これまでの放送

2020年5月19日(火)

高まるがん患者の不安 医療は?私たちは?

高瀬耕造キャスター
「新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、特に不安を募らせているのががん患者たちです。いまや、日本人の2人に1人ががんになる時代。がん患者の不安の声に、科学文化部の水野記者とできるだけ答えていきたいと思います。がんの治療を受けていた岡江久美子さんが亡くなったこともあり、『重症化するリスク』について心配する方、とても多いと思います。実際にリスクはどれくらい高いのでしょうか?」

水野雄太記者(科学文化部)
「たしかに、持病のある人は重症化のリスクが高いとされていて、その中にがんの患者も挙げられています。がんそのものや抗がん剤などの影響で、免疫の機能が低下している可能性があるためだと考えられています。こうしたリスクについて、国内で最も多くのがん患者が受診する、がん研有明病院の病院長に聞きました。」

がん研有明病院 佐野武病院長
「がんの治療をしている、あるいはいま体にがんがあっていろんな体力が弱っている人が、重症になった時にきつくなる事は事実としてある。ただ、それがひどい糖尿病や肥満などの人に比べてリスクが高いかというとそれほどでもない。がんの治療を受けているということはリスクの1つではあるが、びっくりするようなことではない。新型コロナは、結核やはしかなど空気感染するものではなく、普通にマスクをして、距離を置いた待合室で普通の診療を受ける限りは、病院に行ったからコロナにかかりやすくなるリスクは非常に少ないと思っている。」

水野記者
「佐野病院長は、すべてのがん患者で免疫が落ち、重症化のリスクが高くなっているという訳ではないということを知ってほしいと話しています。

また、放射線治療を行っている医師らで作る日本放射線腫瘍学会は、岡江さんが亡くなったあとに声明を出し、『早期の乳がん手術後に行われる放射線治療では免疫機能の低下はほとんどない』としています。がんの部位やステージ、受けている治療によっても、重症化するリスクは違うので、治療については、主治医としっかり話をすることが大事です。」

高瀬キャスター
「また『ちゃんと治療を受けられるのか?』という不安の声も出ていました。いま、がん治療は受けられる状態になっているのでしょうか?」

水野記者
「先月(4月)は感染拡大で、がん治療が相次いで延期や中止になっていて厳しい状況でしたが、各地の病院に取材すると、元の状態に戻っている訳ではないものの、『徐々に必要な治療は受けられるようになってきている』ということです。その一方で、心配なことも出てきています。『感染が怖いので、病院に行かない』、『免疫力下がるので、放射線や抗がん剤などがん治療の中断を考えている』といった患者本人の声が患者団体に寄せられているというんです。

医療心理学が専門の大阪大学の平井啓准教授は、『感染のリスクを実際より大きく捉えてしまって、がん治療をやめるリスクと比較できなくなっているおそれがある』と指摘しています。そこで平井准教授が提案するのが、何が自分にとってのリスクなのかを紙に書いてみるということです。例えば、いま治療する場合、それから治療しない場合、それぞれにどんなメリットやリスクがあるかを書き出してみます。こう書き出すことで、自分にとって何が避けなければいけないリスクなのか、冷静に考えるきっかけになるということです。佐野病院長も『正しい情報を知って考えてほしい』と話しています。」

がん研有明病院 佐野武病院長
「例えばインターネットで探そうとしたときに、がん、コロナ、リスクと入れると、とんでもなくいろんなものが出てくる。だから多くのがん治療の学会が、合同でビデオや解説のホームページを作っている。正しく知って、正しく恐れる。それから、恐れるべきでないところは、恐れるべきではない。」

水野記者
「『日本癌学会』などのホームページでは、新型コロナウイルスに関する質問と答えを公開していますので参考にしてください。そして、新型コロナウイルスへの対応が長期化する中で、『輪番制での出社を命じられた。がんを理由には断りづらい』という、生活面の不安が多く聞かれるようになってきています。働きながらがんの治療を続けるがん患者も多くいますが、患者団体では、『がん患者は健康な人に比べると“重症化するリスク”は高いこと、そうした中で不安を募らせていることを、職場や周囲の人たちに理解してもらいたい』としています。」

全国がん患者団体連合会 天野慎介理事長
「いま、がん患者はものすごく視野が狭くなってしまって、ひとりで抱え込んで不安な気持ちになってしまう傾向がある。できるだけつながりを保っていただきたいと思っている。一般の健常な方々よりもリスクが高いという方たちがいるんだということを知ってもらい、配慮を可能な範囲でしてもらえたらと思う。」

水野記者
「影響の長期化で、精神的にも経済的にも苦しい状況に置かれ、私たちも自分自身のことでいっぱいになってしまっています。しかし、がん患者も含めて、人一倍感染のリスクに気を配らねばならない人たちがいるということに、私たちがしっかりと目を向けなければならないと感じました。」

Page Top