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2020年5月10日(日)

【更新版】「急速に進むオンライン化 社会が変わるチャンス」ドワンゴ社長 夏野剛さん

【5月18日更新】
動画配信事業を行うドワンゴの社長 夏野剛さんに新型コロナ危機を乗り越えるための提言を聞きます。「iモード」の生みの親として知られる夏野さんは、急速に進むオンライン化は「社会が変わるチャンス」だと話しました。
聞き手は石橋亜紗キャスターです。

(5月8日 インタビュー)

2月に全社員にテレワークを導入

夏野さんが率いるドワンゴは、感染拡大を防ぐため、いち早くテレワークを行ったことで注目されました。対象は全社員のおよそ1,000人。導入は、緊急事態宣言が出るよりずっと前の2月中旬のことでした。

Q:こういった部分までテレワークで意外とできたという発見はありましたか。

夏野さん:
そうですね。経営会議とか戦略会議とか、やっぱりリアルに集まった方がいいだろうと思っていたんですが、実際にテレビ会議をやってみると、まったく問題が無いっていうことを発見できました。

Q:ディスカッションの勢いがなくなるなどといった難しさはなかったですか。

実際にリアルな会議というのは、顔を見ながら、場の雰囲気を読みながら発言するっていう事をしがちです。ですので、極端に違う意見とか全く違う観点からの意見っていうのが実は出にくいというのを感じていました。しかしこのテレワークの会議は、場の雰囲気がない、読めないので、ちゃんと自分が考えて正しいと思うことをみんながきちんと主張するようになったと感じています。そして、それが失礼ではなくなった。だから上司を忖度してとか、なんとなく場の雰囲気で言いづらいとかそういったことがどんどんなくなりましたね。

テレワークには“工夫”が必要

Q:今テレワークをされていて、不安だという声や戸惑いの声は聞こえてきますか。

これは実はありまして、リアルな人との会話がなかったというのはちょっとストレスになったりする。そのために、仕事中にとにかくつなぎっぱなしにする。

(通信アプリなどで)画面を出してつなぎっぱなし。そして特に何も会話をしない。でも画面を見るとなにかカタカタカタカタ仕事をしていると。で「何の仕事をしているんですか」とか声をかけると答えてくれる。

「あ、今日お昼何食べようかな」とつぶやくと誰かが、「え、ラーメンなんかいいんじゃないの」とか、答えてくれるだけでちょっと和むらしいんですよ。そういうことも取り入れて、まあ寂しさを紛らわせて仕事をしてもらうというのを推奨しています。

Q:例えば営業などほかの会社の人と顔を合わせる職種は難しいのかなと思うのですが。

新規顧客開拓というのは、ちょっとやりにくいっていうのは本当のところです。
もうなにしろ、なるべく資料を充実させる。言葉で相手を動かしていくっていうのがわりと日本の営業は多いんですけれども、とにかく資料を見れば一目でわかって、良さが一目でわかるというような資料を充実させて事前にお送りして。そして相手とのテレワーク会議の席では、本当に補足説明だけするというようなスタイルにどんどん変えていくべきだなというふうに思いました。

Q:テレワークを始めて3か月、見えてきたものはありますか。

例えば、オンラインではなくリアルな会議の良さっていうのがあることもわかりました。具体的に言うと、今存在していないサービスの企画をするとか、みんなでざっくばらんにアイデア出しをするミーティングというような、やっぱり場の雰囲気がむしろ重要な、アイデア出しの会議などはそれにあたります。

この新型コロナの問題というのはこれから来年まで続くかもしれませんが、ワクチンが開発されたりすると状況は収束すると思います。ただ収束した後に、せっかくテレワークのよさがこれだけわかったので、今度はリアルに通勤することと、テレワークをどういう風に組み合わせるかということを真剣に考えていった方がいいなという風に思いました。

オンライン授業の在り方について

夏野さんはドワンゴの社長だけでなく、慶応義塾大学で特別招聘教授として、オンライン授業を行っています。

Q:今回休校が長引いて各地でオンライン授業を行う取り組みも始まりつつありますけれども、オンライン授業を行う上でのアドバイスはありますか。

大切なのは一定のインタラクティブ性、つまり双方向ですね。一定の双方向性を入れないと、ずっと先生が喋りっぱなしで一方向でやってしまうと、学生、生徒さんの興味が続きません。
先生が生徒や学生の雰囲気を見ながら、少し冗談を入れたり、少し無駄話をしたりすることによって、その集中力を45分間なり90分なり維持していくって事を、オンラインにおいても、同じようにやることが重要。とにかく詰め込み過ぎになるんですよ、オンラインにしてしまうと。でもそれだと続かないので、やっぱり緩急をつけて、メリハリをつけてやっぱりやることが大事だと思います。

例えば、少人数の授業においては学生側のカメラを全部オンにしてくださいというお願いをしています。オンにするとですね、表情が読めるので、ミュートで音を消していても、ちょっと笑っていたり、表情が見えたりと、授業を行いやすいです。

ただ大人数の授業は、僕の場合800人なので、800人だとシステム的に全員の顔が出ません。ですので、この場合、いわゆるネット上の掲示板を常時オンにして、そちらの方にリアクション、例えば僕が言ったことに対してどう思うかとか、そういうことどんどん書き込んでくださいっていうのを奨励していまして、それを見ながら僕は授業をしています。逆にそういった反応をもらえないと、ちょっと教えている方も辛いです。

ですので、どうやって双方向性を確保するか、これがやっぱり一番の肝だと思いますね。

社会が変わるチャンスに

「iモード」の開発に関わり、普及させたことで知られる夏野さん。長年ITをどう活用するか考えてきました。
去年(2019年)からは政府の規制改革推進会議のメンバーを務め、オンライン診療やオンライン学習について提言してきました。

Q:今後の社会のあり方についてどう思われますか。

日本は、テクノロジーがあるにも関わらず、なかなかそれが効果的に人のシステムの中に入っていっていない。ITの専門家として思っていたんですね。

今までは、とにかく変えなくても、まあなんとかおさまっていたと。変えなくてもなんとかうまく切り抜けられてきたと。このなんとかなっていたということが、日本が変えられなかった最大の問題だと。しかし、変えなくても生きていける、変えなくてもなんとかなる状況ではなくなりつつあるわけです。

この機会にオンライン診療の話とか、オンライン学習の話とかもう本当に国単位で進んでいるものもたくさんあるので、やはりこの機会に試してみたものを、良いものは全部受け入れて、この後の世界に生かしていくことをやるべきだと思いますし、やれると思います。

「おはよう日本」では、新型コロナウイルスによる不安が渦巻くいま、各界の方に生きるヒントや危機を乗り越える提言をシリーズでインタビューしています。
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