これまでの放送

2019年5月29日(水)

旧優生保護法 優生思想はいまも…

旧優生保護法のもとで、障害を理由に強制的に不妊手術を受けさせられた人たちが国に賠償を求めた裁判の初めての判決で、仙台地方裁判所は「旧優生保護法は子を産み育てる幸福を一方的に奪うものだ」として、憲法違反だったという判断を示しました。
しかし、賠償を求められる期間が過ぎているとして、訴えを退けました。

旧優生保護法のもとでは、障害などを理由におよそ2万5,000人が不妊手術を受けたとされています。
宮城県の女性2人が、国にあわせて7,150万円の賠償を求めていた裁判。
判決は「旧優生保護法は憲法に違反し無効だ」という判断を示しながら、賠償を求めた原告の訴えは退けました。

仙台地方裁判所の中島基至裁判長は、「子どもを産み育てるかどうかを決める権利は憲法13条に照らして尊重されるべきだ。旧優生保護法はその幸福を一方的に奪い去ったもので、誠に悲惨と言うほかない」と指摘しました。
ただ、原告が手術を受けてから、賠償を求める権利が消滅する「除斥期間」の20年が過ぎているとして、2人の訴えを退けたのです。

原告の義理の姉
「20年も訴え続けて、何も取り上げられなくて。
妹には結果は報告しない。」

原告
「国の責任が認められないのは納得できない。
被害者はみんな高齢化している。
一刻も早い解決ができるよう、国に誠意ある対応を求める。」


和久田
「今回の一連の裁判の原告は合わせて20人に上りますが、このうち半数を超える13人が、顔や名前を出さずに臨んでいます。」

高瀬
「その背景には、不妊手術に対して声を上げた原告に対する、誹謗(ひぼう)・中傷が続いていることがあります。」

誹謗・中傷に苦しむ原告側

リポート:平山真希(NHK仙台)

一連の裁判の原告団の1人、東二郎さん(仮名)。
今回の原告に続く形で、去年(2018年)12月に裁判を起こしました。
先月(4月)初めて、表に出て記者会見に臨みました。

東二郎さん
「裁判を通して、社会に人権侵害の怒りと悲しみを訴えていきたい。」

東さんの手術の記録です。
幼い頃に遺伝性の精神疾患と診断され18歳の時に旧優生保護法のもと不妊手術を強制されました。

当時、一緒に手術を受けた仲間たちが声を上げてくれることを期待して、表に出ることを決めました。

東二郎さん
「優生手術をした人が、テレビを見て訴えてくれると思った。」

しかし、顔を出して訴えるのは、原告20人のうち、東さんを含め7人。
原告の多くの人が、匿名で顔を隠して裁判に臨んでいます。

原告の義理の妹にかわって記者会見で代弁している、佐藤路子さん(仮名)です。
義理の妹は15歳で手術を受け、後にそれが理由で縁談がとりやめになりました。
佐藤さんが顔を出せない理由は、提訴を決めたあと、ネット上で寄せられた差別的な意見にありました。
裁判についてのニュースが報じられるたびに、旧優生保護法にいまだに賛同するという書き込みや、障害がある人が子どもをつくることに否定的な考え。
さらには、裁判の目的は賠償金なのではないかという意見が相次いでいたのです。

顔を出すことで、さらに攻撃されるのではないか。
匿名の投稿に恐怖を抱いています。

原告の義理の姉 佐藤路子さん
「何かこう言われている、そういう人が出てくるのかな、そうしたらどうしようとか思ったり。
やっぱり怖い。」

強制的な不妊手術の被害者を支援する団体は、こうした攻撃によって当事者が声を上げられなくなることに危機感を感じています。

優生手術被害者とともに歩むみやぎの会 杉山裕信さん
「危害加えられると思う障害者、特に重度の障害者や精神障害者がいて、町に出るのが怖くなったという話は実際ある。
そういう世の中にしてはいけないと絶対に思う。」

人権問題に詳しい専門家は、差別的な意見の背景には、障害者への見下した考え方があると指摘します。

立命館大学 生存学研究所 松波めぐみさん
「どうせこの人たちは子どもを持つことはありえないし、育てることも無理だとか、たたいてもいい障害者像をつくりあげて、たたいているという感じがする。
本当の意味で自分の人生や生活を選べる、それを当然とするような社会環境をつくっていってほしい。
今回の裁判が、そういう社会への一歩になってほしい。」


和久田
「原告団は、昨日(28日)の判決が誰もが子どもを産み育てる権利を認め、旧優生保護法は憲法違反と判断したことについては評価したうえで、『国の責任をきちんと認めてほしい』として控訴する方針です。」

Page Top