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2019年6月10日(月)

便利な“ビニール傘” その現状

大槻
「先週、関東甲信や東海などで梅雨入りをしました。
雨の季節になりましたが、雨でよく見かけるビニール傘。
その使われ方が、いま問題になっているんです。」

雨が降ったあとは…

こちらは、梅雨入りした先週金曜日の東京・渋谷。
多くの人がさしているのが、透明の傘。
ポリエチレンやポリ塩化ビニルなどで作られている、いわゆる“ビニール傘”です。

「出先とかで、雨が急に降ったら買っている。」

「ついつい置き忘れて、なくしちゃう時があります。」

「なくなってもまた買えばいい。」

コンビニなどでも買えて、便利ですよね。
ところが、雨上がりの街を見てみると、あちこちにビニール傘。
今、ビニール傘は気安く、大量に捨てられているんです。
この日、繁華街で行われたゴミ回収でも次々と見つかり、合計50本。
すべて廃棄処理されます。
500本回収した日もあったそうです。

新宿区 ごみ減量リサイクル課 小野川哲史課長
「(雨が降ると)簡単に手に入る“ビニール傘”で対応したいという気持ちは、非常に理解できる。
われわれとしても苦慮している。」

捨てられるだけではありません。

大槻
「ありました、ビニール傘が置かれていますね…。」

ビニール傘は忘れ物としても、大量に出るんです。

警視庁の遺失物センターに、鉄道会社や警察署から届く忘れ物の傘は、年間およそ30万本。
ビニール傘も数多く届くといいます。

警視庁 総務部 安間勇峰遺失物第二係長
「二十数年間働いておりますが、“ビニール傘”を取りに来た、探しに来たという人はひとりもいない。」

使い捨てられるビニール傘

高瀬
「雨があがった後は、こんな状況になっていたのですね。」

大槻
「私も取材して初めて、このような状況を知りました。
ゴミ回収の方は“使えるものが多くて、もったいない”と話していて、“突然の雨で、あわてて買って捨ててしまう人も多いのでは”とも話していました。
そして、実は今、ビニール傘は捨てられたあとにも問題が起きているんです。」

捨てられたあとにも問題が…

訪ねたのは、廃棄物の中間処理施設です。
各地で回収されたビニール傘が、ひと月に20トンから30トンも運ばれてくると言います。

ここではゴミを砕いて小さくし、金属やプラスチックなど材質ごとに分別して、リサイクルに回します。

東港金属 福田隆社長
「“ビニール傘”の場合は、絡まって鉄と一緒に出てくる。」

ビニール傘は鉄とプラスチック部分の分別が難しく、リサイクルに適していないと言います。
そこに今、追い打ちをかけているのが、これまで海外へ処分を頼っていたプラスチックごみの問題です。

中国 李克強首相
「海外ゴミの輸入を禁止する。」

去年(2018年)1月、それまでビニール傘を含む大量のプラスチックごみを受け入れてきた中国が、環境汚染を理由に突如受け入れを停止。
中国に出していた年間およそ50万トンのプラスチックごみのほとんどを日本国内で処理しなければならなくなり、ビニール傘などのゴミの処理は、以前のように進まなくなったのです。

東港金属 福田隆社長
「中国への輸出を前提とした、リサイクルの仕組みになっていた。
それがなくなってしまったことで、“ビニール傘”のビニール、その他のプラスチックごみも、日本国内で処理がしきれなくなって、余ってしまっている。」

“使い捨て”意識の変革を

和久田
「まだまだ使えそうなものが廃棄されていて、その上、行き場にも困っているとなると“便利だからいいじゃない”とは、全く思えないですね。」

大槻
「こうした状況に、環境省リサイクル推進室の冨安健一郎室長は『“使い捨て”感覚を改めてもらうなど、消費者側の意識の変革も、うながしていきたい』としています。
そうした中、いち早く傘への意識を変えようという動きも出てきています。」

エコな傘の利用 始まった取り組み

東京の都市部や福岡市で始まったのは、傘を共有するシェアリング・サービスです。
去年12月から始まったサービスを利用している、都内の会社員、前田塁さんです。

取材した先週の金曜日は、午前中に雨が降り始めました。
オフィスに向かう前田さんが立ち寄ったのは、駅前の売店。
そこに、シェアリングの傘が置かれています。

前田塁さん
「ここで傘を借りようと思います。」

傘を借りるためには、誰でも登録できるスマートフォンのアプリを使います。
クレジットカードなどの情報を登録。
専用のボタンを押します。
そして、柄の部分についているQRコードを読み取ると、3ケタの暗証番号が送られロックを解除出来て、傘が開きます。
1日の利用料は70円。
月額420円で好きなだけ利用でき、返却はどこでも可能です。
傘を借りることができるスポットは、都内と福岡で合わせて、およそ200か所に上ります。

利用者は半年で1万5,000人にまで増え、サービスを提供する会社も手応えを感じています。

ネイチャーイノベーショングループ 丸川照司社長
「便利にやっていけば自然とエコな利用方法も増えて、流れとして傘はいつかはシェアされるもの。」

変化求められる 利用者の意識

高瀬
「たしかに便利さ、手軽さは維持しながらゴミを出さないという意味では、新しい流れに沿っているかもしれないと思います。
こうして見ていると、やはり大切にしなきゃいけないな、という気持ちがありますね。」

大槻
「“安いから”とか“すぐ買えるから”という意識を変えることが大切です。
そのために、こんな取り組みも始まっています。
ビニール傘に絵を描いたり、シールを貼ったりするワークショップです。
これは、ビニール傘の製造会社が開いています。
自分だけの傘に仕立てて、大切に使う心を養ってもらおうというもので、人気になっているそうです。」

和久田
「プラスチックゴミの話題は、この時間にもお伝えする機会が本当に増えていますが、私たちが便利なものをどう使うかが、問われているのかもしれませんね。」

大槻
「今回、ふだん目にしない処分場などを取材してみましたが、ゴミというものは私たちの意識が反映されたもののようだと思いました。
ビニール傘が当たり前のように捨てられたり、置き忘れられている現状を利用者ひとりひとりが考えていく必要があると強く感じました。」

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