これまでの放送

2019年5月25日(土)

生まれ変わる劇団四季

「ライオンキング」や「キャッツ」など、海外ミュージカルの日本語版をロングラン公演する劇団四季。
年間の観客動員は300万人を超え、「ミュージカルの文化を日本に定着させた」とも言われています。
その劇団四季が、いま大きな転機にさしかかっています。
劇団の創設者の1人で、長らく劇団の演出を担ってきた浅利慶太さんが、去年(2018年)亡くなったのです。

浅利さん亡きあと、劇団をどう発展させていくのか。
この春、脚本から演出まで独自で作り上げる新作ミュージカルに15年ぶりに挑戦しました。
それは、先月(4月)始まった新作ミュージカル、「カモメに飛ぶことを教えた猫」。
ひん死のカモメから卵を託された主人公の黒猫ゾルバが、仲間とともにひなに飛ぶことを教える物語です。

この作品は、子ども向けに劇団四季が1960年代から続ける“ファミリーミュージカル”のシリーズの新作。
子どもたちは、つまらなければすぐに飽きてしまう厳しい観客。
彼らを楽しませる作品を作ろうと生前、浅利慶太さんは、このファミリーミュージカルの演出をほとんど手がけ、力を入れてきました。
今回、その浅利さんがいなくなって初めて一から自分たちで作ります。

劇団四季 吉田智誉樹社長
「若い俳優たち、あるいはスタッフたちは、自分たちで一から物を創るという仕事をやってこなかった。
彼らにもこの楽しさや、すごさを、現場で直接体験してもらおうと思った。」

新作ミュージカル 制作の舞台裏

稽古が始まったのは1月。
演出や振り付けなどを手がけるスタッフの大部分は、社内公募で選出。
現場では、経験が少ない中でどう作り上げていくのか、模索が続いていました。

演出を担当する山下純輝さん。
山下さんの本職は俳優。
演出を手がけるのは初めてです。

演出担当 山下純輝さん
「ゼロから作っている分、より良くするために、みんな挑戦してくれていると思う。」

稽古場では、みんなが山下さんにアイディアを出しあってサポートします。
この日も、中盤に出てくる歌の長さについて、音楽担当者から意見が出ました。

♪(歌)~

音楽監督
「私の印象的には短くした方がだれないっていうか、キュッとしてる感じなんですけど。」

演出担当 山下純輝さん
「(振り付けの)動き、もう一度考えないとですよね?」

振付担当
「そうだね。」

演出担当 山下純輝さん
「各セクションのエキスパートが意見を言ってくれるのは、僕の知識がない分野のことなので、それはすごく大事にしたいと思っている。」

俳優たちも、どうすればそれぞれの役にリアリティーを出せるか、試行錯誤を重ねていました。
ダブルキャストで主役のゾルバを演じる、笠松哲朗さんと厂原時也さん。
2人の動きは、同じシーンでも大きく違います。
例えば、生まれたばかりのひなに、「ママ」と呼ばれて戸惑うシーン。
笠松さんは…。

ひな:「ママ。」

笠松:「だから、ママじゃないって。」

ひな:「ママ。」

笠松:「違う、せめてパパだ!俺は男だって。」

一方、厂原さんは…。

ひな:「ママ。」

厂原:「違うってば!まいったな。ブブリーナ(雌ネコ)!違う、俺はママじゃない!」

動きもせりふも大きく違う2人。
しかし、これはどちらかが間違えているわけではありません。
それぞれが役になりきって考え抜いたからこそ、自然と出た動きやことばなんです。
こうしたことは、新作のオリジナル作品だからこそできることだと言います。

笠松哲朗さん
「(既存の作品では)もともと演出が決まっていて、定められた段取り、ルートの中でどう演じていくか。
そういうことを僕たちは日頃考えるが、これはもう本当にーから作っているので、その道筋すらまだないという状態から始めているので、本当に今まで経験したことがない、オリジナルミュージカルならではのことだなと思う。」

厂原時也さん
「自分にうそなく、芝居の、その時のセリフをしゃべる、一個一個そうやって積み重ねていくという行動が、ストレートに人間くささとかがにじみ出て、いい物語が積み上がっていってるというところに行き着いている。
一つ一つのシーンがしっかり伝わればいいなと思う。」

本番初日。
子どもたちも含め、多くの方が幕が上がるのを楽しみにしていました。
15年ぶりに作った、オリジナルミュージカル「カモメに飛ぶことを教えた猫」。
物語は、ひなが無事に飛び立つことで幕を閉じます。
ひなの姿は、今後の劇団四季と重なるといいます。

♪“勇気を出して ふみ出そう
顔をあげよう 胸を張って
怖がるな 大丈夫
自分を信じて”

劇団四季 吉田智誉樹社長
「浅利慶太さんの次をつなぐ世代が、本当に全身全霊で劇団運営をしなければならなくなった。
ちょうど劇に出てくる生まれたばかりのひなが、我々なのかもしれない。
彼女のようにしっかり羽ばたいて、大空を飛べるように頑張らなきゃいけない。」

このミュージカルは、全国を回って上演される予定です。

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