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2020年4月16日(木)

図書館の本 どう水害から守る

関東や東北に甚大な被害をもたらした東日本台風=台風19号では、各地の図書館も大きな被害を受けました。被災した図書館は全国で100か所以上にのぼり、水につかって処分せざるを得なくなった本の中には、二度と手に入らない貴重な歴史資料もありました。水から本をどう守るのか。現場ではいまなお対策に頭を悩ませています。

記事のポイント:
■水害ではたびたび本や資料が被害に。
■東日本大震災の経験を生かして被害を免れた図書館も。
■全国的には対策はまだ進んでいない。
■本を守る意識を日頃から持つことが重要。

免れたかに思えたのに異変が

長野県千曲市の更埴図書館では、2019年10月の台風で近くを流れる川が氾濫し、館内に水が流れ込みました。

被災時の館長 北島正光さん
「床上、7センチ。(水が浅くて)最初はよかったなという安ど感があったんですが。」

被害を免れたかに思われましたが、貴重な資料が並ぶ郷土資料室で異変が起きます。

木製の本棚が水を吸い上げ、それが資料へと伝わっていたのです。結局二度と手に入らない資料を含む1,000冊以上を処分せざるを得なくなりました。比較的被害が少なかった本も、インクがにじんだままです。

ぬれた部分にはキッチンペーパーを挟んだりして、今も少しずつ元どおりにする作業を進めています。

震災の経験生かし対策

ことしも近づく雨の季節。図書館では本棚をブロックでかさ上げしたりしていますが、抜本的な対策はいまだ講じることができていません。一方で、先進的な取り組みを進め全国から注目されているのが東京都立中央図書館です。5年前、天井から雨漏りがおき500冊近くの本が被害にあいましたが、すべての本を復元することができました。
この図書館では、東日本大震災の経験を生かし、被災時の行動マニュアルの作成などを進めてきました。万が一本が水にぬれた際、大切なのは、早急に本を処置すること。館内には、本の救済のための道具が各所に設置されていて、中にはさまざまなタイプの本の吸水紙やタオルが常備されています。

水けをできるだけ早く吸収するのが狙いです。さらに冷凍庫も用意。冷凍することで修復に取りかかるまでの間、カビが生えたり腐敗したりしてしまうことを防ぎます。

災害時を想定した訓練も定期的に行っています。訓練の動画を公開して、ほかの図書館にも水に備える必要性を訴えています。

資料保全の担当 眞野節雄さん
「どんな災害が起こるかわからない。資料は地域の宝。そういうものを諦めない、できるだけ1点でも2点でもいいから救おうと思っている。」

本を守る意識の浸透がカギ

NHKは今回、全国47の都道府県立図書館にアンケート調査を行い、すべての館から回答を得ました。「水害を想定した対策や準備をしているか」という質問には6割にあたる29館が「行っていない」と答えています。なかなか対策が進んでいない実態が浮き彫りになりました。

図書館の事情に詳しい慶應義塾大学の糸賀雅児名誉教授は、多くの図書館で水害が起きた時に資料をどう避難させるかという想定がなされていないことを指摘しています。その上で、マニュアル作りや本を守る意識を職員に浸透させることなど、日ごろの準備が必要だと話していました。想定外の災害が相次ぐ中、本を水から守る対策を進めることは、図書館の大きな使命の1つだと言えると思います。

取材:富田良記者(科学文化部)

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