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2019年5月14日(火)

いま“城の石垣”に何が…

多くの人をひきつける日本の城。
ところが、自然災害などの影響で、城を支える石垣の崩落が各地で相次いでいます。

専門家
「早く対応しないと、日本の石垣が全部なくなってしまう。」

今、石垣に何が起きているのでしょうか。

苦悩する現場

リポート:三野啓介

紀州徳川家の城として知られる、和歌山城です。
石垣は戦国時代末期から江戸時代にかけて築かれました。

去年(2018年)7月、その石垣に異変が起きました。
西日本豪雨の影響で、その一部が幅10メートルにわたって崩れたのです。

和歌山市 和歌山場整備企画課 大山僚介さん
「土砂災害(崩落)が起こるというのは、自分の中で想像できないことだったので、結構驚きました。」

石垣の脅威となっているのは、自然災害だけではありません。
樹木の根が土の中に張り出し、石垣を押している場所が見つかっています。

石垣が築かれてから400年余り。
石が抜け落ちている箇所も目立ってきています。

和歌山市 和歌山場整備企画課 大山僚介さん
「ここなんかも、おそらく表面に石材が本来ならくっついているはずのところなんですけれども、剥離(はくり)してこういう状態になっている。」

では、全国各地の城の石垣はどうなっているのか。
今回NHKは、全国の名城、200か所を対象にアンケート調査を実施。
石垣の被害の有無や、保全状況などについて尋ねました。

回答を得た、石垣のある124の城の中で、「修復を要する被害や劣化がある」と答えたのは、半数を上回る71。
「変形など被害の前兆が見つかっている」と回答したのは、7割を超える92に上りました。

一度崩れた石垣の修復は、容易ではありません。
和歌山城では、崩落から10か月たった今も、作業が進んでいません。
修復は、複雑に配置されていた石を、パズルのように元通りに組み直す必要があります。
石が抜け落ち、なくなってしまった場合は、原則として新たに同じ材質の石を用意しなければなりません。

文化財を後世に伝えるためには、手間をかけてでも、できるだけ元の状態を保つことが必要なのです。
各地の石垣の修復に携わる専門家は、「日本の石垣は今、危機的な状況にある」と警鐘を鳴らしています。

石川県金沢城調査研究所 北垣聰一郎名誉所長
「速いスピードで石垣の崩壊が始まっている。
その問題に早く対応していかないと、知らぬ間に日本の石垣が全部なくなってしまうというようなことが十分起こりうる。」

城には、多くの観光客や地元の住民が訪れます。
修復だけでなく、安全の確保も急務です。
和歌山市では現在、月に一度、崩落につながる危険が生じていないか、目視による点検を行っています。

和歌山市 和歌山場整備企画課 大山僚介さん
「文化財として、昔の工法で元に戻さないといけないというところも踏まえつつ、人への安全面も当然考えてやらないといけない。」

課題となる石垣の保全と、人の安全の確保。
ほかの多くの自治体も頭を悩ませています。

“修復には予算と時間がかかりすぎる。”

“職員が足りずあせりが募る。”

“災害時等に崩れて、見学者に危険が及ばないか。”

“保全”“安全”へ 石垣めぐる模索

リポート:岩田宗太郎記者(科学部)

では、どう石垣の崩落を食い止め、安全を確保していくのか。
異変をいち早く察知する取り組みが、各地で行われています。

静岡県の掛川城では、定期的にレーザーを使って、石垣の変化をミリ単位で計測。

高松城では、石垣に挟んだガラスの棒が割れるかどうかで、危険を速やかに把握しようとしています。

被害をきっかけに、新たな取り組みを始めたところもあります。
熊本県の八代(やつしろ)城です。
3年前の熊本地震では、石垣が大きく崩れました。
そこで市が新たに始めたのは、積極的な情報の発信でした。
現状のありのままを知ってもらおうと、崩落とその後の修復の様子を見学してもらう、市民向けのツアーを企画。

さらにインターネットでも、被害の状況や修復の過程を公開し始めました。
文化財の修復には多くの時間がかかること。
そして何よりも、災害の時には石垣も万全ではないことを全国の人たちに広く知ってもらうのがねらいです。

八代市 文化振興課 山内淳司さん
「たとえ立派に見える石垣でも、何らかのきっかけで崩れてしまうものだということを認識した上で、お城に訪れていただきたい。」

“保全”と“人の安全” 両立させるには?

高瀬
「取材した、科学文化部の岩田記者です。
なかなか難しい問題だけに、現場の担当者の皆さんは本当に頭を悩ませていますね。」

岩田宗太郎記者(科学部)
「石垣を文化財として後世に残していくことと、安全を確保することの両立が最も大切ですが、予算も時間もかかることもあり、簡単にできることではないんです。
また、アンケートを見ると、日常管理にも自治体によって大きな差があることがわかってきました。
災害が起きたら石垣は崩れるかもしれないという観点に立って、しっかりとした管理を行っていく必要があると感じました。」

和久田
「特にこれから梅雨の時期になり、大雨による災害も起こるかもしれませんよね。
何が一番大切になってきますか?」

岩田記者
「各地の石垣は、江戸時代以降、何度も崩れているところもあれば、長い間被害を受けていないところもあります。
危険かどうかを知るためには、こうした個別の事例を知っておくことも有効だと思います。
そうした意味では、八代城が行っていたような情報公開は非常に有効だと思いますし、それがひいては石垣の保存に対する住民の理解も深めていくことにもつながると感じています。」

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