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2020年3月23日(月)

産業界で進む “5G”最前線

新型コロナウィルスの影響で広がる、遠隔会議や遠隔面接。その流れを加速させるかもしれないサービスが、第5世代の通信規格「5G」です。5Gは、今の4Gよりも高速で大容量なのが最大の特徴です。例えばスマートフォンに2時間の映画をダウンロードするのに、今は5分ほどかかるところが、わずか3秒ほどで出来るようになるとされています。5Gは産業分野でもさまざまな活用が検討されていて、社会を大きく変えることが期待されています。

最前線!5Gビジネス 建設重機が遠隔で…

東京・稲城市にある建設会社の実験場。
ここを走るダンプカーの運転席には誰も乗っていません。運転手がいるのは、重機から200メートル離れたプレハブの中。ゲームのコントローラーを使って、並んだモニターを見ながら、遠隔で操縦しています。
これはソフトバンクの実験用の5G電波を使って行っている実証実験です。

土砂を削り、運んで、積み上げるなど、一連の作業がすべて遠隔で行えます。
これを可能にしているのが、高画質な映像です。これまで4Gの環境では、たびたび映像が乱れることが課題で有人では近づけない災害現場など限って遠隔操縦を行ってきました。5Gでは200万画素のきめ細かい映像がスムーズに受信できることで安定性が増し、実用化のめどが立とうとしています。

この実験では、稲城市の現場からおよそ30キロ離れた横浜の研究所でも、高画質の映像の受信に成功。
ゆくゆくは複数の工事現場の重機を1か所で動かすことを可能にして、人手不足を解消したいと考えています。

大成建設 生産技術開発部 青木浩章さん
「この技術が発展していくと、現場の建設機械をコントロールするとか、現場の安全状況を見るというテレワークが成り立ってくるのかもしれない。少ない人数で運営ができるスタイルにしたい。」

最前線!5Gビジネス 自動運転で保険会社が…

5Gを使って、新たなサービスに乗りだそうとする企業もあります。
大手保険会社では、5Gの特徴である「低遅延」を生かした実験を去年から進めています。
ここで実験しているのは、自動運転で走る車から送られてくる映像の受信。

現在の4Gでは1秒近くの遅延が発生しますが、5Gではほぼゼロになり、リアルタイムで見ることが可能になります。映像を送っているのは、自動運転の車に付けられた5台のカメラ。運転に必要な視覚的情報が網羅されています。いずれバスやタクシーの自動運転が実用化した時には、車から送られてくる映像を使って、事故が起きた後のサポートを充実させたいと考えているのです。

損害保険ジャパン日本興亜 リテール商品事業部 新海正史さん
「道の真ん中で車両が止まってしまった場合に、ちょっとだけ左に寄せてやると、後続車が通過できるようになる。もしくはハザードランプを出す。車の事故の二次被害を低減していきたい。自動運転時代には、いかに安心・安全を提供するか、乗客の不安を抑えるかにチャレンジしていきたい。」

最前線!5Gビジネス 生産ラインを無線化

企業のなかには、多くの端末を同時に接続できる「多接続」という5Gの特徴を生かそうとする動きもあります。大手電機メーカーの実験場で目指しているのは、多くのロボットを無線で制御する「次世代の工場」。まず取り組んでいるのが、ロボットを制御するためのケーブルを取り払い、タブレットから操作する実験です。

今の工場は、ロボットに多くのケーブルがつながれ、容易に動かすことはできません。そのため、基本的に1つの生産ラインでは1つの製品しか作れません。
しかし、5Gの特徴である「多接続」を生かして何百ものロボットを同時に制御し、工場が無線でつながることによって、自由にロボットを入れ替えることができます。例えばテレビを製造していたラインで、スマホが作れるなど、市場のニーズに柔軟に応えられるようになるのです。
生産ラインを簡単に組み替えて別の製品を作れるようにするという、これまでの概念を変える画期的な取り組み。すでに300社以上から問い合わせがきているといいます。

NEC 新事業推進本部 新井智也さん
「5Gは単なるネットワークではなく、産業における新しいインフラだと思っている。いろいろなイノベーションやソリューションを作っていきたい。」

医療・防災・エンタメにも… 5Gが切り開く未来

このほかにも医療分野では、映像をつないで遠隔地にいる患者が専門医の診断を受けられたり、将来的には遠隔手術などもできるよう研究が進められています。
さらに、警備ロボットです。カメラの映像を送ってAIが瞬時に不審者を見極めます。ほかにも農作物の生育管理や、川の水位を監視する防災面などでも活用が期待されています。

そして、携帯電話各社が力を入れているのがエンターテインメント分野です。例えばスポーツ観戦をしながら、自分の端末で別のアングルから選手を見たり、もう一度見たいプレーを再生したりできます。ほかにも好きなアイドルのライブをその場にいるように体感できるなど、さまざまなコンテンツが用意される予定です。

こうしたサービスを利用するには、5Gに対応するスマホを購入する必要があります。当面5Gを利用できるのは、大都市が中心になる予定ですが、各社は順次、エリアを全国の幅広い地域に広げていく計画です。

取材:茂木里美記者(経済部)・中江文人ディレクター(おはよう日本)

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