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2020年3月9日(月)

被災者支援のあり方は

被災者が比較的安い家賃で入居できる「災害公営住宅」。被災者をどう支援するのかをめぐって、新たな課題が浮かび上がってきています。




NHKが被災者に行ったアンケートです。災害公営住宅の家賃の値上げに苦しむ声が相次いで寄せられました。

岩手・釜石 60代男性
「2年経過して、いきなり2倍以上に上昇した。」

宮城・石巻 50代女性
「働けば働くほど、翌年の家賃が上がってしまう。」

「家賃が値上がりした」と回答した被災者は35%。入居当初の2倍以上に値上がりしたという人も全体の10%を占めました。値上がりの背景にあるのは、国の制度です。災害公営住宅に入居すれば、支援が受けられ、家賃が通常より安くなります。しかし、収入に応じて早い人で4年目から、遅い人でも6年目から、徐々に支援がなくなり、家賃が上がっていくのです。

家賃の値上げに苦しむ1人、髙橋美和さん。介護施設で働くシングルマザーです。震災当時、両親とともに住んでいた実家は全壊。友人のつてを頼って、小学生と保育園児だった3人の子どもと仙台の賃貸住宅に入居しました。そして5年前、災害公営住宅への入居が認められました。高橋さんの収入は月15万円ほど。子どもたちの教育費や生活費がかさみ、貯金を取り崩し、生活してきました。そうした中で、家賃が値上がり。去年(2019年)4月、入居当初の3倍となりました。実家に戻る事も考えましたが、仙台から離れた場所のため、仕事や子どもの環境を考えると戻れないといいます。

災害公営住宅に入居 髙橋美和さん
「震災から9年たっても、生活の状況はそうそう豊かになっていないですよ。もうちょっと待ってくれてもいいんじゃない。子どもが育つまで待って。」

一方、自治体側も、今後の支援のあり方をめぐって、方針が分かれています。
仙台市は国の支援制度のほか、低所得の被災者に限って独自の支援を続けていますが、入居10年で打ち切る予定です。市の担当者は、震災から9年がたち、被災者ばかりを優遇できなくなってきていると言います。

仙台市 市営住宅管理課 西本憲次課長
「被災者が大変だったのは重々承知しています。ただ一方で住宅に困窮している所得の少ない、被災していない皆さまがいる中でトータルで見ていかなくてはいけない。」

仙台市が整備した災害公営住宅は3200戸分。被災者の応募がなく空きが出た場合、一般の低所得者にも貸し出されています。そこで、問題になってくるのが、家賃の差です。一方はより手厚い被災者支援、もう一方は、通常の福祉政策の対象になります。このため、同じ住宅でも被災者のほうが一般の入居者と比べて安い家賃で暮らしているのです。

例えば、都市部の住宅で収入がほとんど無い場合、被災者はおよそ5700円ですが、一般の入居者は3倍以上のおよそ1万9000円になります。

仙台市 市営住宅管理課 西本憲次課長
「市営住宅の入居者は本当に所得の少ない方とか、ひとり親世帯とか、障害をお持ちの世帯、DVを受けている世帯、いろんな方がいらっしゃる。私としては、被災者とあからさまな差はなかなかつけられない。」

被災者をどこまで、どう支援するのか。震災9年の今、新たな課題が浮かび上がっています。震災の影響で今も苦しい生活が続く人がいる一方、自治体は被災者支援を通常の福祉政策に取り込もうとしていて、両者の考え方の「ずれ」が大きくなっていると感じます。また、災害公営住宅に入るとコミュニティーが希薄になり、どれぐらいの人が支援を必要としているのか実態が見えづらくなっています。こうした人にも支援が行き届くようにするには、行政が「待ちの姿勢」ではなくて積極的に現場に行って被災者の声を聞く姿勢が必要になっていると思います。

取材:野島裕輝記者(NHK仙台)・佐藤惠介記者(NHK仙台)・バルテンシュタイン永岡海記者(NHK仙台)
   小室洋平記者(おはよう日本)・上原直大ディレクター(おはよう日本)

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