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2020年3月13日(金)

性暴力根絶へ向けて

去年(2019年)、性暴力をめぐる裁判で、加害者が無罪となる判決が相次ぎました。これに対し、被害者や支援者たちが「被害の実態が理解されていない」として抗議の声を上げた「フラワーデモ」が全国に広がり、性暴力根絶を訴える大きなうねりにつながりました。家庭内で起こることが多く、発覚しにくい子どもへの性的虐待。抵抗できない、周囲に打ち明けられない実態をある女性が語ってくれました。

言えなかった“性虐待”

去年(2019年)、性暴力をめぐる裁判で、加害者が無罪となる判決が相次ぎました。これに対し、被害者や支援者たちが「被害の実態が理解されていない」として抗議の声を上げた「フラワーデモ」が全国に広がり、性暴力根絶を訴える大きなうねりにつながりました。家庭内で起こることが多く、発覚しにくい子どもへの性的虐待。抵抗できない、周囲に打ち明けられない実態をある女性が語ってくれました。

関東地方に住むけいこさん(51)は、9歳から15歳まで実の父親による性虐待を受けていました。父親は、子ども会の会長を務めるなど、周囲からの人望も厚い人でした。母親が外出している時間を狙って、1人でいるけいこさんの体を触ってくるようになりました。

けいこさん
「最初の頃は、お風呂で性器をいじられるとか。そういうところから始まったと思うんですけど。そのあとはだんだんとエスカレートしていって、お布団の中で、性器を触られたり、なめられたりとか。」

中学生になり、自分のされていることが理解できるようになったものの、抵抗することはできなかったけいこさん。被害が明るみになれば家族がバラバラになるのではないかと、誰にも相談できませんでした。

けいこさん
「これを言ってしまったら、私は一体どう生きていけばいいんだっていう恐怖感の方が強かったですね。きっとこの家は、めちゃくちゃになって、商売をやっていたので、商売が続けられなくなるんだろうとか、私は一体どこにどうなっていくんだろうっていう不安はいつもありました。」

成績優秀だったけいこさんは、次第に勉強にも集中できなくなり、お酒やたばこにも手を出すようになりました。中学3年のとき、家庭に問題があるのではないかと、教師が両親と面談しました。それを機に父親からの性虐待はなくなりましたが、それでも当時、けいこさんは誰にも話せませんでした。本当は、早い段階で信頼できる大人に被害を打ち明け、気持ちを聞いてもらいたかったといいます。

けいこさん
「ゆっくり時間をかけて、話を聞いてくれて、否定しないで、ちゃんと最後まで聞いてくれるっていう姿勢が、子どもの頃、すごく欲しかった。」

性暴力の被害が発覚するのは氷山の一角ですが、明らかになったケースについて性暴力の被害者の支援をする団体が調査したところ、性暴力の加害者の8割が、顔見知りであることが分かりました。そのうち親族や家族が19%に上ります。そのため、被害者は、被害を打ち明けにくく、周囲が気づきにくいという難しさがあるのです。周囲の人たちはどうやって被害に気づけばいいのでしょうか。

子どものSOSに気づくために

性虐待の実態に詳しい日本子ども虐待医学会の山田不二子医師は、「性暴力は、周囲が気づかぬ間に被害が長期化し、エスカレートしていくことが大きな問題だ」といいます。神奈川中央児童相談所の調査によれば、性虐待は、平均で9歳からはじまり、継続期間は4年ほどにのぼっています。山田医師は、幼い子どもの何気ないひと言や、思春期の非行や自傷行為など、子どもの変化を観察することで、性虐待の兆候に気づくことができると指摘します。

日本子ども虐待医学会 山田不二子医師
「私たちが、気をつけるべきことは、子どもがあっけらかんと、全然被害だと思わずにポロッと言ってしまったり、してしまったりする行為に、背景として性虐待があることがあるので、そういったことをないがしろにしないで、きちんと子どもに“どういうことがあったの?”と聞いていくという対応が必要だと思いますね。」

山田医師は、子どもに被害を聞く際は、根掘り葉掘り、詳細を尋ねないことが大切だと言います。そして、性虐待に気づいた大人は、疑いの段階でもいいので、いち早く児童相談所に通告してほしいということです。ようやく声を上げ始めた被害者の訴えに耳を傾け、被害をなくすために、私たち一人一人がこの問題について考えていく必要があるのではないでしょうか。

取材:村上裕子(NHK名古屋)

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