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2020年4月14日(火)

堀ちえみさん 舌がん公表で見えたもの

去年(2019年)2月、タレントの堀ちえみさんががんになったことを公表しました。舌にできる「舌がん」です。見つかったときにはステージ4とすでに進行し、周りに転移もしていたといいます。

闘病の日々 公表に込めた思い

舌がんは、乳がんや大腸がんなどと異なり、1年間で新たに診断される患者は4,000人ほどと多くありません。そのため、舌にできるがんを知らない人も多く、発見が遅れてしまい、大がかりな手術が必要なケースも少なくありません。

堀さんも11時間かけ、舌の6割を切除して代わりに太ももの一部を移植するという手術を受けました。

手術から15日目に撮影された映像です。思い通りに話せなくなり、「あ、え、い、う…」と懸命に発声の練習を繰り返す堀さんの姿がありました。
こうしてリハビリを続けるうちに、堀さんは“ことば”について深く考えるようになったといいます。

堀ちえみさん
「ことばがしゃべりづらい分、いろんな学びがありました。ことばというものがどれだけ重みがあり、人を温かく包み込んだり、あるいは逆に人を傷つけたりするものなのか、とてもよくわかるように自分自身が変化したんです。」

堀さんは、がんを公表した後、ブログに闘病の日々をつづるようになりました。当初は舌がんを口内炎だと考え、専門医をすぐに受診しなかったことへの後悔も率直に書きました。1人でも多くの人に舌がんのことを知ってもらいたいという気持ちからです。

堀ちえみさん
「もしもあの時、口内炎だと思い込まずに、少しでも早く大きな病院に行ってがんだと分かっていれば…。同じ思いをする人を何としてでも少なくさせる、ストップさせる使命感、それだけに、そのために自分の命を助けてもらえたと思っています。」

公表が受診を後押し

堀さんの公表をきっかけに、舌がんを発見できたという人がいます。大阪・羽曳野市に住む岩本佳代さん(70)です。去年6月、ステージ1の早期でがんを見つけることができました。舌の裏にころころとした違和感を覚えたとき、すぐに堀さんのことが頭に浮かんだといいます。

岩本佳代さん
「診察を受けようと思ったきっかけは、もうそれは堀ちえみさんです。口の中にもがんができるんだっていうことを初めて知りました。」

岩本さんのように、がんが見つかる人は増えているといいます。岩本さんが治療を受けた奈良県立医科大学附属病院の患者を調べると、去年4月からの半年間で新たに「舌がん」と診断された人は、例年の同じ時期と比べ2倍近くに増えていました。調査を行った奈良県立医科大学の教授で、日本口腔腫瘍学会の理事長でもある桐田忠明教授は、堀さんのがん公表によって早めの受診が促され、患者が増えたのではないかと見ています。

日本口腔腫瘍学会 桐田忠昭理事長
「堀さんの公表のおかげで、一般の方も舌がんに関心を持たれるようになったと思います。早期で見つかる方も大変増えてきましたので、非常に大きな貢献をされたのではないでしょうか。」

手術する部分が小さく済んだ岩本さんは後遺症もなく、趣味のパン作りや友人たちとの会話を楽しむ日々を取り戻すことができました。インタビューの最後に、「堀さんへの思いを語ってもらえないか」とお願いすると、岩本さんは次のようなメッセージをくれました。

岩本さんから堀ちえみさんへのメッセージ
“ちえみさんのおかげで、自分で舌がんを見つけることができました。ちえみさんが頑張っている姿を見て私もがんばらないと、と思います。ちえみさんも、元気で頑張って下さい。ありがとうございました。”

岩本さんのメッセージの映像をじっと見つめる、堀ちえみさん。目には涙がにじんでいました。

堀ちえみさん
「よかった…。早めにわかったのかな。こうやって言葉でお聞きすると、自分のこの病気に意味があったんだって思えます。」

今、伝えたい思い

ことし(2020年)に入り、芸能活動を再開した堀さんは今もリハビリを続けています。新型コロナウイルスへの不安が広がる中、堀さんには伝えたい思いがありました。

堀ちえみさん
「人生の中で、避けては通れない事が起きるのも生きている証拠。生きているからこそ、つらいことにも直面するので、乗り越えた先にすばらしいものが待っていると思って、頑張っていかなければいけないのではないか、そう思います。」

舌がんを発見するポイントは

最後に舌がんについて、日本口腔腫瘍学会の桐田理事長に、自分で発見するポイントを聞きました。

▼舌に口内炎のようなものができ、2週間以上治らない

さらに、鏡で見て

▼中心部にただれがあり、膨らんでいる
▼赤い部分と白い部分が混在している

この条件が当てはまる時には受診したほうがよく、その場合は口の中の腫瘍の治療に詳しい「口腔外科」の専門医などがいる医療機関にご相談くださいということでした。



インタビュアー:利根川真也アナウンサー
取材:稲垣雄也記者(NHK奈良)・八幡祐子ディレクター

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