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2019年6月23日(日)

沖縄戦から74年「慰霊の日」

20万人を超える人が亡くなった沖縄戦から74年がたち、23日に沖縄は、令和になって初めての「慰霊の日」を迎えました。




沖縄戦では、14歳から19歳までの生徒、およそ2,000人も学徒隊として動員されて半数が犠牲になりました。
毎年、特別な思いで慰霊祭が行われてきましたが、今回、NHKが学徒として動員された21校の同窓会などを対象に調査を行ったところ、3分の1にあたる7校が高齢化による同窓会の解散などで慰霊祭をやめたり、行政などに委ねたりしていることが分かりました。
こうした中、若い世代に記憶を引き継いでもらおうという取り組みが始まっています。

戦争の記憶を引き継ぐ 託された若い世代

糸満市にある慰霊碑、白梅之塔(しらうめのとう)。
沖縄戦で犠牲になった県立第二高等女学校の149人の名前が刻まれています。
語り部としての活動を行ってきた中山きくさん(90)。

きくさんは16歳の時、白梅学徒隊として、負傷兵の看護に動員されました。
学徒隊の女学生は、激しい地上戦に巻き込まれ、56人のうち、22人が命を落としました。

中山きくさん
「たくさんの人たちが大勢の方が一度にやられて、しかも即死する人、大けがをしてわめく人、大変です。
もう修羅場です。」

きくさんは、自らが目にした光景を長年語り続けてきましたが、90歳になり、いつまで活動を続けることができるのか不安を感じていました。
そこで、きくさんと遺族などが始めたのが、若い世代に活動を引き継ぐことでした。
これまで講演活動などを支援してくれた人たちに呼びかけ、地元の雑誌編集者や絵本作家など9人が集まりました。

中山きくさん
「人間は過去のことを知らないとまた同じ過ちを犯すかもしれない。
戦争体験を伝えていくのは体験者が高齢になったら終わってもいいではなくて、ずっと伝え続けなくてはならない。」

きくさんの思いを聞いた9人は、自分に何ができるのか、それぞれ模索し始めました。

子どもたちを記憶を伝える担い手に

子どもたちに記憶を伝える担い手になってもらおうと取り組みを始めたのが、中学校で美術の教師を務める、磯崎主佳さんです。

6年前から、きくさんと交流を続けて来た磯崎さん。
学徒隊について聞いてきた話をもとに、以前、絵本を作りました。

描いたのは、負傷兵であふれ、治療が追いつかない地下壕での様子や、米軍に追い詰められ、手榴弾で自決を考えるまでに至った女学生たちの姿。
磯崎さんは絵本を描き上げたことで、自ら体験していなくても、戦争の悲惨さを伝えることができるのではないかと考えるようになりました。

磯崎主佳さん
「ただ戦争体験のことを学ぶだけではなくて、聞いた私たちが伝える側になったときに、どんな表現ができるのかを考える。
沖縄戦の悲しさとか、白梅学徒の思いを言葉以外の手段で伝えていくことができるのはないかと思う。」

磯崎さんは、生徒たちにも絵を描いて伝えてほしいと提案しました。
それぞれが受け取った思いを表現することで、戦争の記憶を伝えられる人になってほしいと願っています。

生徒の1人は「自分たちがこの平和をひろげていくという意思表明みたいな感じを表現する作品を作った」と話しています。

新たな手法の模索も

活動を託された9人の中には、より多くの人に戦争の記憶を伝えるため、新たな手法を模索する人もいます。
沖縄文化などを紹介する雑誌の編集長を務める、いのうえちずさんです。

いのうえちずさん
「平和の大切さを伝えて欲しいというものが核にはあるけれど、大事なものを受け取ったのでこれを受け取りっぱなしにしておくことはできないと思って活動しています。」

いのうえさんが考えているのが、インターネットを通じて寄付を集めることです。
これまで慰霊塔の修繕などに使う資金は、地元を中心にカンパや慰霊祭の香典などで賄ってきました。
インターネットを通じて寄付を募れば、より多くの人に活動を発信でき、資金の安定にもつながると考えました。

この日は、那覇市の公益財団を訪ね、寄付の仕組み作りを相談しました。
公益財団の担当者からのアドバイスは、使いみちをしっかり話し合って決めることです。
使いみちの内容によって、寄付する人の共感が高まるからだといいます。
一方で、新しい手法を取り入れることには、これまでのやり方を大事にする人から慎重な意見もあり、いのうえさんは今後、議論を重ねていくつもりです。

いのうえちずさん
「いままで同窓会、協力会の人が築き上げてきたものを、少しずつ部分的に受け取りながら、バトンタッチしながら、習いながら一緒に作っていくという心づもりでいます。」

戦争の記憶をどのようにつないでいくか、若い世代の模索をきくさんは見守っています。

中山きくさん
「こんなにまで私たちのことを考えてくれているのはとても心強い。
これからも提案してくれたものには、これはできる、これはいいんじゃないって話を聞きながら、進んでいきたいと思います。」

戦争の記憶を自分ごとに

実体験がない世代が戦争の記憶を伝えていくうえで大事になってくるのは、若い世代が戦争の記憶をどう自分ごととして捉えられるかということです。
このグループは、きくさんとこれまで交流を重ねてきたことで危機感が共有でき、今回の動きにつながったのではないでしょうか。
中山きくさんは、よく戦争の前には自分にも青春時代があり、今の若者と変わらない日々があったと言います。
その日常を一変させてしまうのが戦争です。
年々、少なくなる体験者の声に真摯(しんし)に耳を傾け、なぜ戦争は起きたのか、いまの時代に起きたらどうなるのか、わたしたちがふだんの生活と照らし合わせて戦争の記憶を捉え直すことが必要です。

取材:松下温/NHK沖縄

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