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2019年6月25日(火)

高まる貧困リスク 手だては?

2,098人。
これは平成27年度から28年度にかけて全国の公立高校で妊娠が明らかになった生徒の数です。
そのうちおよそ3割が退学していました。
去年(2018年)、文部科学省が初めて発表したものです。
さらにある大学が行っている調査で、高校を卒業するまでに妊娠した生徒は将来、貧困に陥るリスクが高いことも分かりました。

妊娠・出産で高校退学 高まる貧困リスク

明日香さん、21歳(仮名)。
定時制高校4年生のとき、妊娠していることが分かりました。
つわりがひどく、学校に行けなくなり、退学しました。
卒業まで残り4か月でした。
長女はいま2歳。
夫の収入だけでは生活が苦しいため、就職を希望しています。
しかし「高卒」の学歴がないことが、ネックになっています。
親は生活保護を受けていて、支援も期待できません。

明日香さん(21歳・仮名)
「卒業していないだけですごく差がありますね。
お給料の差が全然違うし、仕事が選べる幅も全然違う。
どうすればいいんだろう。
生きていけるのかな。」

奈良女子大学の武輪敬心さんは、高校を卒業する前に妊娠・出産した生徒の追跡調査をしています。
高校を卒業するまでに出産した経験を持つ30人から聞き取り調査を行いました。

その結果、30人中15人が、出産後に生活保護を受けた人か生活保護の水準以下と推測される収入で暮らした経験のある人でした。
さらに調べると、子どものころに虐待をうけたとみられる人が過半数に上りました。
家庭の外に居場所を求めたことが妊娠につながった背景の1つだと武輪さんは分析しています。

奈良女子大学 人間文化研究科 武輪敬心さん
「経済的問題やネグレクトなどの経験をしてきている人たちがあまりにも対象者の方たちに多い。
妊娠に至る経緯を考えると彼女たちの自己責任と決めつけることはできない。
社会でサポートをしていくことが非常に重要。」

貧困どう防ぐ アメリカでの取り組み

高校を退学した人が貧困に陥るのをどう防ぐのか。
アメリカでは、妊娠・出産をした生徒から教育を受ける機会を奪ってはいけないという法律があります。
最も先進的な取り組みをしていると言われるフローレンス・クリテントン高校(コロラド州デンバー)は、妊婦と母親だけが通う高校です。

この高校に通うマヤ・ロドリゲスさんは、6か月の息子を校内にある託児所に預けてから授業に向かいます。
費用はすべて無料。
通常の科目に加えて、育児も学んでいます。
ロドリゲスさんは将来、社会福祉関係の仕事に就きたいと考えています。

マヤ・ロドリゲスさん
「この高校がなければ、通信制高校や託児所に何千ドルものお金が必要だった。
ここでは偏見もないし、生徒が互いに高め合うことができる。」

さらにこの高校では、進路を話し合うため、専門の相談員をおいています。
卒業後に安定した仕事に就ける人を増やすのが目的です。
看護や医療事務といった資格取得もすすめています。
貧困に陥る手前で支援することが、社会全体の利益になると考えているためです。
ミシェル・ライト校長は次のように語ります。

フローレンス・クリテントン高校 ミシェル・ライト校長
「若い母親が高校を卒業して、大学に行き、良い仕事に就けるように導くことは社会にとってもいいこと。
貧困の連鎖を絶つことができる。
そうすれば生徒の子どももうまくいく。」

取材:岡野杏有子/NHK国際部

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