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2020年2月10日(月)

海外で人気上昇 日本酒を“世界酒”に

海外ではいま、和食ブームなどを背景に日本酒の人気が高まっています。輸出額は、この10年で3倍以上に増加。さらなる市場の拡大が期待されています。こうした中、ワイン大国・フランスで、日本人がお酒の現地生産に乗り出しました。目指しているのは、世界で愛される“日本酒”づくりです。

すべてフランス仕込み 日本酒を“世界酒”に

去年11月、パリ郊外の住宅街に誕生した醸造所。初めての出荷シーズンを迎えて、連日、酒の仕込みが続いています。
醸造所を立ち上げたのは、稲川琢磨さん、31歳。5年前まで、経営コンサルタントを務めていた異色の経歴の持ち主です。
“大好きな日本酒の魅力を世界に伝えたい”と、同世代の杜氏たちとフランスでの日本酒づくりに乗り出しました。

稲川さんは「ワイン文化が中心のフランスで、高い障壁があるとは理解していたが、逆にそこにチャンスがあるんじゃないか。SAKEを世界にどんどん広めていく、その一丁目一番地というのがパリ。」だと話します。

米、水、こうじから作られる日本酒。稲川さんのこだわりは、現地で手に入る原料で“日本酒”をつくることです。使っている米は、南フランス産。こうじも、現地でつくっています。狙いは、手ごろな値段の酒をつくり出すことです。
フランスで売られている日本酒は、ほとんどが1本5000円以上と高額です。輸送費がかかるため、日本より5割ほど高く売られています。一方、ワインは1500円以下で多くの種類が手に入ります。
フランス産の原料にこだわる理由は、もう一つあります。フランスでは、原料の栽培から醸造までを、同じ土地で行う「テロワール」という考え方が重視されているからです。

しかし、現地の素材をいかす酒づくりは、一筋縄ではいきません。フランスの水は、ミネラルを多く含む硬水です。ミネラルは発酵のスピードを早めるため、味の見極めを難しくします。米は、リゾットなどにつかわれる食用米です。日本酒づくりに最適とされる酒米は、フランスではつくられていないからです。
杜氏の今井翔也さんは、「素材としても、環境としても、誰もやったことない。とにかくにおいをかいで、味をみて、観察を重ねている。」と、難しさを語ります。

素材の持ち味をいかし、フランス人に愛される“日本酒”をつくれないか。
稲川さんたちが取り組んでいるのが、食用米の個性をいかす酒づくりです。

食用米は、酒に“雑味”をもたらすタンパク質が多い一方、米特有の“うまみ”も多く含んでいます。稲川さんたちは、米の蒸し方や、冷やし方、原料の割合を細かく変えるなど、食用米の“うまみ”を活かせないかと試行錯誤を繰り返しました。

出来上がった“日本酒”は、グラスに注ぐとほんのりと米の香りが漂います。ふくよかな甘さと、かすかな酸味も感じられるお酒に仕上がりました。価格は1本およそ2000円に抑えることができました。

稲川さんたちのお酒は、現地で受け入れられるのか。
先月、パリの中心部にあるバーでお披露目会が開かれました。集まったのはお酒好きの人たち。中には、飲食店の関係者もいます。

感想を聞いてみると…。

「とても飲み心地が良いですね。」

「これまでの日本酒に比べると繊細な甘さですね。ある意味、新しい味だと思います。」

「ここにサラミソーセージがあったら良いのに、ソーセージ と絶対あうよ。」

フランス料理の濃い味にも負けない濃厚な味わいだと評価する声が多く聞かれました。

米と水、こうじというシンプルな原料から多様な味や香りを生み出し、日本料理だけでなく、フランス料理にもあわせられる“日本酒”。今後も、世界のいろんな土地にあった酒が生まれるかもしれません。
“日本酒”の世界進出から目が離せません。
 
取材:桐山渉(NHK山形)

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