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2019年4月21日(日)

18年ぶりに開校 夜間中学の“いま”

石橋
「こちらは、1969年の夜間中学の様子です。
夜間中学は、戦後の混乱期に義務教育を受けられなかった人の『学びの場』として設けられました。
ピーク時の1954年には全国に89校ありましたが、去年(2018年)の時点で8都府県、31校にまで減少していました。」

新井
「その夜間中学が、今月(4月)、公立のものとしては18年ぶりに埼玉県と千葉県に開校しました。
新設の背景には、何があるのでしょうか。」

生徒の6割以上が外国人

埼玉県川口市に開校した夜間中学です。
先週、入学式が行われました。

ペルー出身の新入生
「年齢も国籍も違いますが、それぞれの夢に向かって仲良くやっていきましょう。」

生徒の6割以上が、日本語や日本の文化などを学びたいという外国人。
中国人の主婦、鄭銘麗(てい・めいれい)さんも、その1人です。

鄭銘麗さん
「日本語が上手になりたい。
いろいろなことが勉強したいです。」

夜間中学がある川口市。
実は、全国で3番目に外国人が多い街です。

その数、3万5,000人。
平成の30年間でおよそ8倍に増えました。

川口市に住む外国人
「住みやすいです。」

「(友達が)20人くらい。
大体みんなこちらです。」

魅力は都心まで30分程度で、家賃2万円台からの安さ。
外国人が多く集まるという安心感も、さらに人を呼び込んでいる要因です。

不動産業者
「知り合いが住んでいるとか、住みやすいと、中国人の方が増えだして、物産店ができたり、飲食店ができたり、人が集まるようになって、どんどん増えている。」

日本語が大きな壁に

夜間中学に入学した鄭さんも、親族が集まる川口市に住んでいます。
中国では生花店を経営していましたが、日本で働く夫と暮らすため、4年前に来日。
日本でも店を開くのが夢です。

鄭銘麗さん
「日本語がうまくなったら、日本でお花屋さんをやりたい。」

しかし、その日本語が大きな壁になっているといいます。
週に一度、中華料理の総菜店でアルバイトをしている鄭さん。

「ホイコーローは5個もいらない。」

鄭銘麗さん
「何個ですか?
おかずは2種類だけ?」

日本語に不安があるため、中国人のスタッフがいる職場しか選べず、日本の社会から孤立していると感じています。

鄭銘麗さん
「この仕事の前は、日本の会社の仕事を探しました。
言葉(日本語)はまだうまくない。
ちょっと不安があります。」

鄭銘麗さん
「(小学)3年生のテスト。」

今、鄭さんは、地元の小学校に通う娘の教材を使い、勉強を続けています。

鄭銘麗さん
「“メモ帳”の意味は?」


「人が話していることをメモして…」

鄭銘麗さん
「人が話していることを記録するもの?」


「そうそう。」

生花店を開くという夢を実現するためにも、夜間中学に入り、日本語を学ぶことは、鄭さんにとって念願でした。

鄭銘麗さん
「日本でずっと生活しますから、日本語は一番大切です。」

それぞれの“学びたい”をどう支えるか

鄭さんが入学した夜間中学です。
授業開始に向けて、準備作業に追われていました。

教師
「ここは仕切りを作って、保健室を作ります。」

教師
「ここはパーティションで区切って、校長室を作っています。」

閉校した高校の建物を活用した校舎は、多くがまだ工事中。
日本語が不自由な生徒も多いため、ゴミ箱にはこんな工夫も。

教師
「カタカナも読みにくいという生徒さんもいるので、思いつきでやってます。」

授業開始を目前に、今、教師たちの頭を最も悩ませているのが、カリキュラムをどう作るかです。

教師
「早急に生徒の状況を把握したい。」

日本語を学びたいという外国人が多い一方で、夜間中学は、昼間の中学と同じ9教科などを学ぶことになっています。
さらに、不登校などで学び直したいという日本人もいるため、学力の基礎レベルはさまざまです。
そこで、当初、各教科を学力別に分け、それぞれに教師をつけて授業をしたいと考えていました。
ところが、教師の数は昼間の中学と同じ基準のため、数学以外は十分な人数を確保できなかったのです。

教師からは戸惑いの声が相次いでいます。

教師
「どうやってクラス分けするかも議論が全くスタートできていない状態で、授業のスタートが心配。」

芝西中学校陽春分校 杉田明校長
「(クラス分けは)授業内容とリンクしてくる。
それがないから、みんな進まない。
早く決めないとだめ。」

この学校では、態勢が整うまで、数学と体育のみでスタートすることになりました。

芝西中学校陽春分校 杉田明校長
「(国が)全教科そろう定数を組んでくれれば、こんな苦労はない。
プラスして外国籍(の生徒)も入れるというのなら、日本語対応教員という特別な教員も置かないと無理。
それぞれの人が学びたい気持ちを大切にする、学ぶ機会を与えてあげるという学校で、『できません』じゃ、通ってきた人たちが魅力もなくなってしまう。」

手探りの中スタートした、18年ぶりの夜間中学。
それぞれの“学びたい”をどう支えるか。
模索は始まったばかりです。

鄭銘麗さん
「ここで勉強して、全部準備したら、お花屋さんを作りましょう。
頑張ろう。」

報告:直井良介(NHKさいたま)



石橋
「この夜間中学、国は、不登校などで学び直したいというニーズなどから、すべての都道府県に対して少なくとも1校は設立するよう求めています。」

新井
「しかし現実を見ると、日本語を学びたい外国人と、学び直したい日本人、どちらのニーズにも応えるには、先生の数も、昼間の学校と同じ体制では難しいかもしれませんね。」

石橋
「今回開校した川口市の夜間中学では、先生たちが自分の担当以外の教科も手伝うことで、なるべく早くすべての科目の授業を始めたいということです。」

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