これまでの放送

2019年5月26日(日)

島で守る伝統のハモ ~兵庫 沼島~

石橋
「今回の『旬体感』は、ハモです。」

新井
「もう夏が近いですね。」

石橋
「そのハモの中でも、独自ブランドとして高値で取り引きされているのが、兵庫県の沼島(ぬしま)沖で取れるハモです。
その味は、江戸時代から続くこだわりの漁で守られていました。」

こだわりの漁 受け継ぐ 沼島のハモ

石橋
「さあ見えてきました、沼島です!」

沼島は瀬戸内海に浮かぶ、周囲10キロの小さな島。
人口はおよそ450人。
古くから漁業で栄えてきました。

これからの時期、旬を迎えるのが、ハモ。
沼島のハモは、肉厚で見た目もきれい。
それでいて、身が柔らかいんです。

ハモは小骨が多いため、包丁で細かく切れ目を入れていきます。
素材の味が一番分かるという、湯引きでいただきました。

石橋
「弾力があるんですけど、柔らかくてフワフワで、最高です!」

沼島のハモがブランドとされている秘密は、その漁にあります。

石橋
「今日、漁のコンディションはどうですか?」

ハモ漁師 安達一富さん
「日和はよさそう。」

島で代々続く漁師の安達一富さんです。

どんな漁なのか。
今年(2019年)初めての漁に同行させていただきました。

石橋
「これ、仕掛けはなんていうんですか?」

安達一富さん
「はも縄。」

安達さんが使うのは、はえ縄の一種、「はも縄」。
全長10キロの縄に600本の針をつけ、海にしかけます。

ハモは夜行性のため、引き上げるのは深夜。
なんと10時間もかかる漁です。
その過酷さから、今では沼島でも漁を続けるのは、安達さん一家だけになりました。
網ではなく、手間のかかるはも縄にこだわるのは、ハモが傷つきにくいからです。

安達一富さん
「やっぱきれい、魚がきれいや、全然違うよ。
身が傷んでいない、日にちも長いこと生きる。
鮮度がいい。
(傷つかないと)長いこと生きる。」

安達さんには、はも縄漁を続けるもうひとつの理由があります。
去年(2018年)亡くなった、父親の豊和さんの存在です。

沼島ブランドのハモに誇りを持っていた豊和さん。
どんなに手間がかかっても、はも縄で取ることにこだわっていました。

安達一富さん
「さすが沼島のハモ、うまいわとか、自分の(とった)魚が一番やというてくれたら、うれしいやん。
『もっと精いっぱい働かなあかん』と言っとった、親父は。
そんな気持ちは忘れへん。
親父やったらこうしてたなとか、そんな思いはある。」

父から受け継いだハモ漁

仕掛けが終わってから3時間後。
いよいよ、はも縄を引き上げます。
今回の漁、安達さんには特別な思いがありました。
父親が亡くなってから、初めての漁なんです。

指先で縄の張り具合を確かめ、引き上げるタイミングを探ります。
すると…。

安達一富さん
「ハモ。」

父親から受け継いで、初めてとれたハモです。
傷つけないよう、無理に針を取らず、糸を切って生けすに入れます。

この日は大漁。
100匹以上も釣り上げました。

石橋
「お父さまから引き継いで最初の漁、どんな思いですか?」

安達一富さん
「そりゃ釣れてたら、うれしいよ。
最高ですわ。
生きてたら親父も、はも縄行きたくてしかたない。
好きやったもん、はも縄。」

ハモ漁 支える 島の人たち

父親から漁を受け継いだ安達さんを、支える人たちがいます。

長さ10キロに及ぶはも縄の手入れをしていたのは、かつて父親と苦楽をともにしてきた漁師仲間です。
からまった仕掛けを丁寧にほどき、切れた針をひとつひとつ、手作業で付け替えていきます。

石橋
「これひとつやるのって、何時間くらいかかりますか?」

漁師仲間の男性
「2時間も3時間もかかるときもある、縄の具合でな。
ひとりでしていたら、えらい(大変)。
(安達さんを)手助けしようと。
がんばってほしい。」

島の人たちへのお礼にと、今度は安達さんがとれたてのハモを使い、料理を振る舞います。

作ったのは「はもすき」。
ハモの頭とアラでだしを取り、淡路島特産のたまねぎと煮込んだ、沼島に昔から伝わる漁師めしです。
この日は、天ぷらに、湯引きも加えたハモづくし。

安達一富さん
「食べて食べて、きのう釣ったやつですよ。」

女性
「これは揚げたの?」

安達一富さん
「天ぷら。
どうですか?」

女性
「おいしい、初物で。」

男性
「たまねぎがうまいわ。」

安達一富さん
「(ハモの)だし吸うから。」

「いつもありがとうございます。」

女性
「今日はおいしいおかず、いただきまして。」

安達一富さん
「喜んでもらうのがいちばんうれしい。
『うまかったで』と言ってくれたら。
にぎわっていて、親父も喜んでるよ。」

手間暇をかけて、一匹一匹大切に釣り上げる、こだわりのハモ。
島の人たちに支えられながら、受け継がれていきます。

新井
「大きいハモでしたね!」

石橋
「沼島のハモは大きさも特徴で、ただ身が柔らかくて繊細な分、丁寧に扱わないと、すぐに傷がついてしまうんです。
だからこそ、あの『はも縄』で手間暇かけてとっているんです。」

新井
「お父さんから、誇りも同時に受け継いでるんですね。」

石橋
「本当に大変な漁なんですが、安達さんは、体力が続く限り続けて、沼島のハモを大切にしていきたいと話していました。」

Page Top