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2019年5月17日(金)

ヤリッツァ・アパリシオさん メキシコ先住民に希望の光を

今年(2019年)のアカデミー賞。
華やかなスターたちの中で注目を浴びたのが、メキシコ先住民の女性、ヤリッツァ・アパリシオさんです。
オーディションで選ばれた無名の新人ながら、主演女優賞にノミネートされました。
主演した映画「ROMA/ローマ」。
1970年代の激動のメキシコを、先住民の家政婦の目を通して描き、その映像美と作品性が高い評価を得ました。
アパリシオさん演じる家政婦の姿から見えてくるのは、社会に根づく差別や偏見です。
今、アパリシオさんの活躍とともに、メキシコ先住民の存在に光があたりはじめています。

アカデミー賞で注目 メキシコ先住民の“今”

リポート:神津全孝(ロサンゼルス支局)

日本の人たちにも実情を伝えたいと、インタビューに応じてくれたアパリシオさん。

服にはふるさとの先住民文化、ビーズの刺しゅう。
自らもさまざまな差別を受けてきたと明かしました。

ヤリッツァ・アパリシオさん
「肌の色が褐色で背が低く、私にはたくさん先住民の特徴があり苦しみました。
先住民というだけで能力がないとみなされ、仕事が限定されてしまうのです。」

アパリシオさんが演じた「家政婦」。
賃金は低い上、多くの人は医療保険も受けられません。
アパリシオさんも、たまたまオーディションで選ばれるまで、家政婦などで生計を立てていました。
収入は少なく、先の見えない生活だったといいます。

ヤリッツァ・アパリシオさん
「家政婦の仕事もしましたし、24時間働きづめだったんです。
ときには夢を持つこともありましたが、(メキシコの)社会がそれを許さないのです。」

16世紀のスペインによる統治以降、虐げられてきたメキシコの先住民。

人口の2割、2,500万人あまりが暮らしています。

長きにわたる差別から発展の恩恵を受けられず、仕事も限られ、7割以上が貧困状態にあるとされています。
映画で一躍時の人となったアパリシオさん。
国際機関などに出向いて実情を訴え、支援を求めています。

ヤリッツァ・アパリシオさん
「私は先住民であることに誇りを持っています。
(先住民の)子どもたちのチャンスを広げる手助けをしたいです。」

“困難を乗り越えたい” 先住民の少女

アパリシオさんが生まれ育ったメキシコ南部、オアハカ州。
先住民の村にアパリシオさんの活躍を見つめる少女がいました。
ミツィベス・マルティネスさん、10歳です。

ミツィベス・マルティネスさん
「私もアパリシオさんのように有名になって、一歩前に踏み出したい。」

山間部の小さな村で暮らす、ミツィベスさん一家。
人口500人の村には目立った産業はなく、両親の農業や工芸品づくりだけでは十分な収入を得ることはできません。

貧困の中、ミツィベスさんが希望を見い出しているのが、バスケットボールです。
ボールは地域からの援助。
多くの子どもたちの家庭ではシューズを買う余裕はありません。
それでも毎日練習に励むミツィベスさんたち。
全国大会で優勝して、多くの人たちに認めてもらいたいと考えています。

ミツィベス・マルティネスさん
「バスケットボールで活躍して、困難を乗り越えていきたいです。」

先月(4月)行われた全国大会。

決勝トーナメント進出をかけた試合で対峙したのは、都市部の強豪チームでした。
試合前、私たちはあるメッセージを届けました。
ミツィベスさんの憧れの存在、アパリシオさんからの応援メッセージです。

ヤリッツァ・アパリシオさん
「あななたちの活動を知って感動しましたし、尊敬しています。
みんなの代表として頑張ってください。」

思わぬ応援に勇気づけられた、ミツィベスさん。

いつものように裸足で挑みます。
試合は一進一退の攻防が続く大接戦。
わずかなリードで迎えた最終盤。
試合を決めたのは、ミツィベスさんのシュートでした。

最終的に全国3位に輝いたミツィベスさんたち。
先住民として、自信と誇りを手にしました。

ミツィベス・マルティネスさん
「チームに誇りを感じています。
3位として一人一人メダルがもらえるので満足です。」

苦難に負けず、自らの力で将来を切り開こうとするメキシコ先住民の子どもたち。

“豊かに暮らせる社会を”

アパリシオさんは、若い世代が豊かに暮らせる社会を求めて、これからも訴え続けます。

ヤリッツァ・アパリシオさん
「一人一人みんな同じだったら、とても退屈じゃないですか。
人と違うからといって、社会の中で存在価値がないということはありません。
社会が多様性というものの大切さに気付くことを願っています。」

“先住民や女性の権利を訴えていきたい”

高瀬
「アパリシオさんが求める差別や格差などの問題は、メキシコだけではなく、世界に共通する課題でもあります。
だからこそ、多くの人の共感を得ているのかもしれません。」

和久田
「アパリシオさんは、先住民や女性の権利を、これからも多くの人に訴えていきたいと話していました。」

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