これまでの放送

2019年5月8日(水)

急成長の雑貨店 この先のビジネスの姿

高瀬
「次世代を担うトップランナーに聞く、シリーズ『令和に生きる』です。」

和久田
「けさは、モノが売れなくなった平成の時代に、売り上げを10倍以上伸ばした雑貨店の創業者に伺ってきました。」

中川政七商店 会長 急成長の雑貨店

和久田
「わあ、おしゃれですね。」

平成18年に1号店をオープンしたこの店。
この13年間で、全国に55店舗にも広げている雑貨店です。
創業者の中川政七さん、44歳です。

まずは、店内をのぞいてみます。
中川さんの店で扱うのは、いずれも職人の技や発想が光る生活用品です。
例えば、このすり鉢。

和久田
「香りがただよって。
すれてますけど、なんでだろう?」

実はこれ、溝がないんです。
溝の代わりに、表面の凹凸が、うまくごまをすり潰していました。
これは、土鍋で有名な三重県の万古焼(ばんこやき)の特徴です。

さらに、このすり鉢には、使う立場に立った気配りが行き届いています。

中川政七商店 会長 中川政七さん
「角度がポイントで。」

和久田
「角度?」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「普通、すりばちって、一定の角度になっていますよね。
すると上に逃げるんですよ、ごまが。
これは、その角度を急にして、1か所に(ごまが)たまるようになっているので、効率良くすれる。」

和久田
「かゆいところに手が届くって、こういうことですよね。」

商品の裏側の物語に価値

商品のディスプレーにも、工夫がありました。

和久田
「見ていくと、こういう道具が何でこういう作りになっているのかという説明文が置いてありますよね。」

こちらは、ヘアブラシの説明書きです。
「台座に一本一本、竹ピンを職人が手植えした」とあります。
そして、「丸いピン先がマッサージにもなる」とも書かれています。

そのヘアブラシ。
説明書きと一緒に見ると、自然と使うイメージが浮かんできます。
単に商品を売るのではなく、商品の裏側にある職人の思いと地域に息づく伝統に「価値」を見いだし、そこに値段をつければ確実に売れると考えたそうです。

和久田
「モノが売れない時代と言われていますよね。
でも、一つ一つの品物への愛情が読み取れますよね。」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「表面的なデザインだけでなく、裏側のストーリーも僕らなりにくみ取って、1つの物語としてお伝えできる状況になるべくしようと思っている。
その物語に共感していただけると、初めて買っていただけるのかなと。
こういうものは、家に類似品が絶対1個くらいある。
そこでまた買ってもらうのは、何かそこに『へえ』とか『ほお』とか、会話が生まれて楽しいじゃないですか。
そこまでをデザインしないと売れない時代なんだろうなって思いますね。」

中川家は、江戸時代から続く奈良県有数の麻織物の問屋でした。
しかし中川さんは家業は受け継がず、サラリーマンになりました。

その後、実家に戻った中川さんは、赤字が続く問屋を小売店に変え、再スタートを切ることにしたのです。

中川政七商店 会長 中川政七さん
「2000年に社会に出て、それ以降、景気が良い時代を過ごしてはいないけど、景気が悪いから昨年より数字が落ちるのが当たり前だとは一度も思ったことはない。
僕ら去年より絶対うまくなっているよね、努力してきているよね、じゃあ去年より数字よくて当たり前だよねというのを言い続けて今があるので。
自分たちが生きる道を考えてやっていけば、必ず生きる道はある。」

伝統技術を守る情熱

中川さんのもう一つのこだわりは、地域に培われた伝統技術を決して絶やしてはいけないという思いです。
中川家の麻織物の問屋も、300年を超える伝統がありました。
しかし、ひとたび店を畳むと、麻を織る工場(こうば)、職人、そして技術は全て地域から姿を消しました。

和久田
「そういう現場を目の前でご覧になった経験が突き動かしていると。」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「今、どこも確かに厳しいけど、一度断絶すると復興はほぼない。
一度途絶えたものを復興させることの大変は、身をもって感じるので。」

そこで自ら地域に出向き、始めたのが、職人技を守っていくための支援です。
その一つ、福井県鯖江市に長年受け継がれている越前漆器です。
漆を幾重にも塗った鶴のお椀。
しかし、高価で普段使いがしにくい食器は、平成に入ると次第に敬遠されていきました。
漆器が売れなくなれば、漆を掻く職人、器の型を作る職人、器に漆を塗る職人など、地域に根づく職人技が途絶えることになります。
中川さんは、漆の補強材としての本来の役割に注目。
塗る回数を減らし、黒や朱色にこだわらない特色のある漆器に仕上げました。
さらに、特殊な技術で、食洗機に強い漆器の開発もアドバイスしました。
こうした取り組みでコストを抑え、気軽に普段使いできる漆器を登場させたのです。

和久田
「伝統を残していかなければいけない、残していきたいと思っても、それをビジネスとして成立させるのは、なかなか容易ではないと思うんですけど。」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「毎日そのものを作っていると、どんどん視野が狭まって、うちの技術すごいやろとなるんですけど、お客の心に響かないことだったりする。
伝えるべきことを間違えている。
何を伝えるか、いかに正しく伝えるかは難しい。」

和久田
「産地から、それをやっちゃうとうちの伝統じゃないから違うという反発は起きないのですか?」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「なぜ作るのか、強みを生かしていることが伝われば、みんな(職人は)前向きに取り組んでくれる。
職人さんと衝突したらどうするかと言われるけど、衝突したことはない。」

見えないものこそ価値を

伝統の意味を問い直し、新しい価値観を生み出した中川さんは、令和の時代をどう見ているのか、聞きました。

中川政七商店 会長 中川政七さん
「人口が減っていくのは厳しい時代だとは思う。
自分たちの思いが乗ったものを作れば、必ず後から共感は生まれる。」

和久田
「これまで培ってきたノウハウとやアプローチは、新しい時代も変わらないですか?」

中川政七商店 会長 中川政七さん
「通用して欲しいとは思っているが、20年、30年したらまた変わると思う。
ストーリーも大切だし、商品から透けて見えると言うんですけど、SNSで裏側が暴露されて炎上するとか、あれはあれで逆に良い時代だと思う。
正直者がばかをみない、表面だけ取り繕うことが通用しない時代。
手を抜かずにちゃんとやっていれば、何とかやっていけると思う。」

高瀬
「いいものを扱っている雑貨店ってたくさんありますよね。
伝統を守っていこうという声もよく聞きますが、それがビジネスとして成立しているんですね。」

和久田
「いいものをいかに正しく客に伝えるかということにこだわってらっしゃいました。
伝統を残していきたいという純粋な動機と、時代の先を読む力、それをあわせ持っているところに成功の鍵があるのだと感じました。」


<関連リンク>
■特集ダイジェスト
「テクノロジーと人類の未来」
「プロレスの魅力を信じて」
「体操×アーバンスポーツ 新時代スポーツの形」
「情報の選択 ヒントは歴史に ~歴史学者 呉座勇一さんの提言~」
「世界が注目 地方から“ごみゼロ”に挑む女性リーダー」

Page Top