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2020年3月27日(金)

佐々木真菜選手(22) 飛躍続ける パラアスリート

NHKパラリンピック放送リポーター 後藤佑季さん
「1年程度延期されることになった東京パラリンピック。佐々木真菜選手は、陸上女子400メートル、視覚障害のクラスですでに日本代表に内定しています。日本パラ陸上競技連盟は、佐々木選手を含む14人の選手の内定は変更しないという方針を明らかにしたので、来年のパラリンピックにも出場できる見込みです。パラリンピックに向けて、常にひたむきな姿勢で、トラックの中でも外でも、飛躍を続けています。」

“繰り返し”が生んだ「能力」

去年(2019年)12月。佐々木選手は、パラリンピックに向けた強化合宿に臨んでいました。この1か月前に開かれたパラ陸上の世界選手権では4位となり、メダルにあと一歩と迫った佐々木選手。この日は一気にトップスピードにあげるスタートの練習を繰り返していました。

佐々木真菜選手
「前半の勢いをどれだけ持たせるか。第1段階から第2段階にあがるステップだと思って、しっかり頑張っていこうかなと思います。」

佐々木選手は、生まれたときから目に入る光の量を調節できない「無虹彩症」。常に視界は、白くぼんやりとした状態だといいます。佐々木選手の強さの秘密。それは、障害と向き合い練習を繰り返すことで身についた、ある能力です。佐々木選手は小学5年生で陸上を始め、中学、高校時代も、地元福島の視覚支援学校で陸上に打ち込みました。卒業後は陸上部を持つ地元の銀行に入り、健常者と一緒に、繰り返しトラックを走りました。そうした中で身についたのが、「空間をイメージする」力です。
トラック競技では、コースの内側のラインを踏んだだけで失格になります。

恐怖心を抱えたまま走る選手もいる中、佐々木選手は、練習を繰り返すことで、レーンの幅や白線の位置などを頭の中に描き、そのイメージに沿って走れるようになりました。

佐々木真菜選手
「数年は恐怖心があったんですけど、感覚というものがだんだんつかめてきて、内側のレーンと外側のレーンのだいだいの角度は把握できているので。しっかり走れるところにつがっているかなと。」

「競技」でも「職場」でも

陸上で培った力は、いま、銀行での仕事にも生かされています。柱や壁にぶつからずに歩けるのはもちろん、机の配置も細かく把握できるようになったといいます。

佐々木真菜選手
「一人一人のデスクがどこにあるかというところも把握して、地図は頭の中に入っているという感じです。」

佐々木真菜選手
「左右どっちにボタンあったっけとか、どれが換気扇のスイッチで電気のボタンなのかも全然わからない状態から始まったので、今はどこに何があるっていうのが分かっているので、スムーズに仕事はできています。」

いまや佐々木選手は、職場にとって欠かせない戦力となっています。

東邦銀行総合企画部 石井英幸課長
「彼女は陸上も仕事も同じ取り組み姿勢でまじめで素直にやっています。彼女に対してできない仕事とか、まかせられない仕事はないと思います。」

パラ選手としての成長を、社会人としての成長にもつなげてきた佐々木選手。さらなる高みを目指します。

佐々木真菜選手
「仕事の面でも自分のできることはしっかりやるというところは私の持ち味でもあるとは思うので、その中で人の役に立てたらと思うところがすごくあるので。」

そして昨日(26日)。来年に延期されたパラリンピックについて、心境を語りました。

佐々木真菜選手
「中止という訳ではなく、延期という形で来年開催されるということに関して、すごくよかったなと。しっかり自信をもってスタートラインに立てるように、1つ1つ課題をクリアしていって、頑張りたいなと思います。」

障害者の環境 よりよくなるために

NHKパラリンピック放送リポーター 後藤佑季さん
「今回の取材を通して心に残ったのは、パラアスリートとしてだけではなく、周りに信じられ、支えられ、人として成長する、生き生きとした佐々木選手の姿でした。障害者といっても、その程度はそれぞれ違います。決して、障害が『あるか』『ないか』の二元論ではありません。『障害者だから、できない』と決めつけるのではなく、障害の程度でできることもあるのだ、ということを知ってほしいです。パラリンピックは1年程度延期になりますが、この1年間で、障害者を取り巻く社会が大きく前進し、よりよい形でパラリンピックを迎えられることを、期待したいと思います。」

取材:後藤佑季(NHKパラリンピック放送リポーター)

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