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2020年3月24日(火)

オリンピックが直面する “気候変動”危機

新型コロナウイルスに揺れる東京オリンピックですが、今回の大会で「感染症」の問題が浮上する前に課題として直面していたのは「気候変動」の問題でした。「気候変動」の影響は近年、スポーツにおいても深刻化しています。



4年前、ある衝撃的な予測が発表されました。アメリカなどの研究者グループが発表した報告書は、7月と8月にオリンピックを安全に開催することができる北半球の都市が、気候変動によって、将来どれほど減るのか予測しました。
その結果、2085年には、安全に行える都市は世界全体で33だけに。アジアでは中央アジアのモンゴルとキルギスの2都市だけとなる、としています。こうしたなか、世界のアスリートたちが今、声をあげ始めています。

「気候変動との勝負に勝ちましょう」

このままでは将来、スポーツができなくなる。世界のアスリートたちが今、声をあげ始めています。IOCと国連の機関が共同で制作した気候変動の啓発動画にはオリンピックで活躍したアスリートたちなどが登場。「気候変動」への危機感を口々に訴えています。

危機感は日本でも広がっています。大学のラクロス部に所属する鈴木弥也子さんはおととし(2018年)の夏、合宿中に後輩が熱中症で倒れて救急搬送されたり、去年(2019年)は台風19号でグラウンドがある多摩川の河川敷が浸水したりしたことから、異常気象でスポーツをする環境が脅かされていると感じています。

鈴木弥也子さん
「本当に気候変動を体感するようになってきていることは、すごく怖い。」

高校時代にアルペンスキーで全国大会2位になった平澤拓海さんは、訴えを各国の政府に直接、届けようと動き始めています。去年にはスペインで開かれた気候変動対策の国際会議に参加。環境活動家のグレタ・トゥーンベリさんらとともに「石炭の使用を減らせ」と各国に対策を訴えました。さらに、現地で小泉環境大臣に会い、スポーツに親しむ若者の声を政策に反映するよう求めました。

平澤拓海さん
「このままでは競技ができないような状態になってしまうんじゃないか。活動を通じて、気候変動への対策の必要性を発信していきたい。」

新たに石油を原料とせず 何度でも製品を作り直せる

オリンピック・パラリンピックを開催する側も危機感を強めています。東京大会では、二酸化炭素の排出量を過去2大会に比べて10%以上減らす計画を打ち出しました。
その対策のひとつが、日本選手団が着用する公式スポーツウエアです。化学繊維でできていますが、二酸化炭素の排出を大幅に抑えた画期的な方法で製造されています。原料としたのは、これまでほとんどが廃棄されていた使い古しのスポーツウエアです。ここから不純物を取り除き、純度の高いポリエステルを精製。これにより新たに石油を原料とせず、何度でも製品を作り直すことが可能になりました。メーカーは10年後には、主なポリエステル製品をリサイクルで製造する計画です。

アシックス 廣田康人社長
「オリンピックのマラソン・競歩も札幌に移転した。目に見える形で、スポーツをする環境に対しての悪影響が出てきている。より循環型の社会を作っていくことは、スポーツメーカーの責務。」

東京大会に求められるもの

元陸上選手でオリンピック3大会に出場した為末大さんは、「気候変動に対する危機感はアスリートのなかでもまだばらつきがあるが、アスリートは自分の身体を通じて、いまの環境の変化を感じ取っていることが多い。今後は自ら発信していくケースが増えていくとよいと思う」。そのうえで「オリンピックの開催には、感染症そして気候変動などいろいろな条件への対応が求められていることが明らかになってきている。この機会に、こうした問題に対して、国際社会全体で取り組んでいかなければならないと確認しあうことが大事なのではないか」と話していました。

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