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2020年2月5日(水)

「席どうぞ」が言えないあなたへ “逆マタニティマーク”

去年12月、電車やバスのなかで妊婦に席をゆずるための新しいマークができました。「席ゆずりますマーク」といいます。
妊婦が妊娠中であることを周囲に伝える「マタニティマーク」と同じイラストを使っていますが、つけるのは妊婦ではありません。妊婦に席をゆずってもいいという人が出歩く際、カバンなどにつけて使うそうです。わざわざマークにしなくても「席どうぞ」とひとこと言えばすむようにも思えますが、「席ゆずりますマーク」は、どうして生まれたのか取材しました。

「どうぞ」が言えない人へ “席ゆずりますマーク”

「席ゆずりますマーク」をつくったのは、会社員の椎野祐輔さんです。
きっかけは、妻が妊娠9か月のときに起きたある出来事でした。夫婦で電車に乗った椎野さんですが、あいにく車内の座席はいっぱい。そんななか、席をゆずってくれたのは優先席に座っていたお年寄りの女性。このとき、周りには若い人も座っていたといいます。
なぜ彼らが席をゆずらなかったのか。考えるうちに、“声をかける勇気がなかったのかもしれない”と思うようになりました。

椎野佑輔さん
「言いだすのにタイミングが悪かったりとか、勇気がそこまで出なかったり、そういう人たちのほうがおそらく多いんだろうなと。」

声をかけずに席をゆずる方法はないか。「席ゆずりますマーク」が誕生したのは、そんな思いからです。
試しに40個つくってみたところ、SNSなどで話題となり、2か月で4000個以上の注文がありました。製作の実費380円+送料120円で販売しています。

椎野佑輔さん
「『こういうのを待っていた』『いいアイデアだ』という意見をいただくことが多くて、さらに購入に踏み切ってくれるという人もたくさんいることにすごくびっくり。」

マークの意味は「席ゆずりますマーク」をつけているのを見たら、妊婦から声をかけてください、というもの。
どう思うか妊婦のみなさんに聞いたところ、「うれしいけど、自分から席をゆずってほしいと言うのは気が引ける」という人がほとんどでした。

せっかくの「席ゆずりますマーク」はあまり役に立たないのかと思いきや、そうではありませんでした。
1月に「席ゆずりますマーク」を購入した大学生の土屋璃子さんは、これまで席をゆずるのは恥ずかしく、妊婦を見かけても気付かないフリをしていました。ところが、マークをつけるようになってからは、車内に立っている妊婦がいないか、探すようになりました。もし見つけたら、自分から席をゆずる自信も湧いてきたと言います。

土屋璃子さん
「心強いというか、お守り感覚。自分から(妊婦を)見つけたら、今なら声かけられると思う。ゆずりたい。」

土屋さんは1月5日にこのマークをつけて、はじめて席をゆずれたそうです。

妊婦に「席どうぞ」言える?言えない?

ゆずりたいけどゆずれない、どうしてそんなことが起きてしまうのか。
現代人の人間関係などが専門で、心理カウンセラーの大嶋信頼さんは「電車内は人と人との距離が近く、脳の状態も似てくる。まわりが殺伐としていると、思いやりがある人でも空気に巻き込まれやすく、行動に移せない」としています。
どうすれば席をゆずりやすくなるのか。実は3年前に、地下鉄の会社などがスマートフォンのアプリをつかった実験を行っています。

そのアプリは、まず席をゆずりたい人と妊娠中の女性がそれぞれ登録します。そして電車にのった女性が「座りたい」とメッセージを送ると、同じ車内にゆずりたい人がいた場合、座席の位置を返信して席をゆずるというものです。実験は5日間行われ、参加した妊婦のうち、なんと87パーセントが席をゆずってもらえたそうです。

実験を行った団体 &HANDプロジェクトリーダー タキザワケイタさん
「優しくしたい、席ゆずりたい人、いっぱいいる。その思いがミスマッチ。思いがつながっていないのが現状の課題。そこをうまくつなげてあげることで、席ゆずりがもっと行われるのでは。」

実は「席ゆずりますマーク」をつくった椎野さんの一番の目的も、多くの人が優しい心を持っていると妊婦に伝えることです。マークをつけている人が増えれば、妊婦はより安心して暮らせるようになるはずと考えています。

椎野祐輔さん
「このマークがもし普及したら、ほとんどの人たちが、ゆずりたいと思っていることを(妊婦は)知ることができる。そうなったら、このマークはなくなってもいい。マークがなくなっても、ゆずり合いの心をお互いに持ちあえる世の中になると信じている。」

椎野さんは、このマークに妊婦以外の障害者の方などにもやさしい社会をつくりたいという思いを込めているということです。  

今回の放送では、おはよう日本の公式ツイッターにたくさんのご意見をいただき、放送でも紹介しました。ありがとうございました。
ご意見は「#おは本席ゆずり」で検索できます。

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