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2019年3月26日(火)

都市部が“限界集落化”?

高瀬
「先週発表された、土地の価格の動向を示す『地価公示』。
大きな変化の1つが、実に27年ぶりに、地方の住宅地が上昇に転じたことです。」

和久田
「こちらをご覧ください。
赤い点が、住宅地の地価が5年前と比べて上昇した地点。
全国の地方都市に広がっています。

さらに、これらの地点に人口データを合わせて分析したところ、地価は上昇していても、人口が減っている地方都市が多くあることが分かりました。
そのうちの1つが、長崎市です。
一体何が起きているのでしょうか。」

“地価上昇”でも 周辺は空き家に…

リポート:平井貴大(NHK長崎)

人口およそ42万人の長崎市です。
JR長崎駅周辺は今、新幹線の建設や県庁の移転など、大開発が進んでいます。

地価は去年I(2018年)に比べ、商業地で最大16.7%上昇。
駅から徒歩圏内の住宅地でも、9.5%上昇しました。
ところが…。

自治会長 辻郷國昭さん
「ここが空き家、ここも、この下も空き家…。」

長崎駅から、およそ1.2キロの大鳥町です。
自治会長の辻郷國昭さん。
ここで50年暮らしてきました。
市の中心部で、地価の上昇が続く中、辻郷さんが住む中心部周辺の住宅地では、空き家が広がっているのです。
長崎市では、高度経済成長期、人口の増加に伴い、斜面に沿って住宅地が拡大。
近所には、家族世帯が多く暮らしていました。
しかし、高齢化とともに、道が狭く車も通れないこの地区からは、多くの住民が出ていきました。

自治会長 辻郷國昭さん
「(住民の数は)半減以下だもんね、非常に厳しい。
ここまで落ち込むとは思わなかった。」

中心部付近が“限界集落”に

65歳以上の高齢者が住民の半数以上を占める、いわゆる「限界集落」。
今、中心部に近い住宅地で広がっています。

限界集落化はどのぐらい進んでいるのか。
駅を中心に半径5キロの範囲で、住民の年齢別の構成を調べてみました。

オレンジは55歳以上の人口が半数以上を占める“準限界集落”にあたる地域。
赤は65歳以上の人口が半数以上を占め、“限界集落”化が進む地域を示しています。
5年間で、赤の限界集落化が進む地域が広がっていることがわかりました。

自治会長 辻郷國昭さん
「20年続けた祭りがあったんですよ。」

町の賑わいを象徴していた祭りは担い手がなくなり、3年前には廃止に。

隣の地区では、自治会そのものがなくなりました。

自治会長 辻郷國昭さん
「ひょっとしたら(この地区も)消滅するかもわからない。
この先どうなっていくのか想像ができない。」

高齢者の中には、便利な駅周辺に移住したいと考える人もいますが、容易に手が届かないほど地価は上昇しています。

「最低5,000万円かかりますから、ちょっとした家だったらね。
年金生活で5,000万円は無理ですよ。」

「(駅の近くへ)下るって何回か思いましたよ。
でもね、なかなか…。
ここでもうよかねと思って。」

都市部が“限界集落化” どんな問題が?

高瀬
「取材した伊賀記者です。
中山間地域で多く見られた“限界集落”が、都市部でもできているんですね。」

伊賀亮人記者(ネットワーク報道部)
「こちらをご覧ください。
この黄色い場所は、住宅地の地価が10地点以上、上がっているのに、5年間で人口が減っている自治体です。
全国で54か所に上ります。
こうした自治体では、長崎市のように、中心部の地価は上がっているのに周辺部では若者が流出し、空き家が急増している地域も多くあります。」

和久田
「都市部の限界集落化には、どのような問題があるんですか?」

伊賀記者
「住宅密集地だけに、空き家が増えると災害時に被害が拡大するおそれがあるほか、コミュニティーが維持できず、高齢者の見守り活動などが難しくなることも懸念されます。
また、暮らしを支える公共サービスをどう維持するのかという課題も出ています。
そうした課題に直面している自治体の1つ、新潟市です。
新潟駅に近い地域で限界集落化が進む中、住民を巻き込んだ議論が始まっています。」

地域どうしの連携 公共サービスの取捨選択を

リポート:氏家寛子(NHK新潟)

市の中心部から10キロほどにある、西区の寺尾上地区です。
ここで問題になっているのが、「ゴミ出し」です。
高齢化が進む中、自力で重いゴミを集積所まで運べない高齢者が増えています。

住民
「うちが一番遠いですよ。
(ゴミの)ステーションまで持って行けないし。
足が悪くて。」

市は、それぞれの家庭までゴミを集めにいくとコストがかさむため、ゴミ出しを住民にサポートしてもらおうという取り組みを進めています。
住民グループが、週に数回、高齢者の自宅を1軒1軒回り、ゴミを回収して集積所に運びます。
市は、協力してくれるグループに対し、ゴミを1軒回収するごとに150円を支援金として出します。
今では、市内で600人を超える高齢者がこのサポートを利用しています。

この地区の自治会長を務める、梶原宜教さんです。
地域の限界集落化が進む中、隣の自治会などに協力を呼びかけて、取り組みに参加する住民を確保しています。

住民
「安心してお任せしています。
本当に助かっています。」

自治会長 梶原宜教さん
「(自分で)できないところは、『私どもでやりますよ』でいいんじゃないかと。
問題が起きれば、目を光らせて私どもに連絡するとか、(他の地域と)連携していけばうまくいく。」

中心部の周辺で進む限界集落化。
人手やコストがかさむ中、新潟市では市民も参加して、公共サービスの取捨選択を始めています。
何に優先してお金を使うのか、民間に任せられるものはないのか、議論しています。

「民間が入ってくれば、いろんなアイデアが入ってくる。」

「利用して管理してもらって、なおかつ収入にもつながるなら、それにまさるものはない。」

市は、こうした活動をすべての地区で実施することにしています。

新潟市 財産活用課 永井康生課長
「サービスの提供が低下してはダメですので、そこを上手に折り合いを付けながら、地域の皆さんとも頑張って取り組んでいかなくてはと考えています。」

地域全体で議論を

高瀬
「中心部付近が限界集落化して人口が減ったとしても、公共サービスを減らすことはなかなか難しいですよね。」

伊賀記者
「そうですね。
ただ、人口が減少すればその分、自治体の税収も減少するので、今後、財政上の制約はさらに大きくなっていくことが見込まれます。
都市計画の専門家は、次のように指摘しています。」

東洋大学 理工学部 野澤千絵教授
「これから人口が減って、市町村の職員の数も今ほどとれない状況になってくる。
今の段階から『自分たちの街は自分たちでどうする』という仕組みとか、ネットワークを作っておくことが非常に大事になってくる。」

伊賀記者
「2025年ごろには団塊の世代の人たちが後期高齢者になり、各地でさらに限界集落化が進むことも予想されるだけに、将来を見据えて、今、地域全体で議論を始める必要があると思います。」

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