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2020年5月1日(金)

どう雇用を守るか 働く障害者は今

新型コロナウイルス感染拡大の影響は、働く障害者にも大きな打撃となっています。これまで働きたいと思っても働く場所を見つけることさえ難しかった障害のある人たち。今、必死な取り組みが進められています。

<この記事のポイント>
◆障害のある従業員を守る感染防止策を徹底しながら働く場所を確保。
◆急激に落ち込む店舗での販売。
◆「仕事はどうなるのか」従業員に広がる不安。
◆未来を信じて地域貢献から。

障害者の自立と経営 両立を果たす企業で…

まるで本物のフルーツゼリーと思うような色鮮やかな「せっけん」。年間20万個を売り上げる人気商品です。このせっけんを作っているのは、神奈川県小田原市の会社で働く26人の障害者です。高い技術力が評判を呼び、3年前に事業が黒字化。障害者の自立と経営の両立を果たしています。

会社を率いる神原薫さんは、いま障害のある従業員を守るため感染防止対策を徹底しています。従業員の半数以上は知的障害者のため、どこにいても目に入るように会社の至るところにポスターを貼って注意を喚起しています。さらに始業前や昼休みには予防の大切さを丁寧に呼びかけます。

神原さん
「大型連休は遊びに行っちゃダメだよ。」

従業員
「遠くへは行かず、近くだけに済ませるくらいのレベルでいいんですよね。」

神原さん
「不要不急ってわかる?今じゃないっていうことだよね。例えば食事は毎日とらないとダメでしょ。だけど服は今あるんだったら、今買わなくてもいいかもしれないね。」

深刻になる売り上げの減少

しかし、深刻になってきているのが、売り上げの減少です。以前は、従業員がフル稼働で月におよそ2万個のせっけんを製造していました。現在は、商品を売っていた店が休業を余儀なくされたため、業務を縮小。感染のリスク分散を兼ねて、2班に分けて通常の半分以下の人数で作業しています。このまま感染拡大が長引けば、売り上げのさらなる減少は避けられないと考えています。

リンクライン会長 神原薫さん
「せっけんはネットでも買えるんですけど、売り上げにすると全然開きがあるので、9割方が店舗販売ですから。売り上げはヘタしたら6割とか7割くらい落ち込むんじゃないですかね。」

どう守る 働く障害者の雇用

売り上げの減少で危惧されるのが働く障害者の雇用です。この日、不安を抱える従業員が神原さんに問いかけました。

従業員
「コロナでいろいろすごいことになっていますけど、仕事がなくなったりしないですよね?」

神原さん
「仕事はきちんと考えて、みんなのことは守れるようにする。それが俺たちの責任だから。そこは心配しなくていい。頑張ろうね。」

リンクライン会長 神原薫さん
「障害のある人は、ただでさえ働ける場所が限られているじゃないですか。今ここで僕たちが踏ん張らないと、また障害のある方たちが働きづらい社会に戻ってしまう気がする。」

未来を信じて 働く地域に貢献

会社の未来のために今できることは何か。従業員全員で考えたのが、自分たちが働く地域に貢献するということでした。

「皆で手を洗って元気に毎日過ごせますように!」製造過程で出た端材を再利用して新たなせっけんを作り、無料で提供する活動を始めました。これまで地元・小田原市へ3千個を寄贈したほか、企業や個人にも数千個を提供しました。感染予防のために自分たちのせっけんを使ってもらうことが未来につながると信じています。

リンクライン会長 神原薫さん
「せっけん屋なので、手洗いのためのせっけんをいろいろな方にお配りして、予防に努めていただこうということと、まぁこういう会社なので、僕たちができる社会貢献じゃないですけど、やっぱり経済も人も常に回るものだと僕は思っているので、困っている人がいる時には僕たちができることをきちんと行って誰かのお役に立てれば、そういう縁が回ってくるのかなという風なことも信じて、今はそういう取り組みもやっています。」

障害者雇用に10年以上取り組む神原さんに、いま障害者雇用の現場でどのようなことが懸念されているのか話を聞きました。

リンクライン会長 神原薫さん
「本業が休業ですとか、事業規模が縮小になった場合には、やっぱり立場の弱い障害者の方々に目が向いてしまいがちだと思うんですね。ともすれば障害者雇用自体が先送りになってしまったり、不要不急になりかねない現状がそこにあると思いまして、実際にそういう声も多く聞きます。せっかくこの数年で意欲的な企業も増えてきたにもかかわらず、ここで意識が後退してしまえば、また取り戻すのに数年かかると思うんですよね。なので、そういった意味でも、この障害者雇用の灯をここで消すわけにはいかないと強い信念を持っています。」

Q:神原さんは今、会社そして従業員の皆さんを守るためにどんなことを考えていますか?

リンクライン会長 神原薫さん
「本来自分たちの事業だけでこの困難に立ち向かっていければいいんですけど、今後は国の助成金なども活用しながらギリギリのところで乗り切っていくことも考えていく必要があると思っています。ただ一方で、やっぱり生きていくためには仕事も必要ですから、こういう時だからこそ自分たちに出来ることをしっかりと考えて、知恵を絞って、障害者も社会の一員なんだということをしっかりと社会に向けて発信していくことも大切だと思っています。」

Q:そうした中で行い始めた、せっけんの無料配布。どういう気持ちを込めて作っているのでしょうか?

リンクライン会長 神原薫さん
「創業当時は作っても作ってもまったくせっけんが売れない時代もありましたので、そういった中でも地元に売り場を作っていただき、1個2個買っていただいたお客さまが助けてくださったんですね。そういった思いもありますので、今ここでしっかりと恩返しをすることと、また人と人との本当のつながりみたいなものが自分たちの未来につながっていくと信じて決めました。」

”未来を信じる”。今こそ大切にしたいことかもしれません。

取材:境一敬ディレクター(おはよう日本)

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