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2020年3月15日(日)

過激派組織ISが狙うアフリカの黄金

中東で猛威を振るってきた過激派組織IS=イスラミックステートは、イラクやシリアでは事実上、支配地域を失いましたが、その勢力はいまや世界に広がり、むしろ拡大しているとする報告もあります。なかでも深刻なのが西アフリカで、襲撃やテロ事件が相次ぎ、ISの新たな拠点になる懸念が高まっています。

過激派組織IS 勢力拡大 西アフリカ 米軍も警戒

銃を手に、政府軍の基地を襲撃する男たち。去年(2019年)11月、西アフリカのマリで、イスラム過激派組織の戦闘員が、自ら撮影したとされる映像です。3か月前には、ニジェールで政府軍の兵士71人が死亡。犠牲者は、去年1年間で4,000人を超え、この3年で5倍以上に膨らんでいます。一般市民も襲撃に巻き込まれ、国連によると100万人を超える難民や避難民が発生する人道危機を引き起こしています。
7年前、アルジェリアの天然ガス施設で日本人10人を含む40人が犠牲となった事件を起こした武装グループの一部も、ISに加わっているとされています。

中東を中心に「テロとの戦い」を繰り広げてきたアメリカ軍も、西アフリカの情勢に危機感を強めています。NHKが先月(2月)同行を許された合同軍事演習には30か国が参加し、ISの制圧に向けた訓練を重ねていました。

米軍幹部
「過激派の攻撃はいま、組織化されて深刻な事態になっています。西アフリカでの脅威に警戒を続けています。」

金鉱山がISの資金源に 闇の密売ルート

ISの脅威がアフリカ急速に拡大している背景に、新たな資金源があることが分かりました。
私たちは、テロや襲撃が特に激しさを増している国の一つ、ブルキナファソに向かいました。

首都から車で2時間ほどかかる村の奥を進むと、突然、白い土の山が現れました。金の採掘場です。この採掘場だけで200以上の穴があり、作業員はロープで地下に下ろされ、土を手作業でかき出し、金を採取します。

世界の最貧国のひとつだったブルキナファソは、8年前に、大陸を横断する巨大な金鉱脈が発見されるなどして、時ならぬゴールドラッシュに沸いているのです。ところが国民に豊かさをもたらすはずの金が、いまISの標的になっています。

去年11月、ブルキナファソの東部で、外国資本の金鉱山の労働者を乗せた車が武装グループの襲撃を受け、少なくとも39人が死亡しました。
政府の閣僚は、軍の力が及ばない国の東部でISが金の採掘場を次々に奪っていると危機感を募らせています。

ブルキナファソ政府 イダニ鉱業相
「過激派組織の攻撃は、わが国の鉱業に、大きな損失を引き起こしています。」

過激派が乗っ取った採掘場の近くに暮らす住民に、電話で話を聞くことができました。その実態は、中東でのISの恐怖による支配を再現したかのようでした。

襲撃された採掘場の近くの住人(電話)
「過激派の戦闘員が支配していて、政府軍も近づくことができません。住民には、自分たちに協力すれば、金の採掘を続けさせてやると言っていますが、協力を拒否すれば殺されてしまいます。戦闘員は自由に動き回っています。鉱山から国境に向かって、そこから隣の国に採掘した金を横流しているんです。」

私たちは密売ルートを追って、ブルキナファソの隣国、トーゴに向かいました。ISはどのようにして金を国外に持ち出し、資金に換えているのか?

国境に来てみると大がかりな検問所はなく、道の脇に国境の目印があるだけでした。関係者は、金を持ち込むのに苦労はないと言います。

金の買い取りをしている業者が取材に応じました。すると、持ち運びが容易で溶かしやすく、仲買人から仕入れた金がどこで採取されたものなのか、わからないと言います。

金の買い取り業者
「産地がどこであろうと金は金です。全部混ぜてしまうから、いわば“アフリカ産”ってことです。」

トーゴ産とされる金は、スイスや中東の産油国などの国際市場に輸出され、スイスだけでも多い年で年間15トン以上にのぼるとされています。しかし、トーゴ政府の閣僚は、国内には大きな金鉱山がなく、輸出量のほとんどは、実際には他国から持ち込まれたものだと認めました。

トーゴ政府 ビダモン鉱業相
「トーゴには、小規模な金の採掘場しかないため、せいぜい年間数10キロしか採れないはずです。トーゴが、金の密売の”中継地”として使われてしまっているのです。政府としても、あらゆる手段を尽くして密売を止めようとしているところです。」

この地域で手掘りで採取される金は全体で、年間2,000億円から4,500億円分にも上ると言われています。そのうちISがどれほど奪っているのかはわかりませんが、その一部だとしても、大きな金額になります。しかも、その資金は西アフリカだけでなく、ほかの地域の過激派組織にも渡りかねません。また、資金にひきつけられて、欧米などの若者がかつてシリアを目指したように、今度は西アフリカが、過激思想の共鳴者の目的地になるおそれもあります。それだけに、アフリカだけの問題ではなく、国際社会全体の新たな脅威です。

2000年代の始め、紛争地で反政府勢力が採掘したダイヤモンドが資金源になっている問題が注目されました。この「紛争ダイヤモンド」をめぐっては、生産国、消費国、業界が原産地証明の仕組みを作り、国際市場に流れ込ませないための対策を取っています。
「紛争ゴールド」という新たな課題が浮き彫りになった今、各国で協調して仕組みを作っていくことが急がれています。

取材:別府正一郎(ヨハネスブルク支局長)

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