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2019年5月12日(日)

世界が注目 地方から“ごみゼロ”に挑む女性リーダー

新井
「シリーズでお伝えしている『令和に生きる』。
けさは、この方です。」

政財界のリーダーが一同に集まり、世界的な課題について話し合う「ダボス会議」。
今年(2019年)、世界の若手リーダーの1人として、日本人女性が共同議長に選ばれました。

NPOゼロ・ウェイストアカデミー 坂野晶さん
「ごみゼロの社会は、ひとりひとりが参加しないと実現しません。」

徳島県上勝町を拠点に、ゴミをゼロにする取り組みを進めるNPOの理事長、坂野晶さんです。

坂野晶さん
「さまざまな方に、自分事として取り組んでもらうきっかけをどう作っていけるか。」

日本の地域発の取り組みで、世界の注目を集める坂野さん。
新たな時代、深刻化する環境問題にどう取り組むのか、聞きました。

地方の町から世界へ “ごみゼロ”の取り組み

四国山地の山あいの町、上勝町。
およそ1,500人が暮らしています。
町が16年前に掲げたのが「ゼロ・ウェイスト」。
ゴミを2020年までにゼロにするという大胆な目標です。

それを実現するため、住民はみずから収集所に家庭のゴミを持ち込み、徹底的に分別しています。

坂野晶さん
「紙類も9種類ぐらいに分別していて…。」

新井
「紙で9種類ですか?」

なるべく多くのゴミをリサイクルに回すため、分別は45種類。
リサイクル率は80%。
全国平均の4倍です。

さらに、そもそもゴミを出さない取り組みも。
まだ使える物は、捨てずに、住民どうしで物々交換。

なぜ、ここまで徹底できているのでしょうか?

坂野晶さん
「上勝町の場合も、ゴミを分別することはたしかに手間だし大変だけど、1つ貢献をして、それによって地域が何かしらいい状態で保たれる。
ゴミがなくなるときれいな地域になることもそうでしょうし、子どもたち、未来の世代に対して、きれいな水、おいしい空気、いい環境を残していこうと。
ごみの処理費も、分別することで少し抑えられていて、ごみ処理にたくさんお金を使わず、使わなくてすんだお金を町の教育や医療に使うことができる。」

実は坂野さん、出身は兵庫県。
上勝町の取り組みに魅力を感じ、25歳のときに移り住んだのです。

新井
「上勝町にほれ込んだ。
その後、移住されるわけですよね?」

坂野晶さん
「普通のおばあちゃんだったり、主婦やいろんな方に会ったときに、みなさんがそれぞれ自分の視点から、なんでゴミへの取り組みが大事なのか、ゼロ・ウェイストの活動がなぜ大事なのか、自分事として話す人がすごく多くて。
自分事として取り組みを考えている地域であれば、長く続くんじゃないか。
おもしろい、すごいなと。」

まちの成果を積極的に発信。
海外からも視察が相次ぎ、小さな町の取り組みは世界に知られるようになったのです。

しかし、坂野さんたちの活動は、ある壁にぶつかります。
どんなにリサイクルを徹底しても80%どまり。
残り20%は、ごみとして廃棄しなければなりません。
その理由は、企業が設計段階からリサイクルを前提とせず、生産しているからだとみています。

坂野晶さん
「残りの20%は、上勝町だけいかに頑張っても無理。
そもそも製品の設計段階から、リサイクルできる前提で製品を作る、そういう素材を使うように変わっていかないと、地域の単位では無理なものは無理。
上流の、ものを作っている側が変わっていくことにどうアプローチができるか。
そこが変わらないと、上勝町のゼロ・ウェイストというゴールもなかなか進まない。」

循環型経済への転換

この壁を、どうしたら乗り越えられるのか。
大きなヒントを得たのが、ダボス会議でした。

ニュージーランド アーダーン首相
「(持続可能な社会の実現には)どの国も経済的な成功だけを求めてはいけない。」

世界のリーダーたちの間では、「環境問題の解決なくして経済成長はない」という考えが、広がっているのを感じたのです。

坂野さんが今、カギだと考えているのは、企業と消費者の連携です。
企業がみずからの責任で消費者から商品を回収し、再利用すれば、資源を循環させることができます。
環境への影響を最小限にとどめる、「循環型経済」への転換です。

企業と消費者をつなぐ仕組みづくり

今、坂野さんは、企業と消費者をつなぐ仕組み作りに乗り出しています。

坂野晶さん
「どういうメンテナンスをすれば洋服を長く使えるか、情報提供から始められる。」

坂野さんのNPOは、衣類について、どれだけ環境に配慮しているかを示す認証制度を立ち上げました。
「素材がリサイクルしやすいものか」「要らなくなった服を回収する窓口があるか」など、9つの項目で店を審査します。
環境への配慮がブランド価値につながれば、消費者へのアピールになると期待しています。

参加者
「Tシャツが欲しいと思ったときに、認証がついたところから選んでみようかな。
最初の選択の1つになる。」

参加者
「消費者が変わることから、社会を動かせる一歩になる。」

坂野晶さん
「私たちひとりひとりの消費者がどういう生活をするのか。
何を選んで何を買うのか、何を買わないのか。
長く使う工夫をできるのか。
そういった行動変容が、最終的に市場と企業の活動と、大きな社会の仕組みが変わると思うので、そのための一歩かな。」

小さな町で始まった大きなうねり。
新たな時代に入り、勢いを増しています。

坂野晶さん
「私、実は平成元年生まれで、人生がまるまる平成ですが、新しい時代として社会を見つめ直して、作り直せるのかはすごく大きな課題。
みんなが取り組まないと、環境は激変しているので、もう待ったなし。
今すぐ変えていかないと、加速しきってしまうので止められなくなる。
本当に新しい時代と言うのであれば、持続可能になっていくように、未来に続いていくように、いま変えられることを今すぐ変えることにコミットメントする(関わる)のがすごく大事。」

取材:六田悠一(NHK徳島)

石橋
「上勝町の取り組みはとても進んでいると感じましたが、どこの地域でもできるかと考えると、少し難しいとも思ったのですが…。」

新井
「上勝町での取り組みは、もともとごみ焼却場の計画が行き詰まった危機感から始まったそうなんです。
上勝だからというよりも、そうした気持ちが持てるかどうかがポイントだと感じました。」

石橋
「具体的にはどうしたらいいのでしょうか?」

新井
「VTRにあった認証制度もそうですが、私たちも買いものをするとき、これを買っていいのかなと一旦踏みとどまることもできると思うんです。
坂野さんも、そんなきっかけとなる仕組みを作っていきたいと話していました。」


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