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2020年2月26日(水)

ことしの就活 弱り目にたたり目

新型コロナウイルスの感染拡大で、大学生の就職活動「就活」が影響を受けています。
3月1日からは企業の説明会が始まりますが、就職情報サイト「リクナビ」を運営するリクルートキャリアでは44の都道府県で予定していた合同企業説明会をすべて中止することを明らかにしました。


インターンシップで就活が長期化

ことし(2020年)の就活に臨む学生には、ほかにも苦労があります。
本格的な就活はこれから始まるにもかかわらず、実は多くの学生が企業の「インターンシップ」に参加し、就活が長期間に及んでいるんです。

東京都内にある中央大学で開かれた企業説明会。新型コロナウイルスの感染が広がる中でしたが、学生が企業と接触できる貴重な機会を減らすわけにはいかないと、予定通りの開催に踏み切りました。
例年より長期間に及んでいることしの就活で、学生たちには、疲れとあせりの色が見られます。すでに半年以上にわたってインターンシップに参加している学生もいます。

男子学生
「秋から本格的にインターンシップが始まったんですが、早め早めに始まんなきゃいけないという環境にあるのかなと思います。精神的にもキツいですが、頑張るしかない。」

女子学生
「早いところは長期インターンシップで内定をいただいている人もいる。私は遅く始めてしまったほうなので、あせりを感じてしまう立場です。」

中央大学・キャリアセンターの池田浩二さんは「この10年の中で一番スケジュールとして長く、新型コロナウイルスの影響もあり、学生たちは大変な就職活動を強いられている」といいます。

ことしの就活でインターンシップが長期化していった背景には、「就活ルール」をめぐる動きがあります。
いままでの「就活ルール」では、企業の説明会の開始が3月から、選考が6月から、というスケジュールになっていました。しかし、ルールを定めてきた経団連は、いまの大学3年生からルールを廃止。その後、政府が「学生の混乱を招かないよう、当面これまでのスケジュールを維持すること」を企業に要請しました。

ところが、人手不足が深刻な多くの企業では、採用の前倒しに傾きました。これまで職業体験の場だった「インターンシップ」を採用に活用するケースが増えているんです。大手就職情報サイトによると、去年(2019年)秋の時点で、インターンシップを行う企業は7割近く、8割以上の学生が参加しています。

地方の大学生 負担増

この就活の長期化で、学生の負担は増えています。なかでも負担が大きいのが、地方の大学生です。

福井大学の就職支援窓口では、就活にとまどう学生の相談に応じています。相談に訪れた学生は「インターンシップの参加・不参加は全然本選考に関係ありませんと企業は言っているんですけど、うわさでは行った人は、内定もらえるみたいです。よくわからないところが多い」といいます。

就活ルールが維持されたことから、企業の多くは「インターンシップは採用と関係ない」とうたっていますが、すでに事実上の内定が出されているケースもあります。福井大学で学生の就活支援に携わる大橋祐之さんも、学生の多くが「企業の本音と建前、ダブルスタンダードに戸惑っていると感じる」といいます。

大手企業への就職を目指し、去年9月からインターンシップに参加している福井大学3年の男子学生は、これまで5社に参加し、そのうち1社から、2度目のインターンシップに誘われました。

1度目のインターンシップは、去年10月。1日だけの、学生同士のグループワークがおもな内容でした。その2か月後、今度は、2日間にわたって先輩社員の話を聞いたり、模擬的な業務体験をしたりという内容です。この学生は、内定を得るには参加したほうが有利だと考え、会場の名古屋までバスで3時間かけて向かいました。しかし、2日間のインターンに参加しても、これが選考につながるのかどうか依然としてはっきりしませんでした。

男子学生
「ただただ疲れたというのが正直な感想。選考に本当に残れるのか今の段階ではすごく不安に思う。マイナス思考の連鎖が続く感じ。」

この学生は、こうしたインターンシップに6回参加。名古屋や大阪との往復の交通費や宿泊費は、ほとんど自己負担です。出費はあわせて10万円近くになります。こうした費用をまかなうため、去年からアルバイトを掛け持ちしています。就活を始めて半年。いまのところ内定を伝えられた企業はありません。

男子学生
「バイトもして、大学の授業もあって、さらに就活となると、みんなやっていることではあるんですけど、どうしても手いっぱいで回らないこともあって、難しいなっていうのが本音ですね。」

就活が長期間に及ぶことで、特に地方の学生の大学生活には負担がのしかかっています。

インターンシップによる採用活動が長期化していることについては、専門家も一定の歯止めが必要だと指摘しています。

リクルートキャリア 就職みらい研究所 増本全所長
「やはり学業を妨げないタイミングでのインターンシップの実施が望まれると思っています。長期休暇などに限定して行っていくことが今後重要になってくると思います。」

経団連では、本来の目的である職業体験から、かけ離れたインターンシップには制限をかけることを検討しています。また、政府も、インターンシップの実態調査に乗り出し、今後のあり方を見直そうとしています。

これからの就活に大学生はどう臨めばいいのか。増本所長によると、新型コロナウイルスの感染拡大による影響で、就活の先行きは不透明ですが、人材不足の中、「企業の採用意欲は変わらない」ということです。
また、今後も大規模なイベントの開催は中止が増えると予想されますが、代わりにWEBでの説明会なども開かれるのであせらずに情報収集をしてほしいと話しています。

取材:大川祐一郎 ディレクター(NHK福井)

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