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2019年3月24日(日)

復活!三陸鉄道リアス線 利用者増加のカギは

三陸鉄道リアス線。
けさ、初めての営業運行が始まりました。
東日本大震災の津波で、宮古-釜石間は線路の半分近くが流出や浸水。
4つの駅が全壊しました。
この区間を管轄していたJRは、当初、採算が厳しいことや、あまりの被害の大きさから復旧をあきらめ、バスを使った輸送システムでの再開を目指していました。
しかし、沿線の住民から鉄道として復旧を望む声が相次ぎ、三陸鉄道へ移管することを条件に、国や沿線自治体と、合わせておよそ210億円を投じて復活したのです。

小郷
「まさに地域の復興への期待を背負っての再スタートですが、課題もあります。」

新井
「三陸鉄道は、通勤通学など『生活路線』としての利用が主なんですが、沿線人口の減少などもあり、乗客数は震災前から減り続けてきたんです。」

小郷
「利用者をどう増やしていくのか。
新たな試みが始まっています。」

観光客をどう取り込むか

生活路線としての利用が落ち込む中、カギとなるのが「観光客をどう取り込むか」です。
岩手県などが設立した、観光をPRする団体のプロデューサー、北田耕嗣さん。
地元で旅行会社を経営していた経験を買われ、招かれました。
これまで、三陸沿岸の観光には、大きな課題があったと考えています。

岩手県には年間のべ2,700万人余りの観光客が訪れます。
しかし、新幹線が通る盛岡や世界遺産のある平泉など内陸部に集中し、沿岸部を訪れるのは数%に過ぎませんでした。

そこで、三陸鉄道リアス線の開通をきっかけに、ウニや絶景、カキ、サンマなど、沿線の地域ごとに魅力を打ちだし、鉄道で各地をめぐってもらおうと考えたのです。

三陸DMOセンター 観光プロデューサー 北田耕嗣さん
「三陸の魅力は、あまり急がない旅。
その地域の風土を感じる旅がすごく合っていると思うので、(観光)ルートを作っていきたい。
人であったり、地域で、ここでしかできないプログラムを作っていくのが必要。」

地元住民が発掘する魅力

魅力ある観光ルートをどう開拓するのか。
北田さんが期待しているのが、沿線に住む人たちの力です。
今、全国各地で、外国人を中心に「そこでしかできない体験」に人気が集まっています。
そこで、その地域を最も知る、地元の人が適任と考えたのです。
北田さんの呼びかけに応じて集まった1人、宮古市でゲストハウスを営む、佐山春さんです。
震災の復興支援で訪れたのがきっかけで、およそ2年前、東京から移住してきました。

佐山春さん
「町歩きを通して宮古を盛り上げたい。」

サケやワカメなど、本州有数の水揚げで知られる宮古市。
昔ながらのたたずまいを残す港街です。

佐山春さん
「宮古で一番古い街灯と言われてて…。」

佐山さんはその町を歩くことで、昔ながらの風情を楽しんでもらえると考えました。

この日、訪れたのは、重茂(おもえ)漁港。
震災前までワカメの収穫量で日本一を誇っていました。
浜の人たちと一緒に、出荷作業を体験。

「ワカメを刻んで天ぷらにした。」

ここでしか味わえない味覚も堪能してもらいます。
振る舞われたのは、とれたてのワカメを使った「漁師めし」。
磯の香りが広がります。

その土地で暮らす人たちが発掘する魅力。
北田さんはそれらを連携させることで、各地を訪れる三陸鉄道の利用者が増えることを期待しています。

三陸DMOセンター 観光プロデューサー 北田耕嗣さん
「きちんとつながっていくってことが大事。
“大船渡に泊まったから、次どこ行ったらいい?じゃ宮古へ泊まれよ、次は久慈行けよ”。
リレーションができる、そういった体制が三陸鉄道を通してつながっていく。」

三陸鉄道 問われる今後

小郷
「スタジオには、盛岡放送局の山下デスクです。
巨額の費用をかけてでも、鉄道として再出発することを選択した三陸鉄道ですが、観光客をどう増やせるかが、経営面でのカギになりそうですね。」

山下武朗デスク(NHK盛岡)
「まさにそのとおりです。
三陸鉄道は今、国などの財政支援を受けているにもかかわらず、赤字経営を強いられています。
それだけに、今回のリアス線開通をきっかけに、黒字への転換を図りたいというのが本音です。

鉄道だけでなく、『復興道路』の整備も進んでいて、内陸から沿岸部へのアクセスが格段に良くなることから、観光客が増える可能性は十分にあります。
専門家は、鉄道の採算を考えるよりも、地域全体にどう人を呼び込むかが、より重要だと指摘しています。」

関西大学 宇都宮浄人教授
「鉄道事業単体の黒字を目指すことにしがみつくことはよくない。
鉄道があることによって地域が潤うことが大切。
鉄道はそれに対する投資。
いいものがあれば外出が増える、交流が増える、地域が豊かになる。
豊かな地域だから観光客が来るんだと、こういうところがポイント。」

新井
「沿線の釜石市では今年(2019年)、ラグビーのワールドカップも開かれますよね。」

山下デスク
「試合の前後を含めて、一度に世界から大勢の人たちが釜石にやってきます。
その魅力を知ってもらい、さらに発信してもらうことで、一過性のものではなく、利用者を増やしていくきっかけにしていくことが期待されています。
被災地の復興にも大きく関わるだけに、新しい路線をどのように維持して発展させていけるかが、大きく問われていると思います。」

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