これまでの放送

2020年4月11日(土)

“家賃が払えない…” 相次ぐ相談

新型コロナウイルスの感染拡大で企業の生産活動や消費に影響が広がる中、生活が苦しくなり、家賃を払えなくなる人が増えるおそれがあります。専門家は「多くの人が住まいを失う危険性が高まっている」と指摘しています。現状と支援制度について取材しました。

感染拡大で収入減

家賃の支払いが困難になっている、島谷さん(仮名)です。タクシー運転手として、30年近く勤めてきた島谷さん。外出の自粛が広がる中で、売り上げが4割落ち込んでいます。

毎日12時間働いても、先月(3月)の給料は通常の3分の2。今月(4月)は、さらなる減収となる見込みです。島谷さんは、唯一の頼れる身寄りであった母親が昨年死去。葬儀などの借金を返済しながらやりくりしてきました。保険の契約を一時的に止めるなどしてきましたが、先月初めて家賃7万円を滞納してしまいました。

島谷さん
「家賃が滞納始まっているので、最悪は退去だと思うんですよ。」

家賃を払うために、仕事の合間をぬってアルバイトを入れることも検討しはじめました。

島谷さん
「本当に気分的にめまいしてくるっていうか、心が折れるっていうか。不安どころじゃなくて、やっていけなくなる。」

家賃を3か月以上滞納した場合、大家側が裁判を起こせば、立ち退きを求められる可能性が高くなります。

“住宅危機”防ぐために 公的支援求める民間団体

家賃の滞納の末に、家を失う人々が急増するのではないか。NPOや弁護士のグループが動きだしています。

「新型コロナウイルスの感染拡大に伴う、生活困窮者への支援強化について緊急要望書を申し入れさせていただきます。」

中心団体のひとつ、生活困窮者などに住まいを提供する「つくろい東京ファンド」です。

代表の稲葉剛さんです。これまで所得が安定していた人々からも、家賃が払えないという相談が相次いでいると言います。

つくろい東京ファンド 代表理事 稲葉剛さん
「これから2か月後、 3か月後に一斉に住まいを失ってしまう、『住宅危機』といえるような現象が起こるのではないかと大変危恨しております。」

稲葉さんの頭にあるのは、2008年のリーマンショック。避難所に詰めかけた大勢の人々を支援しました。一度家を失うと、生活の立て直しが一気に難しくなると、肌で感じました。

稲葉剛さん
「やはり次の仕事を探そうにも住所がないとか、住民票がないということが非常にネックになってしまうので。」

今必要なのは、支援制度の条件を緩和して、より多くの人に対して早急に支援の手を差し伸べることだと考えています。

稲葉剛さん
「公的な支援が遅れてしまうと、生活困窮の度合いというのはどんどん深まってしまって、支援していくのがより大変になってしまう。」

稲葉さんたちは、家を失った人々が生活をたて直すまでの居場所の確保を急いでいます。しかし寄付金で確保できる部屋35室あまり。数には限界があります。

稲葉剛さん
「4月中には新たに10室以上確保できるんじゃないかなと思っております。ただ、まだまだそれだけでは足りませんので、焦りもありますね。」

公的な支援は?

家賃が払えなくなった人を支援する制度としては、「住居確保給付金」があります。失業した人に加え、4月20日からは、休業などで収入が減った人も対象となり、国や自治体が原則3か月、最長で9か月、家賃を肩代わりします。
例えば東京23区では、単身世帯で毎月およそ5万4000円、2人世帯で6万4000円を上限に、給付が受けられます。
ただ、世帯収入や預貯金が「一定の基準以下」という要件があり、休業で収入が減った人も、失業したのと同じくらい大幅に減らないと対象になりません。冒頭で登場したタクシー運転手の島谷さんも、該当しないとみられます。
ほかの制度では、10万円や20万円の生活資金を無利子で借りられる「生活福祉資金貸付制度」は、対象を拡大して、収入が減った人は、所得に関係なく利用できるようになりました。「いつ収束するのか分からない中で、借金をしたくない」という人もいるので、支援の網からこぼれ落ちないような制度設計が求められると思います。

では、どうすればいいのか。
例えば東京都では、住まいを失った人に一時的な住居として、民間アパートや都営住宅を提供する制度もあります。制度の要件が緩和されたり、手続きが簡略化されたりする動きも出ています。
立ち退きを求められても出て行かなくて済むケースもありますので、まずは、どんな制度が利用できるのか、自治体や弁護士などに相談してください。

取材:戸叶直宏記者(首都圏センター)

Page Top