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2019年3月25日(月)

シリーズ「新時代への突破口」 どうなる介護保険制度

高瀬
「介護保険制度についてです。
40歳以上の国民みんなが保険料を支払い、社会全体で介護を支えていく制度。
平成12年に創設されました。
しかし、この20年近くの間に状況が大きく変わりました。」

和久田
「介護が必要な人は640万人、そして費用は10兆円を超えました。
いずれも当初のおよそ3倍に膨れ上がったのです。

必要な介護を受けられない人が出てくるなど、課題も山積しています。
介護を受ける人は、最も重い要介護5から、要支援1まで7段階に分かれていますが、特にしわ寄せが来ているのが、この『要支援』の人たちです。」

介護保険 要支援者にひずみ

都内に住む中川キヨ子さん、79歳です。
人工透析を受けていて、治療後は、ほとんど動けなくなります。
このため「要支援2」とされ、週3回の介護が必要になっています。

中川キヨ子さん
「食べて寝る、透析の日はそれぐらい。」

ホームヘルパー
「こんにちは。」

ホームヘルパーがやってきました。
玄関に上がると、あいさつもそこそこに、急いで台所に向かいます。
実は3年前から介護の時間が60分から45分に短縮されたのです。

ホームヘルパー
「(晩ごはん)今日は何にしましょうか。」

本来、要支援の人は、ヘルパーと一緒に家事をしたり会話したりして、重度化を防ぐことも介護の重要な目的とされています。
また、ヘルパーが健康状態の変化に気付くことも求められています。
しかし、ヘルパーは、ひとり黙々と調理。
介護の時間が短縮されたため、中川さんをケアする余裕がありません。

ホームヘルパー
「やりながらだと、なかなかね。
45分というのは、あっという間。」

中川キヨ子さん
「60分の時は2人で和気あいあいしゃべりながら料理していた。
時間がもう少しあれば。」

なぜ、介護の時間が短縮されたのか。
介護費用が増大する中、4年前に要支援の一部の介護が、国から市町村に移されました。
地域にあった介護制度を進めるのが目的でしたが、財政負担の大きい市町村などは、介護報酬を引き下げていったのです。

このため事業所は、1人当たりの時間を短くして、より多くの人を介護しないと収益が出なくなってしまいました。

ホームヘルパー
「『ごめんなさい』と言って帰らなければいけない。
利用者の方に申し訳ないと思う。」

悲鳴あげる事業所

市町村への移行は、介護事業所にも大きな影響を与えています。
都内の事業所では、要支援の介護報酬が最大3割下げられました。
これによって人件費を削減せざるを得なくなりました。

「ごめんなさい」と書かれたこのファイル。
人手不足で、介護を引き受けられなかった人たちのリストです。

「ヘルパーがいなくて『お断り』。」

このままの状態が続けば、要支援の人たちの介護を引き受けられなくなるおそれもあるといいます。

介護事業所 根本明子所長
「ここから先は、介護度いくつ以上じゃないと受けないとか。
『家族が見てください』というような形になっていくことも考えられる。」

どうする介護保険制度

介護保険制度の創設に関わった専門家です。
介護の担い手が想定以上に不足し、制度が岐路に立っていると感じています。

東京大学 大森彌名誉教授
「この制度は必ず維持できると言ったが、当初の想定以上に速いスピードで人口が減ったので、今のような社会では持たないということは明確。
もう一回本格的に検討しないといけない時期にさしかかっている。」

制度の外で助け合い

リポート:氏家寛子(NHK新潟)

介護保険制度が限界にきている中、制度の枠の外で、住民どうしの助け合いによって支援に乗り出そうとしている自治体もあります。
新潟市内で1人で暮らす大野初美さん、81歳です。

「おはようございます。」

大野さんのもとを訪ねてきたのは、ボランティアの「ご近所さん」です。

大野初美さん
「ドア裏表、から拭きして。」

支援を求める人と、手助けができる近所の人とをマッチングする取り組み。
新潟市が去年(2018年)10月から試験的に始めました。

排せつの手助けなど専門的な介護はしませんが、掃除や買い物などを行います。
依頼した人が負担するのは、1回500円の謝礼と交通費だけです。

大野初美さん
「(次は)金曜日に来て、15日。
ご苦労さまでした、ありがとう。」

「ご近所さん」どうしの支え合いを広げる研修会も開いています。
この日は、手助けができる地域の住民、およそ50人が集まりました。
隣近所に住む間柄だからこそプライバシーに気を遣うよう、配慮を求めます。

高齢者支援のアドバイザー
「言われてないところは触らないし、プライバシーもちゃんと守る。
こういったことをみんなで気をつけよう。
うわさ話になっていく、ご近所のことであれば、なおのこと。」

住民のボランティア精神だけで、こうした支援を担っていけるのか。
新潟市は、財源や人手に限りがある中、この取り組みを進めていくことが不可欠だと考えています。

新潟市 福祉担当 仁多見浩参事
「日本の制度なんて信用できない、ある意味でいうと。
金がないからできなくなるということがないように。
行政だけでは絶対できない、まさに民の視点、市民個人の視点がなかったらできない。」

待ったなしの議論

和久田
「取材した福田記者とお伝えします。
もはや制度とは別で、ご近所の力を借りなければいけない地域も出てきているのですね?」

福田和郎記者(社会部)
「要支援の人たちの介護を怠ると、重度化してしまって、さらに介護が必要になる悪循環が生まれてしまいます。
そうした意味で近所の助け合いはとても有効な対策なのですが、どの地域でもできるわけではありません。
やはり制度の中で、必要な介護を提供していく努力を怠ってはならないと思います。」

高瀬
「創設に関わった専門家も『このままでは制度を維持できない』と話していましたけれども、今後、介護を受ける人はどんどん増えていきます。
その中でどうしていくのか、ということですよね?」

福田記者
「次の時代には、保険料の負担を上げるのか、介護サービスを縮小すべきなのかといった議論が必ず待っていると思います。
ただ、予算がないからといって必要な介護が受けられない人が出てくることは、必ず避けなければならないことだと思います。
誰もが関わる制度だけに、私たち一人一人が考えていく必要があると思います。」


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