これまでの放送

2020年2月28日(金)

謎 私たちはどこで生まれた? “生命の起源”に迫る!

科学の世界で、最大のテーマの1つが、「生命の起源」。私たち生命は、一体どこで生まれたのでしょうか。これまでは「熱水が吹き出す深海」という説や、中には「宇宙から隕石でやってきた」という説もありました。そしていま、研究者たちが新たに注目している場所があります。それが「地下」。きっかけは、正体不明、謎の生物が見つかったことでした。

発見 “生命の起源”に迫る! 正体不明の生物

海洋研究開発機構の鈴木志野さんです。世界中の海底から泥を採取して、微生物を見つける研究をしています。2011年、アメリカの研究機関に所属していた時にカリフォルニア州にある泉を調査しました。

そこは強いアルカリ性の水が地下深くからわき出す特殊な場所。

海洋研究開発機構 鈴木志野さん
「こういった場所に微生物はいないだろうと。生命というものが生きられないんじゃないかと考えられていたところでした。」

しかし調べてみると、生物の反応がでました。緑に光る小さな点は1ミリの5千分の1という、生物であれば常識を超える小ささでした。詳しく分析すると、細胞膜に包まれていて、ゆっくりと増殖するなど確かに生きていることがわかりました。

鈴木さんが分析を進めると、驚くべき特徴が見えてきました。遺伝子の数です。
人間が持っている遺伝子はおよそ2万。バクテリアの大腸菌でも4,000。しかし、この謎の生物はわずか400と、これまで見つかっている生物の中でも極端に少なく、最初の生命に近い可能性があることが分かったのです。

海洋研究開発機構 鈴木志野さん
「全く知らない世界が私の前に広がる。今までの人類の知見にない生命だったということは間違いない。」

この謎の多い生物は、極めて小さなバクテリアの一種であることがわかりました。遺伝子を分析すると、DNAを複製する遺伝子はありますが、呼吸やエネルギーを作るための遺伝子はありませんでした。これまでの常識を覆すものでした。では、どうやって生きているかというと、地下にヒントがあると考えられています。泉の地下には「かんらん岩」という特殊な岩石がありました。これは古代の地球には豊富にあったことが分かっています。

謎 “生命の起源”に迫る! 「地下」は巨大な生息圏?

この岩、水と反応すると、水素を発生させる性質があります。それをエネルギーにしているのではという見方が出ているんです。この謎の生物は地下にいるのではないかと研究が始まっていて、日本でも実際に地下深くに潜って研究が行われています。

岐阜県瑞浪市にある研究施設。東京大学の鈴木庸平准教授はここの地下深くで研究しています。深さは300メートル。東京タワーに相当する深さです。

地底深くにある岩は、6,900万年前、恐竜がいた白亜紀にできたもの。流れ出る水は、1万年前に地表に降った雨です。ここの岩盤をさらに100メートル掘り、岩の中の水を取り出します。そして、通常よりも目の細かいフィルターを通します。すると…。

東京大学 鈴木庸平准教授
「この黒く見えているものが、微生物が無数に集まって見えている。大漁です。」

この灰色に見えるものが、謎の生物の仲間。その数、50億。酸素や有機物が少なく、過酷な環境である地下は、生命の巨大な生息圏の1つである可能性が浮かび上がっているのです。

東京大学 鈴木庸平准教授
「地下でとても古い生き物がそのまま残っている。地底が微生物の生息場所として進化する場所として重要だったかということを、これからの研究によって明かされていくのではと思います。」

生命は地下で誕生したという説もでていますが、別の場所で誕生した生命が、地下で生き残ったと見る人もいます。最初の生命が、どこで、どのように誕生したかは、まだ謎に包まれています。いずれにしても、最初の生命がどのようなものであったか知るためには、これまで生命とは全く関係がないと思われてきた地下を調べる重要性が高まっていることは間違いありません。「地下から生命誕生の謎を解く鍵が見つかる」ということがそう遠くない将来に起きるかもしれない、そんな状況になっています。

報告:寺西源太記者(科学文化部)

Page Top