田
「5月に元号が変わり、新たな時代に進む日本。
今日(19日)から3回にわたり、『新時代への突破口』と題し、次の時代へのヒントを探ります。
1回目のテーマは『地域とプロスポーツ』です。」

高瀬
「平成の時代には、人口減少が進む地域でプロスポーツを中心に、地元を活性化しようという取り組みが各地で生まれました。
その典型的な事例がこちらです。」

“地域密着型”へ 鹿島の歩み

リポート:本間祥生記者(NHK水戸)

茨城県の人口7万人の町に、平均2万人の観客を集めるクラブがあります。
鹿島アントラーズ。
Jリーグ発足とともに設立され、これまでリーグ最多、20のタイトルを獲得してきました。

サポーター
「地元の誇り。」

サポーター
「アントラーズあっての鹿嶋市。」

鹿嶋市は、昭和40年代に、工業都市として開発されました。
しかし娯楽施設がなく、若者の流出が課題となっていました。

クラブ設立の中心メンバーの1人、平野勝哉さんです。
Jリーグのクラブを作ることで、町ににぎわいを生み出したいと考えました。

元クラブ職員 平野勝哉さん
「当時の鹿島の町のたたずまいは、日没、即夜中。
スポーツを通じて地域が盛り上がる、その可能性にかけた。」

Jリーグが重視したのは、当時では珍しかった「地域密着」の理念。
平野さんたちはまず、スタジアムの清掃や駐車場の整理などを地元の住民に任せ、クラブの運営に巻き込みました。

元ブラジル代表のスーパースター、ジーコ選手も、その手本を示しました。
練習の合間には、サポーターと積極的に交流。
海外では当たり前に行っていたファンサービスを、チームに根づかせたのです。

鹿島アントラーズ ジーコさん
「私には周りの選手にファンサービスの大切さを伝える大きな責任があった。
関係が良くなれば、サポーターが増える。
サポーターが増えれば、選手のモチベーションとクラブの収入が増える。
すべてがつながっている。」

地域に密着しながら、強いチームであり続けたアントラーズ。
ファンクラブの会員数は、今ではおよそ2万7,000人に達しています。
仕事や年齢がバラバラな住民が、試合観戦などで交流するようになり、地域と住民をつなぐシンボルになっています。

元クラブ職員 平野勝哉さん
「昨日アントラーズ勝って良かった、負けて悔しい、そういう話題がよく出てくるようになった。
やっと“住民参加型”の形ができた。」

拡大の一方で課題も…

和久田
「取材した本間記者とお伝えします。
まさに1つになれる、こうした地域に密着したプロチームは、今どのくらい広がっているのでしょうか?」

本間祥生記者(NHK水戸)
「平成5年に始まったJリーグは、当初は10クラブでしたが、その成功を『おらが町にももたらしたい』と、現在、39の都道府県の55クラブにまで増えました。

さらに、バスケットボールのBリーグや、野球の独立リーグなど、さまざまな競技でプロチームが誕生し、その数は100を優に超えています。」

和久田
「チームが増えることで活発になる反面、人気や観客数などが分散してしまうおそれもありませんか?」

本間記者
「その結果として、資金力のないチームは観客動員で苦戦を強いられています。
中には経営難に陥り、運営母体が変わるチームも出てきました。
地域振興の核となるプロスポーツチームをどう維持していくか。
課題が突きつけられています。」

厳しいチーム経営 続く試行錯誤

リポート:藤川諒(スポーツ番組部)

サッカーJ2のレノファ山口。
Jリーグ参入5年目の、新しいクラブです。
県内唯一のプロスポーツチームですが、昨シーズン、ホームでの平均観客数は約6,100人。
安定運営のためにクラブが目標としている7,000人には及んでいません。

クラブの運営部長、内山遼祐さんです。
観客動員が伸びない理由の1つに、「山口の立地」があると考えています。

東には、J1で優勝経験のあるサンフレッチェ広島やプロ野球の広島カープ。
西には、ソフトバンクホークス。
県内のスポーツファンの多くは、外を向いてしまっているのです。
さらに、県内企業からのスポンサー料収入も、ここ数年は横ばいです。

レノファ山口 運営部長 内山遼祐さん
「なかなか一気に1,000人、2,000人増えるような起爆剤はレノファ山口にはないと思うので、何が出来るかと考えたときに、本当に積み重ねだと思う。」

チーム存続へ、どう観客数を増やすのか。
2月の開幕戦。
スタジアムで地元小学生による演奏会を開催しました。
サッカーに興味のない人にも足を運んでもらうねらいです。

さらに観客増員作戦は、県外にまで及びます。
この日、レノファ山口は愛媛県でのアウェーゲームです。

会場にブースを出し、山口の魅力県をアピール。
次の試合で来てもらおうというのです。

「無料サービスもあるので、ぜひ山口にいらしてください。」

山口県からも4人の職員が参加。
ういろうなど、特産品があたる抽選会などで、愛媛サポーターにアピールします。

愛媛FC サポーター
「秋吉台とか名前は聞くけど、行ったことはない。
ぜひ次のアウェー戦は行きたいと思う。」

愛媛FC サポーター
「お得なクーポンももらったので、愛媛FCもレノファ山口も両方応援しに行きたい。」

レノファ山口では、九州などの試合にも出向き、安定したクラブ運営のため、観客動員を増やす試行錯誤を続けていく予定です。

レノファ山口 運営部長 内山遼祐さん
「アウェーの地にも観光PRに来られるのは意義がある。
スタジアムを満員にしたい。
レノファ山口が地域にあってよかったと、成績にかかわらず思われる存在になりたい。」

求められるのは「地域の本気度」

高瀬
「かつてジーコさんがやってきた鹿島アントラーズ、それから今で言うとヴィッセル神戸のように、スーパースターを呼ぶという手法もあるのでしょうが、なかなかどのチームもできることではないですよね。」

本間記者
「クラブが増えることで運営のモデルケースも増え、外国人など、新たなサポーターを開拓するクラブも出てきています。
その上で、新たな時代に改めて求められるのは、やはり『地域の本気度』です。
スポーツビジネスが専門の早稲田大学・原田宗彦教授は、次の時代に持続可能なチーム運営を行っていくヒントとして、『行政・企業がプロスポ-ツの価値に気付くこと』を挙げています。

スポーツは、集客力や情報発信力、そして放送権料などの経済活動を生み出します。
地域住民や行政・企業などが一体となって『おらが町のスポーツチームを育てていく』。
その本気度が新時代への突破口になると感じました。」


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