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2020年5月1日(金)

【更新版】「“感染者の数” 注意して見る必要」ノーベル賞受賞者・京都大学山中伸弥教授

【5月8日更新】
先週に続き、ノーベル賞受賞者・京都大学 山中伸弥教授に聞きました。山中さんは、私たちが見ている“感染者の数”は氷山の一角かもしれないため注意が必要だと語りました。
聞き手は高瀬耕造キャスターです。

(4月30日 インタビュー)

感染者の数は“氷山の一角かもしれない”

Q:現在の状況まずどう見ているか率直に聞かせてください。

山中さん:
今報告されている新しい感染者、PCR陽性の方の数は以前より落ち着いているように見えますので、みなさんが自粛をされている効果であることをすごく期待しています。
科学者として冷静に見ていますと、PCR検査数は皆さんの努力で増えていますが、その内容はなかなか見えてこなくて、入院されている方が増えているので、入院されている方の経過観察、2回連続で陰性にならないと退院できないですから、今はそういう検査が増えているだろうと。
一方で、新たな感染者を見つけるための検査が今どれくらい増えているのかというのが、公表されているデータだけでは見えてこないです。今の感染者数が横ばい、むしろ減っているように見えるのが、本当の姿なのかは注意して見る必要があると思っています。

Q:発表されている数字をうのみにしてはいけないということ?

もしかしたら、氷山の一角にすぎないかもしれません。氷山の一角ですべてを判断するというのは非常に危険ですので、そういう落とし穴、もちろん専門家の方々がモニターしているとは思いますが、自粛をするのは国民ですので、そのあたりの情報がしっかり伝わってくれば、よりしっかりした対応ができるのではないかと思っています。

Q:長いマラソンにたとえる中で、今何キロくらいまで来ていると見たらよいか?

やはり一番大変なのは、いったい何キロのレースかわからないということなんですね。マラソンは42キロですし、ウルトラマラソンは100キロです。でもゴールがわかっていると頑張れるんですが、今本当にどれくらい走ったらいいかが見えてこないのが、やはり本当に苦しいところです。それだけに、できるだけ、何キロ走る必要があるのかということを少しでも早くわかるために、言うは易しですが、検査の体制を、PCR検査も抗体検査も増えていって、氷山の一角ではなくて、全体像を把握する努力が今求められている一つではないかと思っています。私も科学者ですので、科学者として検査の拡充に貢献できないかと毎日一生懸命考えています。

Q:少しでも多く検査を行い全体像を把握したほうがよいか?

完全に違うゲームといいますか、ルールが変わってしまったと思います。日本は残念ながら世界の中でも検査能力は完全に下から数えたほうが早いくらいになってしまっています。これは科学者として責任も感じています。やはり人任せにするのではなくて、例えばPCR検査、私たち普段の研究でもPCRばかりやっているんですね。器械もたくさん研究所にございます。普通そういう検査は病院や各地方自治体の衛生研究所、検査会社、プロがやるものですけど、こういう非常事態ですから、同じような検査をしている、器械があり、普段からそういう検査を行っている研究機関はたくさんありますので、ぜひそういう力を活用できないかということで、私たちのiPS細胞研究所、ウイルスと直接関係ないんですが、検査ということでは、かなり貢献できるのではないかと思っています。

大型連休 外出自粛は十分?

Q:正念場とも言える大型連休を迎えたが、どのように過ごせばいい?

神さまのいじわるではないですが、天気がよくて温かい日が多くなりそうで、そのあたりは心配しています。私の住まい大阪ですが、梅田駅周辺は人出はすごく少なくなっています。一方でいろいろな公園、屋外では、ふだんと同じくらい、もしかしたらふだん以上にたくさんの人が太陽の下でジョギングをしたり散歩をしたり、座って食事をされている方もいます。こういったところは少し心配しています。屋外とはいえ、密集すると感染の危険性が出てくると思いますし、トイレとか水道の蛇口とか、接触感染も重要な感染経路だと思いますし、たとえ屋外であっても人が集まるということは感染のリスクがあるということを理解する必要があると思います。

Q:健康目的のランニングや散歩での公園利用は、どうすべき?

やはり、家の中にずっとこもっていると、精神面、体にもよくない面が出てきます。私もジョギングはしていますが、今は、ジョギングや散歩はできるだけ少人数、できれば一人でする。どうしても公園等で走りたくなりますが、人出も街は減っていますので、公園ではなくて、ふだんは走っていない街なかですとか、できるだけ人混みを避けて走るなど、いろいろな工夫をそれぞれの人がして、一か所にたくさんの人が集まってしまうことは避けていく必要があると思います。時間を、ちょっと朝早く走ってみるとか、日も長くなっていますから、あまり真っ暗になって走ると危ないですが、それぞれの人がいろいろな工夫をしていくことが大切ではないかと思います。

緊急事態宣言の延長は必要か

Q:緊急事態宣言、1か月の全国を対象にした延長は妥当だと考えるか?

海外、中国やヨーロッパ、アメリカの様子を見ていると、人と人との距離をあける対策は2か月3か月は最低でも続けないと十分な効果が出ないことが示されていますので、当然私たち日本でも、1か月2か月ですんでしまうことは残念ながら考えにくいと思います。
今後、人と人との接触を8割も減らすことが何か月続くかはわかりませんが、元どおりになるのはかなりの時間がかかると思いますので、それなりの覚悟、準備はしっかりしていく必要があると思っています。

Q:延長した1か月の宣言下でも同じような自粛と制限が必要か?

安倍首相が最低でも7割、可能なら8割減らすと言っていますが、そこまでは達成できていないと思います。私も世界の、ヨーロッパ、米国、日本の人出がどれだけ減少しているかというデータをずっと見ています。1週間ぐらい遅れたデータしか入ってこないですが、それを見ていると、緊急事態宣言が出て1週間ぐらいたった時点でも日本は欧米等に比べて、まだまだ頑張らないとだめだなという状況です。特に公園の人出が日本はあまり減っていないというデータが出ていますので、今の対策は欧米に比べると十分とは言えないと言えると思います。

9月入学には“可能性ある”

Q:学校の入学や新学期を秋の9月に変更をという声が出てきているが教育者としてどう見ている?

長い歴史で日本は4月始まりです。ただ私はアメリカでも活動していますので、9月入学が当たり前ですので、できればやはり世界共通のほうが、今は海外の留学などが推奨されていますが、9月入学と4月入学の差が壁の一つになっているんですね。ですからいろいろな問題はあると思うんですが、やはり統一していくことはかなり意義があると思います。大きな変化はなかなかできないですけれども、もしかすると今回は、できなかったことを実行するチャンスかもしれません。大変な準備が必要だと思いますが、今学校に行けない子どもさん、学生の方は大変な目に遭っているわけですから、その我慢に報いるためにも9月にずらすというのは一つの可能性と思っています。

Q:今これだけは言っておきたいことは?

非常に長い、対策が必要だと思います。ただ、明けない夜はありません。かならずいつか終息する日が来ます。それまでの間、力を合わせて頑張る必要があります。このウイルスは普通の病気は患者さんや、そのご家族が被害者ですが、この新型コロナウイルスは、患者さんに加えて、あと二種類の被害者、大変な目に遭っておられる方がいらっしゃいます。一つは、医療従事者をはじめとするエッセンシャルワーカーという方々。感染のリスクがあっても仕事に行かなければならない。また偏見とか差別に耐えながら、すごい仕事をしていらっしゃる方がたくさんおられます。今の自粛が原因で、仕事や介護、教育、本来の権利を奪われている人もたくさんいます。ですから私たち、私は幸いどれにも当てはまらないんですね、まず家にいるということが一番貢献にはなるんですが、そういった被害に遭われるいろいろな方がいるということを忘れずに、一体何ができるかをプラスアルファで考えることが非常に大切だと考えています。

「おはよう日本」では、新型コロナウイルスによる不安が渦巻くいま、各界の方に生きるヒントや危機を乗り越える提言をシリーズでインタビューしています。
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