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2019年6月1日(土)

衝撃!奈良の鹿の胃袋から異物

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観光客に人気の奈良公園の「鹿」。
およそ1,300頭が生息するこの鹿たちに、いま、異変が起きています。
今年(2019年)3月以降、5頭の死んだ鹿の胃袋から相次いで異物が見つかりました。
中には重さ4.3kgもあるものもありました。

異物は、ひものようなものが複雑に絡み合っていて、詳しく調べてみると、レジ袋のようなものや、菓子の包みのようなものでした。
そのほとんどがプラスチックごみ。
胃袋に詰まって衰弱死したとみられています。
鹿たちが、プラスチックごみを食べているというのです。

奈良の鹿愛護会 獣医師 丸子理恵さん
「最近続いていたので、またかと思いました。
改めてびっくりして驚きましたし、非常に残念なことだと思いました。」

レジ袋に菓子の包み… 鹿の脅かす“ごみ”

本当に鹿がプラスチックごみを食べているのか、奈良公園に向かってみると…。

いました。
食べ物の臭いがついたレジ袋や、お菓子の袋を食べてしまう鹿たちを、すぐに見つけることが出来ました。
目立つのは、外国人観光客。
公園で売られている「鹿せんべい」を与え、触れあう中で、持っていたレジ袋も食べられていました。

ボイ捨てされたごみを食べる鹿もいました。
鹿がごみをあさるのを防ぐため、奈良公園にはごみ箱がありません。
観光客の急増で、ポイ捨てされるごみも増えています。

観光客
「鹿がプラスチックを食べてしまうことがあるとは知らなかった。」

観光客
「かわいそう。」

中国からの観光客
「問題になっているとは、ガイドさんは私たちに言ってくれなかった。
僕たちも初めて日本に来たから。」

ごみ箱設置も… 広島 宮島でも被害

鹿がいる他の観光地はどうなっているのか。
世界遺産・厳島神社がある広島県の宮島です。

市街地周辺には、およそ600頭の鹿が生息。
ここでもプラスチックごみを食べるケースがあとを絶ちません。
宮島では、鹿が頭を突っ込んであさらないよう蓋を引いて開ける形のごみ箱や、ごみがあふれ出さないよう、底を抜いて4メートル下の地下にごみが落ちて集まる構造にしたものも設置していました。

それでも、マナーの悪い観光客のポイ捨てはなくならず、根本的な解決にはなっていません。

広島 廿日市市役所 宮島支所 松本浩二課長
「皆さんに分かるようにうちとしては対応していきたいんですが、なかなか苦慮してるところ。」

鹿の命をどう守る 試行錯誤続く地元

鹿を守るために、何かできる事はないか。
奈良では地元の人たちが動き始めました。
布で作った鹿柄のエコバッグ。
1枚でもレジ袋を減らそうと、地元の企業が制作しました。
クラウドファンディングで資金を集め、店での販売のほか、ネットでも売り出しました。

エコバック開発担当 安達香奈子さん
「ビニールの袋は断って頂き、買った物や飲みものなどを入れて
公園に出向く。そういう形にしてもらうのが理想です。」

奈良公園近くの雑貨店では、特設コーナーを設置。
レジ袋から鹿を守りたいという支援の輪を広げようとしています。

それでも、解決にはほど遠いのが現実です。
奈良公園では、ボランティアたちが人海戦術で公園内を回っています。
鹿の水飲み場にも足を運び、 1つずつプラスチックごみを拾い集めます。

さらに、鹿が狙っているのを見かけると、観光を楽しんでいる最中でも呼び止めて、注意を促します。
最後は、実力行使。
レジ袋をくわえた鹿を見つけると、奪い取ります。

足が速く、あごの力も強い鹿から取り上げるのは、簡単ではありません。
長い歴史の中で築き上げられた、人間と野生の鹿の共存に迫る危機。
この関係を維持していけるかどうかは、鹿と触れあう一人一人の意識を変えられるかどうかにかかっています。

奈良の鹿愛護会 獣医師 丸子理恵さん
「鹿の胃袋がごみ箱のようになっていると思います。
そういう鹿が潜在的にいるっていうことは、鹿の命が奪われていくということなので、ごみを減らす努力をやっぱり人間側がしてあげないといけないのかな。」

地元では、機会があるごとに観光客にマナーアップを呼びかけていくことにしています。

リポート:三瓶佑樹(NHK奈良)

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