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2020年5月20日(水)

心の平穏を保つには…精神科医 斎藤環さん

「在宅動務になって孤独…」、 「子どもや家族につらくあたってしまう…」、さらに休業要請や外出自粛に応じていないと指摘する「自粛警察」と呼ばれる行為も、現状に対する不安から引き起こされるという指摘があります。
こうした心の問題について、ネット上で積極的に発信しているのが精神科医の斎藤環(さいとう・たまき)さんです。 どうすれば心の平穏を保てるのか、桑子キャスターが聞きました。

心の揺らぎは“異常”ではない

Q:ステイホームという言葉を耳にするようになって1か月ほどたちますが、何とも言えないもやもや、やる気の出ない感じがするのはどうしてですか?

斎藤さん:
最近の情勢をみると、全世界的にコロナの話題を中心に時間が流れているといえます。 私たちは、新型コロナウイルスをめぐって緊急事態宣言の解除や自粛警察、感染者数・死者数などのニュースに一喜一憂しています。今の私たちの生活は、自分たちに自粛を強いているという異常な事態ですから、私たち自身の「心のありよう」も変わってきています。しかし、これは病気ではなく、異常な状況に対する反応として、“まとも”なことなんです。

「自粛警察」はなぜ起こる?

Q:斎藤さんはSNSで「自粛警察」という行為についても発言しています。「自粛警察」は例えば人が集まっている写真をSNSにあげて、“自粛要請に応えていない”と非難するような行為ですが、こういった行為はどうして起きてしまうのでしょう?

閉じこもらざるをえない状況の中、ほとんどの人が「退行」、つまり「幼稚化」する、子どもに戻ってしまうんです。子ども返りという意味で、一般的に起こりやすいんですね。判断力が鈍って、ふだんはフェアに判断できる人が極端な判断をしてしまう。そして、「白黒思考」といって、まるで相手を「敵」か「味方」かに分けてしまう。敵とみなすと、すごく攻撃してしまうんですね。その結果、いわゆる自粛警察やネット上の炎上などに見られるように攻撃性が高まることにつながってしまいます。

Q:それでは、どうしたら寛容でいられるのでしょうか?

私たち自身が、こうした状況の中で非常にイライラしやすくなっていて、さらに、自分のイライラを周りの人の不道徳と取り違えやすい状況になってきていて、非常に小さいことで攻撃性や怒りなどが爆発しやすい状況にあることを踏まえることが第一歩です。
そして、できるだけ対話をすることが重要です。対話をしないで自分の中だけで考えを掘り下げると、ますます被害妄想のようになったり、怒りをさらに広げてしまったりしやすいので、その気持ちを誰かに話すことです。
「相手と正しさを競わないこと」も重要で、意見が違ってもいいので、周りの意見を聞く機会を持つことが、ある種の寛容性につながる可能性があります。

「内向きの不要不急」の充実を

Q:心の平穏を保つにはどうすればいいでしょうか?

「内向きの不要不急」を充実させることを提案したいと思います。
どういうことかというと、自分の生活の中でのささいなこと、くだらないこと、どうでもいいことに時間をかけるということです。具体的には、あえて時間のかかる料理を作るとか、家族とくだらないおしゃべりをする、などです。海外では「ひよこを飼う」こと、あるいは日本では「しいたけ栽培をする」などのブームもあるようですが、実はこういったことがすごく大事なんです。一見、大事ではないこと、緊急性がないことに割く時間をあえてとることが今、非常に大事だと思います。なぜかというと、私たちの時間意識は、世間的に大事なイベントの流れでできているのではなくて、その傍らにあるプライベートな不要不急の出来事、イベント、人間関係の総体でできあがっているからです。「内向きの不要不急の時間の流れ」を回復することによって、平常時の「リアルな現実感覚」に近づくことができると思います。新型コロナウイルスに関する情報も大事ですが、心の平穏を保つために、自分の身の回りの不要不急も大事にしていこう、というのが私からの提案です。

「おはよう日本」では、新型コロナウイルスによる不安が渦巻くいま、各界の方に生きるヒントや危機を乗り越える提言をシリーズでインタビューしています。
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