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2020年4月5日(日)

新型コロナウイルスで異例の選挙戦 韓国総選挙

4月2日に選挙運動がスタートした、4年に一度の韓国の総選挙。残り任期が2年となったムン・ジェイン(文在寅)政権の「中間評価」と位置づけられ、4月15日に投票が行われます。その選挙戦は、新型コロナウイルスの感染拡大で異例の状況になっています。

感染拡大の中 韓国総選挙 異例の選挙戦に

握手の代わりに、拳を合わせたり消毒液をかけたり、選挙運動はいつもと一変しています。有権者との接触が制限される中、候補者が積極的に活用しているのが、SNSです。インパクトのある動画をつくり、名前を連呼する候補者もいます。

一方、投票所では、安心して足を運んでもらうための仕組みをつくろうとしています。3月行われた模擬投票では、入り口で熱を測ったうえで手を消毒し手袋をつけ、投票を待つ間も1メートルの間隔を確保することにしました。

今回の総選挙は、5年の任期を折り返したムン・ジェイン大統領の「中間評価」と位置づけられています。

任期前半には、北朝鮮のキム・ジョンウン朝鮮労働党委員長と会談を実現し、大統領の支持率は一時、80%を超えました。しかしその後、北朝鮮との関係は悪化し、側近のスキャンダルや経済の伸び悩みで支持率はピーク時の半分以下になりました。今回の総選挙は大統領を支える与党と最大野党が第一党を争う構図で、ムン政権の経済政策の是非などが争点になると見られていました。

ところが2月から、韓国で新型コロナウイルスの感染が急速に拡大。2月20日には、国内で初めて死者が確認されました。しかしその日、ムン大統領は、アカデミー賞映画「パラサイト」のポン・ジュノ監督と会談。談笑する姿がニュースで流れ、緊張感に欠けると批判がでました。2月下旬には感染者が3,000人を超え、大統領の支持率は40%台前半まで落ち込みました。

危機感を覚えたムン政権は、検査を徹底的に行い、封じ込めをはかります。車に乗ったまま検査を受けられる「ドライブスルー検査」を世界に先駆けて実施。さらに、70%の世帯に最大およそ9万円の支援金を支給すると発表。ムン大統領も、先頭に立って対策にあたる姿をアピールしました。

韓国 ムン・ジェイン大統領
「政府は、危機レベルを最高段階の“深刻”にあげて、全面的に対応している。経済も非常事態にあるという認識をもって、経済を立て直すことにも全力を尽くす。」

こうした取り組みで感染拡大のペースが下がり、大統領の支持率は1年4か月ぶりに50%台半ばまで改善し、選挙戦では与党に追い風となっています。

逆風の最大野党は巻き返しを図っています。

代表みずから学校の教室などを消毒。写真をSNSに掲載してアピールしています。その上で、ムン政権によって落ち込んだ経済を大規模な支援策で回復させると訴えています。

最大野党「未来統合党」ファン・ギョアン(黄教安)代表
「苦しい経済を立て直さなければなりません。そのためには(政権を)変えなければなりません。」

なぜ、この状況で選挙を決行か

大統領の権限で延期することも可能でしたが、かつて朝鮮戦争中も選挙をやったという声も聞かれ、延期が議論されることはほとんどありませんでした。
ただ、問題もあります。新型コロナウイルスの影響で投票したくてもできない人が、かなりの人数に上る可能性があるのです。例えば、隔離されている人のために郵便で投票できる仕組みもつくられましたが、すでに申し込みは締め切られています。このあと投票直前に感染した場合はどうするのかなど、課題が残っています。また、世界的に感染が広がる中、日本を除く50を超える国で在外投票が行われず、8万人以上が投票できない見通しです。さらに感染を恐れて投票をあきらめる有権者もいるとみられ、投票率が大きく低下するという見方も出ています。

始まった選挙戦情勢は?

最新(4月5日現在)の世論調査でも、与党の勝利を期待する人が47%で、野党の勝利を望む人より10ポイント高くなっています。ただ、外出の自粛が呼びかけられ学校が休みになるなど、いわば「コロナ疲れ」を感じている人も多く、もし投票日までにさらに感染が広がれば、ムン政権や与党に不満が一気に向かう可能性も否定できません。最終的には、投票日まで新型コロナウイルスの状況がどうなっているのかが選挙結果を大きく左右することになりそうです。

選挙の結果は、残り任期が2年あまりとなったムン大統領の今後の求心力に関わるため、日本との関係にも影響を及ぼすことが予想されます。日韓の間には太平洋戦争中の「徴用」をめぐる問題など懸案が山積しており、今回の総選挙の行方を注視する必要がありそうです。

取材:佐々一渡記者(ソウル支局)

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