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2019年6月9日(日)

ラグビーワールドカップ “真のレガシー”へ 釜石で託す思い

新井
「およそ3か月後に迫った、ラグビーのワールドカップについて。
廣瀬アナウンサーとお伝えします。
いよいよ近づいてきましたね。」

廣瀬
「日本で初めての開催となるワールドカップは、全国12の都市で、48試合が行われます。
中でも唯一、新たなスタジアムを建設するなど、なみなみならぬ思いで臨んでいるのが、岩手県の釜石市。
こちらが『釜石鵜住居(うのすまい)復興スタジアム』です。
ワールドカップ、さらに大会後も、どうすればラグビーを町づくりに生かしていくことができるのか、模索しています。」

ラグビーと釜石 相乗効果で町を元気に

昨日(8日)、岩手県内で行われた試合。
対戦したのは、地元・岩手の「釜石シーウェイブス」と、昨シーズン、トップリーグで優勝した「神戸製鋼」。
かつて、日本一を争った好カードです。
先制したのは、シーウェイブスでした。
立て続けにトライを重ねます。
しかし、その後は神戸製鋼の猛攻が続きました。

土肥守さん
「釜石がんばれ。」

そんな中、ひときわ大きな声援を送る男性がいました。

土肥守さん
「♪荒波を乗り越え 立ち上がれ」

釜石のラグビーを見守り続けてきた応援団、土肥守さんです。

土肥守さん
「負けたけど、ナイスゲーム。」

「釜石はシーウェイブスとラグビーがなかったら、ワールドカップも来なかったので。
地元のラグビーも盛んになって、ワールドカップも来て、ラグビーそのものの人気があがり、釜石も元気になって、お互いに相乗効果じゃないですかね。」

ラグビーが求心力に

今年(2019年)ラグビーワールドカップが開かれる釜石市。
大会に向け、着々と準備が進んでいます。

土肥さんは、市内の病院で院長として働いています。
シーウェイブスを通じて、ラグビーで町を盛り上げたいと活動してきました。

土肥守さん
「これは“復興小旗”。
自分で作った。」

土肥さんが、これほどまでに応援するのは、町とラグビーには深い関わりがあると考えているからです。
かつて、日本最古の製鉄所とともに栄えた釜石市。
しかし、昭和40年代後半に入ると、「鉄冷え」により町の活気は失われました。

そんな釜石を熱く燃え上がらせたのが、日本選手権7連覇を果たした、新日鉄釜石ラグビー部。
東北出身の無名の選手たちが、都会の強豪チームを打ち負かす姿は、“北の鉄人”とたたえられました。
町の人たちは、その姿に勇気づけられました。

そして、東日本大震災。
支援物資を運ぶボランティアに奔走したのが、新日鉄釜石の流れをくむ、シーウェイブスの選手たちでした。

2か月後には練習を再開。
震災後、はじめての試合には、多くの人たちがグラウンドに駆けつけたのです。

土肥守さん
「練習再開するというニュースを聞いたときは、すごくうれしかった。
日常が少し戻ってくるような感じ。
復旧とか復興の始まりだなって。
シーウェイブスが練習をするのが、我々の生活を取り戻すスタートだと感じた。
一緒に戦っている感じがして、一体感が生まれた。」

神戸製鋼との試合を控えた、今月(6月)3日。
土肥さんは、仲間とともにグラウンドに駆けつけ、選手たちにエールを送りました。
シーウェイブスが強くなることこそが、ワールドカップのあとも、ラグビーで町を盛り上げていくカギだと考えています。

土肥守さん
「ワールドカップという追い風をうまく利用して、その時に強くなる。
釜石シーウェイブスが強くなって、ラグビーは釜石がやっぱり強いとなったときが、本当の意味でラグビーが求心力になって、釜石が発展するもとになる。」

若い世代に受け継ぐ思い

大会後を見据えて、すでに動き始めている人もいます。
ワールドカップの事務局で広報を務める長田剛さんです。
長田さんが案内してくれたのは、去年(2018年)、完成したスタジアム。
震災前、小中学校があった場所に、およそ50億円をかけて建設。
最新の設備が備えられています。

ワールドカップ 推進本部事務局 長田剛さん
「自動で芝が乾燥したっていうシグナルが出たら、勝手に水をまくシステムを備えている。
どこにもまねできない、釜石でしかできないスタジアム。」

長田さんには、このスタジアムで実現させたい“ある光景”があります。
新日鉄釜石の全盛期だった38年前、海外の強豪チームを招いて行った親善試合。
ひと目試合を見ようと、大勢の人がグラウンドに詰めかけました。
「この光景を、もう一度釜石で見られるようにしたい」、そう考えたのです。

ワールドカップ 推進本部事務局 長田剛さん
「地元の人にとって、彼ら(新日鉄釜石の選手)がヒーローだった。
身近で近い距離でラグビーをやっていけば、昔のラグビーの町の雰囲気に戻るんじゃないか。」

町が、新たなスタジアムを使って始めたのが、中学生を対象にした「特設ラグビー部」です。
釜石市内の中学校には、ラグビー部がありません。
長田さんは早いうちからラグビーボールに触れる経験を作ることで、その後もラグビーを続け、やがて選手として釜石に帰ってきて欲しいと願っています。

実は、長田さんはかつて、釜石シーウェイブスの中心選手として活躍してきました。
その経験を生かし、自らコーチを買って出たのです。

ワールドカップ 推進本部事務局 長田剛さん
「誰かがひとりミスしたら、全員でサポートせんと。
試合は終わりじゃなく続くんやから、また盛り上げてやらんと。」

伝説のチームを生み、ワールドカップの会場ともなる、この釜石から、ひとりでも多くの選手が育って欲しい。
長田さんの思いです。

ワールドカップ 推進本部事務局 長田剛さん
「若い子たちがラグビーを始めて、大きくなってまた釜石でラグビーをする。
釜石の人たち全員が『ラグビーの町や、俺たちの町は』って言えるように、なれるように。
自分には何ができるか常に考えながら、絶対に釜石のためになると信じて、毎日全力で頑張るしかない。」

石橋
「ラグビーへの熱い思いが、若い世代にも受け継がれていってますね。」

新井
「釜石の長い歴史の中で、節目節目でラグビーが町を盛り上げてきたんですね。
今年(2019年)はどんな盛り上がりを見せるのか、楽しみですね。」

廣瀬
「応援団の土肥さんが、震災直後は練習再開が復興のはじまりとなったと表現していましたが、今回のワールドカップは、町の発展につなげてほしいという、ラグビーに託す新たな願いを感じました。
釜石市では、9月25日にフィジー対ウルグアイ、10月13日にナミビア対カナダの2試合が行われる予定です。」

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