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2019年6月2日(日)

樹木希林さんの言葉 “心に響く”理由とは

石橋
「去年(2018年)9月、がんで亡くなった女優・樹木希林さん。
その生前の“言葉”を集めた本が相次いで出版され、このうちの2冊が、今年(2019年)上半期のベストセラーの1位と3位を占めるヒットとなっています。」

新井
「今、希林さんの言葉の何が、人々の心を捉えているのでしょうか。」

“包み隠さない生き方”から生まれた言葉

樹木希林さんの言葉をまとめた本を発売した出版社のひとつです。
発売から3か月で、54万部を売り上げました。

宝島社 編集者 宮川亨さん
「本当にびっくりしてます。
こんな速さで売れる本は初めて。」

希林さんの生前の対談やインタビューなど、3,000以上の資料にあたり、心を打つ言葉を選び出しました。

“やり残したことなんて死んでみないと分からないですよ。”

“年を取ったら、みんなもっと楽に生きたらいいんじゃないですか。
求めすぎない。
欲なんてきりなくあるんですから。”

“一人でいても、二人でいても、十人でいたって寂しいものは寂しい。
そういうもんだと思っている。”

言葉を選び出す中で、編集者たちは、本音をさらけ出すことで生まれる“説得力”を感じたといいます。

宝島社 編集者 宮田美緒さん
「自分が芸能人、女優としてイメージを商売にした職業についていても、本当に誰の顔色もうかがわずに、思ったことをスパスパスパっと言う。
人からの批判も何も気に留めない、その潔さが言葉の端々から感じられる。」

宝島社 編集者 宮川亨さん
「樹木さん、自分でもおっしゃっているが、聖人君子でも何でもないと。
汚い部分もいっぱいあると。
その包み隠さない生き方、そこから出てくる本当に生の言葉。
生きる、死ぬ、病気とかっていうことを、本当に真摯(しんし)に向き合って、考え抜いて出てきた言葉なんじゃないか。」

“他人と比較しない”

女優としては必ずしも“正当派”ではなかったと語る希林さん。
自ら「美人ではない」という容姿。
人気のきっかけとなったのは、31歳にして老婆を演じたテレビドラマでした。
その後も、歌手やCMなど「女優」の枠にとらわれず、独自の活動を続けました。
その根底にある言葉です。

“子どもの時に、他人と比較する無意味さを知った。”

“『こんなはずではなかった』『もっとこうなるべきだ』という思いを一切なくす。”

宝島社 編集者 宮川亨さん
「人間って『人から見られてどうだ』というので、ほぼほぼ生きてると思う。
樹木さんには、それがあまり感じられない。
人の評価を気にして生きているばかばかしさっていうのを、かなり早い段階で樹木さんは悟ってらっしゃったような気はする。」

その包み隠さない生き様は、人間の本質を鋭く描く演技として開花。
晩年の評価につながりました。
そうした生き様から紡ぎ出された、ひとつひとつの言葉。
出版社には多くの反響が寄せられています。

71歳 女性
“希林さんの言葉にはウソがない。”

75歳 女性
“私たちが言えない言葉を常に堂々と話されて、沢山の共感をいただきました。”

47歳 女性
“『自分の人生、自分でちゃんと考え、生きなさい!!』と言われた気がしました。”

今の時代の“生きづらさ”

反響の背景には、今の時代の“生きづらさ”があるのではと、編集者たちは分析しています。

宝島社 編集者 宮田美緒さん
「日本の今の空気として、本音で語ってくれる人が意外に少ないんじゃないか、身の回りに。
大きな声をあげたり、人と違ったことを言うのは、すごくリスクを伴うこと。
下手なことを言うと炎上してしまうし、つるし上げをくらってしまう。」

宝島社 編集者 宮川亨さん
「みんな心のどこかで生きにくさを感じているのかもしれない。
なんか窮屈だな、生きにくいな、もっと自由にできないのかなって。
『もうちょっと好きに生きればいいんじゃないの』『人に言われて何かあんの?』と(希林さんに)言われてるような気はする。」

最期まで“さらけ出した”希林さん

この人も、希林さんの言葉に励まされた1人です。
女優の浅田美代子さん。
45年前に共演して以来、希林さんとは深い親交がありました。

女優 浅田美代子さん
「彼女(希林さん)はとにかく『面白がりなさい』と言ってました、なんでも。」

そんな浅田さんのために、去年、希林さんは、みずからある映画を企画しました。
実際の投資詐欺事件をモチーフに、欲望のままに生き、破滅していく女性を描いた映画です。
「清純派」として知られた浅田さんに、希林さんは「もっと自分をさらけ出してほしい」と、みずからこの役を持ちかけました。

女優 浅田美代子さん
「私のいろんなどろどろした部分も彼女は全部知ってるし、いろんな苦労してきてることも知ってるし、そういうのが出てないっていう。
『美代ちゃんはそういうのが出てないよね』『いいことなのかね』って言ってて。」

当時、がんと闘いながら制作に奔走した希林さん。
その姿も、包み隠さず浅田さんに見せていました。

女優 浅田美代子さん
「(希林さんが)入院してる時に、病院の先生が来て何か処置するので(病室の外へ)出ようとすると、『この子も役者の端くれなんだから全部見せるのよ』って。
そんなとこまで見せるのって感じで。
だから私に『ちゃんと見ときなさいよ』って、病と闘っていく姿、人に向き合う姿、覚えとけよって感じだったのかな。」

辛いこと、苦しいこともある人生。
それでも目をそらさず、自分をさらけ出すことで見えてくるものがある。

浅田さんは、そんな希林さんの、ある言葉が印象に残っています。

“どうぞ、物事を面白く受け取って、愉快に生きて。
あんまり頑張らないで。
でもへこたれないで。”

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