これまでの放送

2019年6月17日(月)

“ひきこもり” 家族を訪ねて

高瀬
「先月(5月)、川崎市で小学生などが殺傷された事件や、農林水産省の元事務次官が逮捕された事件以来、NHKの特設サイトには、ひきこもる人たちに加え、家族の皆さんからの声が続々と寄せられています。」

和久田
「子どもがひきこもっているという50代の父親からは、“子は自分を責め、親も自分を責め、八方ふさがりとなり、この問題を家族だけで抱えます”。
弟がひきこもっているという40代の姉は、“母は高齢で、弟に対して何も言わなくなりました。親戚からも見放され、私自身も誰にも相談できずつらい毎日です”。」

高瀬
「私たちは、投稿を寄せてくれた人たちに直接、話を聞きました。」

悩み抱える家族

報告:高橋大地(ネットワーク報道部)

ひきこもりの人を抱える家族は、どのような悩みに直面しているのか。
富山県に住む59歳の母親です。
「ひきこもりを正しく理解してほしい」と取材に応えてくれました。
20代後半の息子は5年ほど前、アルバイト先でのいじめをきっかけにひきこもりました。
どう対応すればいいのかわからず、責めてしまったと言います。

母親(59)
「昼か夜か、わからない状態になっている。
大きな体なのに、布団にしがみついて震える。
でも、どう声がけしていいかわからない。
『ちゃんとした仕事をしなさいよ』って言っていた。
それが結果、あの子を責めていた。」

社会の偏見もあり、支援を受けるまでの壁がとても高いと言います。

母親
「“ひきこもり”というと、家から出ない人、仕事しない人、そういう見方が多い。
市役所自体も就労支援はある。
でも、そこへ行けない人たちがいっぱいいる。」

30代の弟がひきこもっているという女性です。
先のことを考えると、夜も眠れないと言います。
弟は、実家で70代の両親と暮らしていますが、たびたび暴力を振るったり、突然、姉の家におしかけてきたりすることもありました。

姉(40代)
「弟の怒りの矛先が、どこへ向かうのだろうっていう不安が、今回の事件で強くなったかなというのがある。
(両親は)家族の中のことを、外で周りの人に言えない。
自分自身も、子どもの世話で精いっぱい。
これから親が年老いていったとき、どれだけ手がかかるんだろう。
もう、なんか考えたくない、正直なところ。」

高瀬
「事件以来、寄せられた投稿は400件近くに上っています。」

和久田
「深い悩みを持つ、親やきょうだいなどの家族。
そうした家族にアプローチしながら、本人も支えていこうという取り組みも始まっています。」

どう支える 悩む家族

報告:管野彰彦(ネットワーク報道部)

山口県宇部市のNPO法人です。
ひきこもる当事者を持つ家族が、定期的に集まって意見を交わしています。

母親
「もし食事に(子どもと)行けたら、15年ぶりくらいかな。」

NPOを立ち上げた山根俊恵さんです。
精神看護の専門家で、家族のケアを中心に据えた支援を4年前から行っています。
この日、ある母親が話したのは、子どもとのなにげない会話のやり取り。

母親
「ふらっと(NPO)から電話がかかってきて『卓球があるから来ないか』と。
(本人は)『今回は欠席するから電話しておいてくれる』と。」

山口大学大学院 教授 NPOふらっとコミュニティ理事長 山根俊恵さん
「お母さん、本人が電話できるはずだから、お母さんが電話して断るんじゃなくて、そこを上手に『お母さんじゃなくて、自分で電話しなさい』って言えるように。」

母親
「そうですね、それがなかなかね。
電話はたぶん話さないと思う。」

山口大学大学院 教授 NPOふらっとコミュニティ理事長 山根俊恵さん
「『たぶん話さない』はお母さんの考えだから、とりあえず声をかけてみて。」

山根さんはこうした対話を何度も続け、家族の心を解きほぐしながらアドバイスをしていきます。

山口大学大学院 教授 NPOふらっとコミュニティ理事長 山根俊恵さん
「子の心がわからずに、親が一生懸命頑張って関わる。
でも、子から反発を受ける、無視される、親も心が傷ついている。
だから向き合えない。
親の心のケアをしながら、がんばる姿を見守り、家族を支援することによって間接的に本人を支援している。」

親が変わることで、子どもにも変化が生まれています。
この日、山根さんが訪ねたのは、4年前から支援している齋藤さんの家族です。
45歳の次男がおよそ14年間、ひきこもりの生活を続けています。

山口大学大学院 教授 NPOふらっとコミュニティ理事長 山根俊恵さん
「ちょっとずつ前には進んでいるからね。」

当初は、両親は、子どものことが理解できず、焦りだけが募っていました。
しかし、アドバイスを受けるうちに、徐々に子どもの気持ちを理解するようになり、少しずつ会話も出来るようになってきました。

母親 齋藤賀代子さん
「深い話じゃないけど、『お母さんあれおいしかったね』って。
それがいちばんうれしい。」

今、息子はNPOから派遣された看護師とも話が出来るようになりました。

看護師
「どんなですか、調子。
かぜ、ぶり返しています?」

次男
「そうですね、昼ぐらいから。」

看護師
「顔が見られてよかった。」

母親 齋藤賀代子さん
「生きているだけで十分、あの子に添うというか。
やはり焦ると上から目線でものを言うようになる。
聞く・受け入れる・待つ、それも大事じゃないかと思えるように、親も変わってきたんじゃないかと思う。」

家族の寄り添い

高瀬
「取材した高橋記者です。
親も心が傷ついている、という言葉が印象的でしたが、家族が変わることも大事になってくるのですね。」

高橋大地記者(ネットワーク報道部)
「取材した山根さんは独自のプログラムを考案し、親に受講してもらっています。
プログラムは、子どもがどんな『生きづらさ』を感じているのか、親が考え、気付いていくことから始まります。
そして、接し方などに問題がなかったか、ほかの親も含めて指摘し合い学んでいきます。」

和久田
「本人の気持ちに寄り添うことが、第一歩なんですね。」

高橋記者
「ひきこもりの子どもがいる家庭では、親と子が対立してしまうことが、しばしばあると指摘されています。
まずは最も近くにいる親や家族が、本人に寄り添っていけるような環境を作ることが大事だと、山根さんは話しています。
実際に、親や家族が変わることで、本人がNPOの集まりに参加できるようになったり、仕事に就くことができるようになったりするケースも増えてきているということです。」

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