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2019年5月11日(土)

情報の選択 ヒントは歴史に ~歴史学者 呉座勇一さんの提言~

石橋
「次世代を担うトップランナーに聞くインタビューシリーズ。
けさは、『ネット時代の情報との向きあい方』についてです。

新井
「最近は、日々起きるさまざまな出来事について、すぐに大量の情報が手に入るようになりましたよね。」

石橋
「私は、子どもの頃からインターネットが身近にあったので、わからないことがあるとすぐ検索、というのが普通になっています。」

新井
「ただ、多くの情報は手に入るけれども、何が本当かよく分からなくなったという経験をされた方も多いのではないでしょうか。
そんなときにどうしたらいいのか。
『ヒントは歴史にある』、そう話す気鋭の歴史学者に伺ってきました。」

大ヒット「応仁の乱」 現代人を魅了する秘密

2年前に出版された、新書「応仁の乱」。
今も売れ続け、47万部のヒットとなっています。

本を書いたのは、国際日本文化研究センター助教の呉座勇一さん。
日本中世史を専門とする歴史学者です。
室町時代に起きた応仁の乱は、将軍家の後継者争いに大勢の大名や武将が加わり、戦乱は、11年にも及びました。

呉座さんは、武将の対立や英雄と呼べる人物がいなかったことなど、当時の状況に迫り、複雑な背景を浮かび上がらせました。
そこには、こみ入った人間関係やリーダーの不在など、今に通じるものがあると、多くの人から共感を得ました。

国際日本文化研究センター助教 歴史学者 呉座勇一さん
「複雑難解で、何が何やってるのかよく分からない、なんか非常に混沌(とん)として先の見えない、そういう戦乱が、やはり共感、自分たちの生きる時代と近いと思って、そこにおもしろさを見いだされた方がいらっしゃる。
(世の中の問題は)そんな簡単には分からない、“複雑で難しいこと”というのは簡単に分かることではない。
『(世の中のことは簡単に)分からない』ことを分かってほしい。
それは現代もそうだと思う。」

“問題の単純化”に潜むワナ

そんな呉座さんは、世の中の問題を単純化して理解しようとすることに警鐘を鳴らしてきました。
物事の本質を見失ってしまうというのです。

例えば、有名な「本能寺の変」。
天下統一を目前にした織田信長に、家臣の明智光秀はなぜ反旗を翻したのか。
これは、歴史上の大きな謎です。

そこでその謎を埋め合わせるために登場したのが、「黒幕説」。
朝廷や豊臣秀吉、イエズス会などがたくらんだという、わかりやすい説明がこれまでにいくつも唱えられてきました。

呉座勇一さん
「モヤモヤする、そういう部分って。
ちょっと欠けているピースを埋めるのが、“陰謀論”とか“黒幕説”。
『これで100%全部きれいに説明できる』というところが、黒幕説の魅力。
ジグソーパズルの最後のワンピースをパっと入れて、『きちんときれいになったでしょう』というところが爽快。
実際は分からない、本当は分からないのだけど、分かったことにして“分かりました”って言ってしまう。」

ところが、単純に「陰謀説」に飛びついてしまうと、信長の死後、社会がどう変わったかという歴史の流れをみる見方にも大きな影響が出てしまうと言います。

呉座勇一さん
「極端に単純化してしまったら、それはもう全然違うもの。
だから半分うそをついているような状況。
まさに本質を見失うということ。
見当違いのところに矛先がいってしまい、結局、本来の本当の問題に議論がいかなくなってしまう。」

そして、さまざまな情報があふれるネット時代も、同じ過ちを犯してしまう可能性が、多分にあると呉座さんは指摘します。

先月(4月)19日、東京・池袋で起きた交通事故。
高齢者の運転する車が暴走し、親子が犠牲になりました。
その際、大きな関心として浮上したのが「なぜ運転していた高齢者が逮捕されないのか」ということ。

その時、ネット上には「高齢者が“元官僚”であるため誰かに守られているのではないか」という書き込みが飛びかいました。
呉座さんは、感情的な議論にとらわれ、「高齢者の事故を防ぐ」という本質的な問題が見失われていると感じたといいます。

呉座勇一さん
「高齢者の自動車の運転の問題とか、もっと考えなきゃいけないことはある。
ともかく『悪い』と糾弾して留飲を下げるだけでは、問題の解決につながらなくなるのではないか。
本来だったら、きちんと考えなければいけないのに、全然見当違いの解決策に飛びついた結果、本質的、根本的な問題は何も解決されないまま残ってしまう。」

“分からない”との向き合いかた

そうした中、これからの時代に必要なものは何か。
呉座さんが挙げたのは「分からないことと向き合う姿勢」でした。

呉座勇一さん
「『自分で結論が出せない』『答えが出せない』『白黒つけられない』という宙ぶらりんの状態は、非常に居心地が悪くて不快なものだが、そういう状態に耐えるということ。
『自分が分からない』『まだ知識や情報が足りていない』『勉強が足りていない』と素直に認めることが、誠実な、知的な態度、知的に正しいやり方であって、それをやらないと結局、成長もない。」

石橋
「インターネットで検索して、分かりやすい説明があると、つい納得しちゃうことがありますよね。」

新井
「最近は効率的に生きることも求められていますから、そうした情報を活用するのは必要だと呉座さんもおっしゃっているんです。
ただ、簡単に白黒をつけていいことであれば、それでもいいということなのですが、複雑なものは、複雑であることを受け入れて議論することが大切とおっしゃっていました。」

石橋
「集めた情報をうのみにせずに、一度疑うことが大切なんですね。」


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