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2019年3月20日(水)

シリーズ「新時代への突破口」 “平成の大合併” 自治体が直面した厳しい現実

和久田
「シリーズ『新時代の突破口』。
今日(20日)のテーマはこちら…。」

平成11年から始まった、いわゆる「平成の大合併」。
行政の効率化を目的に進められ、全国の市町村の数は、およそ3,200から1,700に減りました。

高瀬
「この『平成の大合併』を進めるために18.5兆円が使われたことが明らかになりました。
新潟大学と拓殖大学の研究グループが試算したものです。
18.5兆円の税金で進められた『平成の大合併』。
しかし今、合併した自治体の多くは厳しい現実に直面しています。」

建てすぎた施設が財政圧迫

4年をかけて合併を進め、「平成の大合併」では、全国最多の15の市町村が1つになった新潟市。
それから10年あまり。

中原八一市長
「本市の財政状況は極めて厳しい状況にある。」

市は、今後3年間を、集中改革期間とすると発表。
コスト削減を迫られています。

氏家寛子(NHK新潟)
「合併を機に新潟市は、次々とこのような公共施設を建設しました。」

総事業費24億円の秋葉区文化会館です。

担当者
「コンセプトが『文化の里山』。
葉っぱや木の幹をイメージ。」

施設の維持や運営にかかる経費は年間8,000万円以上。
稼働率は30%台です。

市民
「見たいのとか聴きたいのがあるときは来る。」

市民
「(施設に)入ったこともないし、身近と思ったことない。」

さらに、車で30分ほどの距離にも、同じ規模のホールを持つ文化会館が2つあります。
ほかにも、旧市町村からの要望を受けて、各地で図書館やプール、それに体育館の建設など、500以上の新たな事業を行った新潟市。
合併に伴う事業費は、およそ3,000億円にも上りました。
市内の公共施設の維持費は、人件費を含めて、年間926億円。
市は全てを維持していくことは困難とし、今後、再編を進めていく方針です。
去年(2018年)秋まで、4期16年務めた前の市長は、こうした事業は、合併を進めていくのに必要だったとしています。

篠田昭前市長
「『しっかりまちづくりをやる』という、合併地域・旧新潟市民に対する約束でやってきた。
本格的な行財政改革をしっかり打ち出すのが1〜2年遅れたのが一番の反省だと思う。」

合併を進めるために国が用意した“大きなアメ”

高瀬
「市町村合併を取材している斉藤記者です。
私、ちょうどこの『平成の大合併』が始まった平成11年にNHKに入って、まさに新潟で勤務していたんですが、当時、『合併に乗り遅れるな』『そのメリットを享受しなければ』というような空気があったことも確かだったと思うんですよね。
今回、この新潟市ですけれども、施設のケース、箱物ですよね。
これが『合併の条件だった』ということでしたけれど、この建設費もまた、合併を進めるための費用から出たということになりますか?」

斉藤隆行記者(社会部)
「実は、国は合併を進めるために、いわば『大きなアメ』を用意したのです。
合併した自治体が施設建設などのために行った借金の7割を国が負担。
さらに『地方交付税』を特例で10年間増額というもので、試算で18.5兆円が投入されていることがわかったんです。
こうした優遇措置によって、結果、多くの自治体で新潟のように新たな施設の建設したり、さらには、本来であれば統廃合を目指すべき施設を先送りして維持させてしまう状況を作ってしまったといえるんです。」

和久田
「特例が10年ということは、すでに終わった自治体もでてきていますよね?」

斉藤記者
「そのとおりです。
すでに合併した自治体の1割で特例が終わり、残りの9割でも交付税の減額が始まっています。
こうした中、地域の公共施設をどう運営していくのか、住民自らが動き出したところがあります。」

住民が地域の自治を 三重県伊賀市の取り組み

平成16年に1市5町村が合併して誕生した、三重県伊賀市。
公共施設の4割を削減する計画を打ち出しています。

「こちらが保育園だったんですけど。」

市が3年前に廃止した保育園。
地域の人が集うレストランに改修されました。

住民
「こういう憩いの場は、われわれ住民には本当にありがたい。」

保育園だった建物の活用方法を決めたのが「住民自治協議会」です。
市は、合併前の役場の機能を市役所に集中させる一方、39の小学校の校区に、住民が主体となる組織として設けました。
協議会は、市から交付金を受け取り、道路の補修や移住者の相談など、行政が担いきれなくなった機能を補っています。

柘植地域まちづくり協議会 西田方計事務局長
「だいぶ移住してからたつ、どうですか?」

移住者
「相談のっていただき、ありがとうございます。」

レストランになった保育園。

建物のもう半分は、高齢者のためのデイサービス施設になっています。
この地区の高齢化率は4割。
自分たちが必要としている施設は何なのか、2年かけて話しあい、介護サービスを提供するNPOと契約を結びました。
バリアフリーだった建物の特徴を最大限生かしました。

利用者
「(自宅の)近くです。
よろしいわ、きれいやし。」

柘植地域まちづくり協議会 西田方計事務局長
「自分たちで自分たちの町をどうしていくか探し出す、道を見つけていくしか、しかたがない。
住民自治を取り戻すという意味では、ピンチをチャンスにして、取り組んでいくしかない。」

問われる“自分たちの町の未来”

和久田
「この伊賀市の場合は、合併を機にできた仕組みが今、機能し始めているというところなんですね。」

斉藤記者
「ただ、協議会ごとに活動の差もあって、全てがうまくいっているわけではないんです。
さらに伊賀市も、地方交付税の特例措置が来年度で終わるため、協議会の活動費も減額されることが決まっていて、活動内容の見直しも迫られています。
特例措置の総額が18.5兆円と試算した専門家もこう指摘しています。」

拓殖大学 政経学部 宮下量久准教授
「合併した自治体は、いろいろな財政措置を国から受け、今まであまり自分の負担を感じなかった部分もある。
住民は、もう一度自分たちのまちはどうあるべきか考えることが必要になる。」

高瀬
「『平成の大合併』は、これまでもさまざまな検証が行われてきたと思うんですけれども、この特例措置が終わる、まさにこの時期から真価が問われていくということですか?」

斉藤記者
「そのとおりです。
これまでの検証は、特例措置を受けている最中でしたので、合併の成否の結論を出すのは時期尚早だったともいえます。
だからこそ、まさに今から徹底した検証が必要になると思います。
次の新しい時代は、この『平成の大合併』でできた自治体の枠組みで迎えることになります。
人口減少が進み、少子高齢化が深刻になる中で、住民サービスをどう維持していくのか、その際に今の自治体の枠組みでいいのか、この合併が何だったのか、私たち自身で考えて、新しい時代で改めて、その答えを出していかなければいけない宿題だと思います。」


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